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神無月の集 2021秋の陣  作者: みふぎゅ
8/11

麗音-rain-

掴めそうで掴めない

気だるげな足音


少し重たい風が運ぶ

どこか懐かしい匂いに応えて

つきんと 一度こめかみが鳴く


もう慣れ親しんだ感覚のはずなのに

まだ心の端が泡立つように震える


どうしようもない衝動に

逃げ出そうとする気持ちと裏腹

気配に絡めとられた身体は

瞼を持ち上げることすらも拒んだ



嗚呼 もうすぐ雨が来る



熱に浮かされた地表を

宥めるように吹いた先触れの風が

名残惜しげに ゆらめく 陽炎ごと連れ去る


押し流されて押し潰されて

弾けて融けては空に還る


片隅で丸まる小さな渦と一緒に

巻き上げられて上昇気流

吸い上げられて雲と合流


太陽と世界を 厚く遮った




ぽつり

不満を こぼすように

アスファルトに滲む点と点


次々と描く水玉模様に

塗り替えられていく心模様


滴るだけに留まらず

もうほら亀裂から決壊しようとしてる


どうしようもない情動に

身体ごと預けてしまいたいのに

理性に絡めとられた本当の気持ちは

言葉に紡がれることすら拒んだ



嗚呼 今日も 雨が降る



熱に浮かされていた額を

慰めるように柔く降り注ぐ雨が

いつまでも燻るあなたへの想いごと濡らす


押し隠して押し込めて

いっそ握り潰してしまいたいのに


空に還ったはずの幻と共に

雫となってまた頬を伝い落ちる

ひび割れてしまった心めがけて


乾いて枯れた喉は 今も もて余して




強くなる雨足の予感に

知らず早足になる道行く人々


色とりどりの傘の花が開き

暗くなる空に地面が抗う


叩く雨音が周りの声を閉ざし

ただ鼓動だけが耳の奥で鳴り響いた




別に浮かれていた訳じゃないの

何食わぬ顔で吐いた心にもない言葉

周り廻って結局 自分自身に突き刺さる


惜しんでも悔やんでも

丸めた紙切れは もう しわくちゃのまま


そっと広げて 濡れた掌に乗せれば

本降りの雨が インクを溶かしていく

伝えたかった言葉 含んで流れていく


黒い涙が描いた 小さな天の川



取り巻いていた熱は 影を潜めて

水纏った景色たちは 色を濃くした


ふと顔を上げれば 白み始めた空が映る

雲間から差し込む光を 反射して煌めく



嗚呼 まもなく雨があがる



明日も雨を探す

明日も面影を探す



爪先踏み入れた水溜まり

反射する光が 切なさに揺れた

雨が好きという自分が大好きだというところも含めて、雨が好き。

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