ミス・ミャープルは名探偵〜野良猫集会とご近所の謎〜
私は猫であるが、探偵でもある。
というのも、ご主人様が会社に行っている間、海外ミステリードラマを視聴しまくり、探偵の知識をつけた。
客は特に野良猫や野良犬、スズメやカラスだったが、私の探偵業は評判も良く、高級猫缶もゲットしていた。でも、このこ事は人間は全く知らない。
「お前は毎日ゴロゴロしていいね」
「にゃー(怒)」
ご主人様の佐和子は、私を怠け者のように言い、腹が立つ。思わずご自慢のもふもふ黒毛を逆立てて怒ってやったが、全く気づかない。
まあ、これは仕方ない。まさか飼っている可愛い黒猫が探偵だとは思わないだろう。佐和子も普通のアラサー会社員だ。本が好きで、本棚にはアガサ・クリスティの文庫も並んでいた。あの名探偵の名前から、私の事を「ミャープル」と名付けたセンスだけは褒めたい。
あとはグズグズで一人暮らしの一軒家も、時々洗濯物が溜まったりしるし、私の事をニート扱いしてるけど、そこは大目に見てやるか。私はツンと顎をあげ、ご主人様を見上げた。
「そういえば、阿澄ちゃんとこのレナくん、どこ行っちゃったんだろう」
佐和子は、最近ハマっている女性向けライトノベルを読みながら呟く。因習村で生贄になった少女があやかぢ天狗に救われて幸せになるシンデレラストーリーらしいが、私はレオくんの事が気になる。
レオくんは近所に住んでいる佐和子の友達・阿澄さんが飼っている猫。三毛猫で元々は野良猫だった時に阿澄さんに拾われた。
私も一回しか会った事はないが、レオくんは行方不明らしい。これは気になる、探偵猫としても!
翌朝、さっそくレオくんの調査に乗り出した。佐和子が会社に行くと、開けっぱなしになっていたキッチンの窓から外へ脱出。まったく佐和子のだらしなさには呆れるが、毎日外に出られのはラッキー。
「ねえ、スズメさん達、レオくんについて知らない?」
さっそく公園に行き、固まって水を飲んでいえうスズメさん達に聞き込みした。
「さあ。でもこの街いあるM教っていうカルトに噂きいた」
「アタシも聞いた」
「どういう事?」
スズメさん達によると、M教というカルトが動物の生贄を捧げ、呪いの儀式をやっているらしい。そうする事で「魔」を呼び出し成功するとか?
「信じられにゃーい」
噂は噂だ。裏は取れない。次はカラスさんにも聞いたが、同じようにM教が怪しいという。
「凶悪犯罪者もまず動物を殺して、エスカテートして行くからな。レオくんは、生贄になっているかも?」
カラスさんにもそんな事を言われ、不安だ。M教に乗り込めばいいと思うが、やめた。
敷地の近くまでは行ったのよ。でも私だって殺されたくはない……。中身は名探偵だけど、見かけは小さな黒猫だって事はよく理解してる。
次は、野良猫がいる空き地へ向かった。確か毎日野良猫集会をしているのだ。ここでも聞き込みしよう。
私と同じ黒猫や三毛猫、ハチワレや仔猫もいる。野良猫は生きるか死ぬかの戦いもしているし、こうして集まって情報収集する事は大事みたい。
「レオくん? おいらが見たよ」
「えー?」
野良猫のハチワレくんがレオくんを見た!? 私は思わず身を乗り出す。
「M教の信者に結城さん家で飼われてた。どういう事? 阿澄さん家の子じゃないの?」
「わかった! ありがとう!」
私はさっそく結城さん家に向かい、レオくん救出を試みた。居間の窓が空いていてラッキー。そこから侵入し、ゲージに入ったいるレオくんを助けた。ゲージを開けるのはちょっと苦労すたけど、何とかレオくんと一緒に逃げ、再び野良猫集会に参加した。
「うん、結城さんは優しかったよ。餌とかくれた」
野良猫集会に参加しているレオくんは、普通に元気そう。チャームポイントの鍵尻尾も元気だ。
「でも僕のこと、変な儀式で殺そうとしてたみたい。僕が助かっても、みんなに害があるかも……?」
笑っていた野良猫集会の面々だったが、一気に黙りこくった。
さて、どうしよう?
これは人間の力を借りるべき?
とりあえず、佐和子に何とかこの事を伝えよう。私はM教が配っているチラシを咥え、佐和子が読んでいる女性向けライトノベルの上においた。生贄になった少女のライトノベルだ。これで、M教がやっている事とピンと来て欲しい。
「うん、私が好きな『あやかし生贄と幸福な結婚式』の上に何でカルトのチラシなんてあるの?」
「ミャー!」
私は猫語で色々言ってみたが、どうも伝わらない。
「何、ミャープル。まさか本とカルトが関係してるの?」
佐和子はパソコンでM教について検索していた。すると、生贄儀式をしている噂を書いているページを見つけた!
「いやあ、本当の生贄儀式なんてまだやってるの、カルトって……」
ショックを受けた佐和子は、ネットでもリアルでもこの情報を拡散。動物の飼い主達は警戒し、M教の連中も好き勝手できない雰囲気になったそう。結城さんも色々噂を立てられ、町から引越して行った。
「ミャープル、あんたはニートでいいね」
「ミャー(怒)」
相変わらず佐和子は私の事をニート扱いして納得いかない。
「でも、まあ、いいか。私は名探偵だもの。この街の平和は私が守るわ」
カラスさんからの依頼で、調査もある。佐和子が会社に行った事を確認すると、キッチンの窓からかけだして行った。




