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短編集め(恋愛もの以外)

夏の海辺と小さな出会い

掲載日:2024/06/25

 夏が大好きな少女・真奈まなは、夏休み、祖父の家がある鎌倉にやってきた。

 真奈は中学3年生の陸上部員で、部活の練習がない日も自主練を欠かさない。

 この夏の終わりに最後の大会がある。


 将来の夢はオリンピック選手! と小学1年の作文で発表するくらい走るのが好きだった。


 祖父の家は海が目の前。お気に入りのランニングシューズをはいて、ストレッチをしながら海を見つめた。

 今日はどこまで走ろうかな? 高校前駅、それとも藤沢まで? と頭の中で計画を立てる。

 熱中症対策のドリンクもベルトのドリンクホルダーにつけて、走り出す。


 走り始めると、潮の香りと波の音が心地よく耳に入ってくる。

 サーフボードを抱えた人や犬の散歩の人とすれ違い、挨拶を交わすのも、走ることが好きな理由の一つ。

 特に夏は、人々に活気がある。

 楽しげな笑い声が響いている。


 太陽が少しずつ高くなり、気温も上がっていく。

 視界いっぱい空と海。見ていると暑さなんて忘れてしまう。


 途中、真奈はふと足を止めた。小さな男の子が一人で立っていた。

 空を見上げて、何かを探しているようだった。

 真奈は近づいて声をかける。


「どうしたの?」


 男の子は涙目で、「風船が飛んでいっちゃったんだ。ウサギの絵がついた、青い風船」と答えた。

 知らない子だし、買ってあげるというのは違う気がする。そもそも今は財布を持っていない。


「そっか、私も走りながら探してみるよ」


 真奈は優しく微笑んだ。

 少年も少し笑顔を取り戻し、「ありがとう、お姉ちゃん」と小さくつぶやいた。


 風船が飛んでいないか探しながら走り、昼ごはんまでには帰りなさい、と祖母に言われたことを思い出す。


 そろそろUターンするか、と視線を駅の方に動かすと、木の枝に青い、うさぎの絵柄の風船が引っかかっていた。


 風船を手に、少年と再会する。

 心地よい達成感を胸に、真奈は家までの道を、さっきよりも軽やかな足取りで走り出す。


 この小さな出会いを、祖父母に話そうと思いながら。


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― 新着の感想 ―
[一言] ほんの小さなひと夏の思い出がいつまでも心に残り続けることがあると思います。 このお話はまさにそれだと思いました。 真奈ちゃんが大人になった時、ふと思い出すような、そんな小さな出逢い。 穏やか…
[良い点] 男の子の失くした風船は気にかけつつも、それに完全に気を取られる事なく自主練はキチンとこなす。 そんな真奈ちゃんの姿勢はバランスが取れていて好感が持てますね。
[良い点] とてもほっこりと、読んだとあとに心があたたかくなるようなお話ですね(*´▽`*) 風船が見つかってよかったです~ きっと、どこにでもあるような小さな出逢いですが、彼女の心地よい達成感すら何…
2024/06/25 21:32 退会済み
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