ー第2話令和実業出版社
東京大手町のオフィスビル。
サラ金の事務所で、爆破事件の後居抜きで令和実業出版社が買い取った。買い取り額は1円だと、都市伝説系の掲示板で見た。
壁は焦げており、リフォームしたとは思えない。
容子編集長は198のスーツで颯爽と現れた。
「千先生。お待たせ」
レンタルのスチール机のスチール椅子に、ギッ~と音を立てて座る。
「送ってくれた原稿見ました。なかなか粘度が落ちてきたじゃない?良くなってきた」
「ありがとうございます」
「この後の展開は?」
「新月の夜の逢瀬になります」
「またムッとする会話?月夜にならない?」
「お忍びなので。月夜では城方に露見してしまいます」
「セックスするには良いわね…」
「姫と足軽大将の関係ではあり得ません」
「あのね。退屈なの。気分転換しないと読者はマンガを読みに寝カフェに行っちゃう」
「では。城方に見つかる展開で」
「そうね……首をハねましょ。バイオレンスは気分転換に最適」
「それは妥当な展開と思います」
「このまま、お馬さんの時代で行くの?」
「まぁ異世界転生するには無理ですね」
「違うわね…そう…生まれ変わり…りーりーガーネットよ!」
「…リーインカーネーション?」
「そう!カーネーション!現代に生まれ変わった咲姫と新乃丞が渋谷でデートで、中国スパイに襲われる!」
「なぜ中国スパイに襲われるんですか?」
「…嫉妬よ。ラブラブな二人に嫉妬した中国おっさんスパイが任務を超えて二人を亡きものにしようとする…新乃丞が咲姫を守り抜く!」
千は呆気にとられて、手振り身振りで語る容子編集長を見ていた。
「斬新です」
「それで行ける?」
「現代編に展開ですね。渋谷には行った事ないので、取材に行きます」
「なんで行った事ないの?」
「千葉産まれで、横浜が遊び場だったので」
「どうやったら、千葉産まれで横浜で遊ぶの?いいわ…これからどう?渋谷は小学校から庭なの」
「いや。高崎に戻らないと駄目なんです」
「じゃあ。明日の16時。109の下ね」
「えっ?待って…」
容子編集長は消えた。