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神無月の集 2021秋の陣  作者: みふぎゅ
1/11

挽嚼-ban-syaku-

軽やかな音を奏ながら

空のグラスに氷を落としていく


今日あった出来事も

こんな風に

腑に落としてしまいましょう



大きな塊が斜めに引っ掛かる

その隙間を縫うように転がる小さな塊


ころころと 笑い声をあげて

底に吸い込まれていった




蒸留酒を静かに注ぎこむ

ピンと氷たちが鳴く


水位が上がる毎に

連鎖して重なってく


指揮者にでもなった気分で

得意気にグラスまわした





激情を飲み下す度に

わだかまりに ぶつかってく


融ける前の悪あがきのようだね

口々に不平を漏らす


体渦巻く恨み言に

耳を塞いだまま

静かに纏わせたら


いつの間にか上手く馴染んで

適度に薄まって

飲みごろになるのでしょう



そうやって全部全部

ご機嫌のまま

飲み込んでしまいましょう





落ち着いたバーカウンターで

渋いマスターが腕を奮う


静かに流れるムーディーな音楽と

おしゃれな間接照明


ちょっと背伸びした服装で

ギムレットなんか頼んでみたり


オリーブを摘まみながら

マティーニでもいいかな





一流コンダクター気取りから

目を開けて現実を見れば


風呂上がりでボサボサの髪

くたくたに馴染んだ いつもの部屋着


手酌で注いだ安物のグラス

お気に入りのアザラシ付きマドラー


大好きなものに囲まれた乱雑な居間

ちょっと ぺたんこ気味のクッション


笑っちゃうくらい いつも通り




くだらないこと考えている間に

丁度良いくらいに薄まってきた

最近流行りのクラフトジン


一口飲み込めば

まあ単純だもの

ご機嫌な夜の始まり




喉に引っ掛かった言葉たちと一緒に

酒精と芳香を愉しもう


胸につかえた想いたちと一緒に

グラス傾け乾杯



腹の中で融けてく あれやこれや全て

身体巡ってバイバイ

健康診断が近いので、気持ち減らし気味

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