ダメ主婦のご近所騒動記〜オシャレ自然派カフェの秘密〜
私は自他共に認めるダメ主婦。家事が超苦手。いかに手抜きをする事を考えていた。時短、タイパ、コスパをいつも考える。
まあ、意外と夫や息子はそんな私に甘いというか寛容。私のダメ主婦っぷりを漫画エッセイにしたらバズってしまい、最近は夫の年収を三ヶ月で稼いでしまったりする。
漫画の依頼が多くあり、ますます家事が手抜きになり、家事代行でも頼もうかと考えている時だった。
姑が登場!
最近、夫を亡くしたばかりの姑は暇を持て余し、私達の家に来てはチクチク嫌味を言って帰っていく事が多かった。私のダメ主婦っぷりにも呆れているようで、掃除が甘い所を見つけてはツッコミを入れてくる。
「まあまあ、お母さん! ストレスが溜まってるんですよ。最近近所でオシャレな自然派カフェがオープンしたそうなので、行ってみません?」
「カフェ?」
機嫌が悪かった姑だったが、カフェと嬉聞くと笑顔を見せてきた。姑はスイーツに目がない。カフェで機嫌をとるのも悪くない戦略だろう。
という事で二人で自然派カフェへ。行列もできていた。小さなカフェだったが、壁にはレインボーやお花畑のペイントがされていて、案外派手。黒板式の立て看板には、産地にこだわったメニューが描かれていた。意識高そう。
そういえばこの辺りの主婦は意識が高い人が多い。私の方が浮いているのだ。そのおかげで漫画野ネタになっていたが、確かにこの辺りで自然派カフェを開くのはマーケティング的にも悪くなさそう。
「混んでるわねぇ」
「まあまあ、お母さん。すぐ席に着くますって」
そうは言っても三十分以上待たされ、ようやく席へ。トイレにも近く席で姑はさらにイライラしていたが、こればっかりは仕方がない。
グルテンフリーの雑穀パン、米粉パスタ、砂糖未使用のティラミスなどを注文し、料理は案外早くきた。
「美味しいじゃない」
姑はようやく機嫌を良くしていた。やはり食べ物で機嫌を取るのは大正解だった。これも後で漫画のネタにするか。
「うん?」
しかし、雑穀パンはどこかで食べた味とそっくり。有名なパンメーカーと同じ味がするのだが。確かにジャムはオーガニック風のオシャレな瓶に入っていた。そのジャムの味に誤魔化されてしまうが、パン自体の味はよく知っているもの。
それに米粉パスタ。これも冷凍パスタの味だった。私が昼ごはんを手抜きする時、よくお世話になっていたものだ。間違いない。
ティラミスもコスコのとよく似てる。ハーブティーだけが本物っぽいが、他は偽物?
姑は店の雰囲気にすっかりやられていた。健康に良さそうと笑顔で食べているのを見ると、私は別の意味で笑うたくなってくるのだが。
他の客も気づいてなさそう。普段から市販のパンや冷凍食品を食べていないから、分からない可能性もありそう。
これは単なる詐欺ではない。もしアレルギーのある子供が口にしたら……。
どうしようか。姑は楽しんでいるし、困った。
そのまま悶々としながら数日すぎたが、カフェがネットでも口コミが良かった。これは安易に信用できない。こんな口コミはいくらでも偽造できるし、インフルエンサーのステマの副業もやった事があった。
また悪い口コミも、最近は誹謗中傷がうるさい世の中になった為、なかなか反映されない。一応冷凍食品とそっくりな味という口コミを書いたが、運営に誹謗中傷と判断されたようで、削除されてしまった。
「どうしよう。でもアレルギーの子が間違って食べたら、心配だわー」
こうなったら、古典的な手法をとろう。とにかくママ友達にカフェの口コミを伝え、拡散するように頼んだ。
姑にも頼んだ。水を刺すような行為だったが、案外姑も協力してくれた。趣味のお料理教室やパート先、病院の待合室でも格差してくえた。
結果、リアルでの口コミは実を結び、ネットでも騒ぎになっていた。
店主はSNSの裏アカで客の悪口も書いていたようで、それも掘り起こされ、ちょっとした炎上にもなっていた。
こうしてカフェはしばらく休店。代わりに近所にある昔ながらの喫茶店や和菓子屋の人気も回復しているという。
「あなたのダメ主婦っぷりもたまには役に立つのね」
姑とその喫茶店に出向き、厚焼きホットケーキやナポリタンを楽しんでいた。
ナポリタンは太陽のように明るい色。味もケチャップの甘みが最高。麺ももちもち。ホットケーキもふわふわ。メープルシロップとバターが交差している所も至高の味わい。
もちろん冷凍食品ではない。店長が手作りしている丁寧な一品だ。
「いやあ、褒められると嬉しいです。照れるなぁー」
「いえ、別に褒めてないから。あなた、もう少しちゃんと家事もしなさいよ」
「明日、いや、明後日から頑張ります!」
「今日からやってよ!」
姑と漫才のような会話をするも案外楽しい。
それにこの騒動も漫画のネタにしよう。エッセイ風漫画だけでなく、ミステリーな雰囲気で作品を描くのも楽しいかもしれない。
「まあ、でもここの料理は美味しいですね!」
「そうね。珍しく気が合うじゃないの」
目の前にいる姑も笑っている。
この騒動も無事に解決してよかった。余計にここの料理も美味しく感じてしまうし、今は二人ともご機嫌だった。