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神無月の集 2021秋の陣  作者: みふぎゅ
6/11

曇添-don-ten-

今日も灰色の空が告げる

いつもと同じ1日の閉幕


帳が下りて覆い隠す

その日零れた悲喜交々


喜色も悲色も1つ残らず

広げられたカーテンに遮られた



閉じられたはずの幕間から

哀色だけが滲んだ


霧雨 さめざめ

街の悲に重なり

しとり 風景を包み込んだ


覚めやらぬ今日の名残りも

ゆるり融かして洗い落とした



ぽたり ぽたりと

滴る 由し無し事


跳ねる地表の膜となり

透明が層を成す


不機嫌な音を立てて

駆け抜けるタイヤの列に

削られた飛沫はまた 霧雨に還った




色を得たモノクロの世界


君を失えば

元に戻ると思っていたのに


君の部分だけ透明になって

色付いた世界が虚しく写った


こんな気持ちごと全部

枯れてしまえば良かったのに




ぽつり ぽつりと

吐き出された心みたいに


漂う霧を巻き込みながら

閉ざされた空が落涙する


ご機嫌な唄を輪唱する

古池の蛙たちも

頭叩く冷粒に 忽ち帰った




幕が上がれば

また世界は色に満ちる


昨日までの喜怒哀楽全て

緞帳の裏で なかったことにして


透明な君が 光を受けて煌めく

周りの景色ごと 輝かせるかのように


君を通った光が 七色に分かれて

今日も世界は 華やかに彩られた



ひとり置いてけぼりの背中から

伸びた影を見つめた




自分だけのモノクロを引き連れて

幕引きまでの時間を潰す


こんな演出じゃ きっと

三文芝居にも なりはしない


そんなことは 誰より

分かっているけど



いくら水を注いでも

枯れた花は 戻らない


新しく芽吹くまで

信じて待っていたとて

開いた葉も花弁も

同じ名前の違う顔


枯れた花 吸い上げて咲く

強かな薫り放つ 華の奥

鮮やかな花芯から 目を背けた




外されて忘れられた

古い引き幕を羽織って

今日も昨日を

ひとり引き連れて歩く

雨が好きだ と言う自分が大好き

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