①話 ラボ
星明かりだけの暗闇。空気がとても澄み、濃い森の香りと、川のせせらぎだけが聞こえる。
この辺り、古くは戦国時代の刀傷を療養する為に多くが訪れられた地域。
温泉が湧き出、凝縮された自然は動物や魚が濃く大きく育つ、まさにパワースポット。
そんな場所に、世界でもトップクラスの設備を持った建物がひっそりと人知れず存在する。
その建物は斜面に建ち、道路から見下ろすと一見少し大きめの別荘のよう。
しかし、逆の谷底から見上げると、ただの森に見える斜面が、山にめり込んだ巨大な要塞のようだ。
警備員の巡回する姿が多く見られ、かなり厳重に護られている。
それもそのはず、世界でもトップを走るネット企業、ガーゴイル社の設備である。
こんな辺境の地に、なぜこれほどの巨大設備が存在するのか。
IT企業のサーバー施設やラボは世界中に存在し、テロ防止のため内密に存在する。昨今のAI開発競争が加速化したこともあり、よりきめ細かい純水が求められ、日本の地は世界でも人気が高い。
どうやらここはサーバー施設と、大型の研究施設が存在するようだ。
そして暗闇の空を旋回した暗視ドローンは、空高くへと消えていった。