糊檻-ko-ori-
ふと目を閉じると
氾濫する言葉たちで溺れて
息が苦しくなるの
もがくことも出来ないまま
飲み込まれて
ただ 流されて
辿り着く先は決まって
ろくでもない思考
真夜中の鏡に向かい合って
目を逸らすときと同じ気持ち
堂々巡りの自問自答
出口と繋がる入り口に
メビウスの輪が嗤った
これが鎖であるならば
どんなに良かっただろう
繋ぎ目のある鎖の輪
引きちぎる日は
きっと自分次第
昇ることも降ることも叶う
繋ぎ合わせの思考の粒
好きなところで千切って
継ぎ足しもお好みで
好きなところで契って
お別れもお好みで
ふと耳を塞ぐと
反響する言葉たちで眩んで
胸が苦しくなるの
吐き出すことも出来ないまま
飲み込んで
また 飲み込んで
落ちていく先は決まって
仄暗い肚の底
澱のように
しっとりと 積み重なり
揺らされる度に 浮き上がる
滔々と流れ込む真っ白な悪意
出口のない そこで
天使だけが笑った
これが鎖であるならば
いつの間に繋がれたのだろう
あるはずの継ぎ目が
見つけられずに惑うだけ
戻ることも行くことも出来ぬまま
途方にくれて座りこむ
足首に絡まる枷 握って
ぬくもりを移していく
体温を分けられ 馴染んでいく枷
首に付けられた記憶は
遥か遥か遠く
指先の感覚を頼りに
探しても 探しても
感じられるのは
つるりとした冷たさだけ
片方で始まりを握って
片方で慎重になぞって
呼吸すら忘れて
指先にかかる きっかけを探す
旅立った指先はすぐ
滑らかに掌へと還った
メビウスの輪をメビウスの輪が繋ぎ
やがて螺旋を築いていく
伝うように下りていく
言葉の姿を借りた澱
肚の底では
澱んだ目をした天使が嗤う
その翼は
積み重なった澱の羽
重くのし掛かる背中を
丸めて座る天使が嗤う
白い白い真っ白だ
悪意なき世界だと信じて笑う
寄る辺無き其処で
信じられるのは己れだけ
仄暗い底から
いつか翔べる日を夢見て
黒い枷を なぞって
切れ目のない輪を数えた
えいえんの ちゅうがく にねんせい