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あの空を、僕は決して忘れない  作者: ヤマノ コダマ
9/9

答え合わせ

 

「皆さん初めまして。私は友利と申します。力を合わせて1ヶ月後の劇は素晴らしいものにしましょう。」配役発表の翌日、学年劇の出演者達は恰幅の良いおよそ50歳前後の男性からの挨拶を聞いていた。この人物こそ、何を思ったか自分を主役に配役したという元凶、否、目下の学年劇の脚本家兼監督であった。


挨拶もそこそこにその場にいる全員に台本が配布された後「台本は行き渡りましたでしょうか。まずお伝えしておきたいのですが、この劇は皆さんと同じく高校生が主な登場人物です。演技をするとなると緊張もすると思いますが、そういう意味では変に役を作らずともリアルなものになると言えますので、出来るだけリラックスして本番を迎えていただければと考えています。ただ、せっかくやるのであれば十分準備を行って、より良い作品をつくりましょう。」その場にいる生徒達に程よい安心感を与えつつ鼓舞することに成功したであろうその話しはさすがという印象であった。


その日は劇の内容や本番までの予定等の説明の後解散となったが恭弥と理子は監督から呼ばれたのであった。「授業で疲れてるだろう中、長時間付き合わせてしまって悪いね。2人はこの劇の主役だから直接演じてもらう人物のイメージを伝えたいと思ってね。」そう言って監督から2人が演じる役の説明をうけることになったのだが、先ほどの説明でこの劇の主役は幼馴染同士であること、そして両思いという設定であることは何となく理解していた。監督から改めて恭弥達が演じる人物のイメージや演技のコツ等を聞きその日は解散することになったが、恭弥は自分が主役に選ばれた理由をどうしても聞きたかったため一度後にした体育館に1人戻るのであった。


「監督、どうしても聞きたいことがあって。」「あれっ、どうしたの?」と帰り支度をしていたためか不意をつかれた様子で声のする方を振り返りながら返答が返ってきた。「俺を主役に選んだ理由を教えてもらいたいんですけど。」単刀直入に質問をしたところ「あ、言ってなかったか。先生方にも聞いたところ、吉野君にも仲の良い幼馴染がいるってきいてね。何よりさっきも説明したけど君が演じる役の人物的特徴も近いと思ったからだよ。」との返答があった。余計なことを話したという先生が誰なのか検討もつかなかったが、「それなら、相手役がその幼馴染本人じゃないのはどうしてですか。」と重ねたところ、「東條さんじゃ何か問題があったかな?」と反撃にあってしまった。返答を考えていたところ、「ごめんごめん、困らせちゃったね。東條さんを選んだのは『長年の勘』かな。」と心なしかしたり顔の上になんとも言えない答えを聞くことになったのであった。

 

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