雀はチュンチュン、小綬鶏はチョッゲプリィィィィ!!
朝チュンという言葉をご存知だろうか?
朝起きたら雀がチュンチュン鳴き、それが事後の比喩であるというヤツである。
つまり、チュンチュンしていなければ何事も無かったという事ではなかろうか?
そう、確かに俺の股間の毛はパリパリしてるしなんとなくスッキリした感はあるけれど!!!あるけれど!!!!チュンチュンしてませんから!!!!
「おはよ、父さん」
「あ、あぁ……おはよう……」
なんか娘(息子)の顔は赤いけど!!!ちょっと色っぽくなって余裕が出てるような気がするけれど!!!チュンチュンしてませんから!!!!
「…………」
「…………」
何ですかな、この甘い空気は?
よし、何があったのかよく思い出そう。
一緒に風呂に入って……キスをせがまれて…………なんかこう……股間が温かな何かに包まれた感覚は覚えているが……ハッキリとは覚えていないが……前後に刺激を受けた気が……
「……わっ!!? と、父さん学校の時間だよ!!?」
「お、俺も仕事の準備しないと── 」
職場とも学校とも近いモーテルで良かったと思う反面、何が良かったのだろうかと肩でから笑いしてしまう。
モーテルの外へ出ると、雀がチュンチュンと鳴いていた。
◇ ◇ ◇ ◇
「父さん、その、行ってくるね」
店の前でヒカリはモジモジとしている。
いつもとは違い、鞄を両手で前に持ちどこか照れている姿がやけに艶というかなんというかまぁえっちである。
いや……そう見えるのは俺の心が薄汚れているだけか。俺の子供なのに……こんな卑猥な目で見るなんて最低だ。
「父さん……」
「ん? どうした?」
「……行ってらっしゃいのチューは?」
キスではなく可愛らしくチューと言う辺りが分かっていらっしゃる。
なんでこんなにも可愛い…………当たり前だな。
俺の子供だ、俺のヒカリだ。この世で一番大切で一番可愛いに決まってる。
もしかしたら……ヒカリも同じ様な気持ちなのだろうか。
「……偶にはヒカリからしてみたらどうだ? 行ってきますの── 」
言い終わる前に背伸びをしチューをした我が子は、耳まで真っ赤にさせながら振り向かず登校していった。
「訳なんだが、どうしたらいい?」
「知るか!! 死ね犯罪者!!」
仕事どころではなさそうなので、店を閉め大学の同級生南静香のもとへ相談しに来た。
さっそくご褒美の罵声を浴びせてもらう。
「アンタさ、自分のしたこと声に出して言える?」
「私は娘になった息子とモーテルへ行き一緒にお風呂に入ってその後ベッドで射精しました」
「死ね!! 帰れ!! 死ね!!」
ダメ押しの死ねコール。
しかしこんな話を出来るのは彼女しかいないので聞いてもらうしかない。
「俺が死んだらヒカリが悲しむぞ?」
「その腐った脳味噌掻き混ぜて魚の餌にしたいわ。帰れ屑…………ん?」
メッセージアプリの通知音が鳴ったスマホを見た彼女は、鼻で一笑し俺の背中に思い切り張り手をした。
「ほら、とっとと帰って店開け屑男。娘の為に働け、肥溜めの蛆主」
「……そうだな。ありがとう、静香。また来るよ」
「二度と来んな」
病院の裏口から出ると、やけに陽の光が眩しく感じた。
ヒカリの為に頑張るという俺の心の原動力が、強くけたたましく動き出す。
そうだ、何時だって俺はその一つの為に頑張ってきたじゃないか。これからもそれは変わることは無い。
燃え滾るハートが、血流を加速させる。
「よし、静香で一発抜くか……」