3秒ルールの時の3秒は、実際6秒くらいある
「忘れ物は無いか?」
「うーん……あっ、一個だけあるよ」
そう言って目を瞑るヒカリ。
まぁね、これがお互い中高生だったらしてますよ?
しかしながら私も36ですから、ここは大人になってね、はい。
「……へへっ、ありがと」
◇ ◇ ◇
誰にも聞けないような事も、ネットの匿名掲示板でなら気軽に質問出来る。
肥溜の賢者と言われる彼等なら、素晴らしい答えが見つかるかもしれない。
えーっとタイトルは……
【娘から好意を頂いている父ですが】
1 名無し@チチ
どうなの?御意見キボンヌ
2 風吹かぬとも名無し
以下好きな寿司ネタ
3 風吹かぬとも名無し
ハンバーグ
6 風吹かぬとも名無し
イッチの情報無しじゃなんとも言えんよ
7 風吹かぬとも名無し
カリフォルニアロール
8 名無し@チチ
当方36歳、娘14歳。コハダ
11 風吹かぬとも名無し
加齢臭のするスレはこちらですか?
15 風吹かぬとも名無し
犯罪者乙
21 風吹かぬとも名無し
イッチはどうしたいの?そこが問題しょ
23 名無し@チチ
分かりません。娘カワユス
25 風吹かぬとも名無し
娘はどうしたいのかな?
26 名無し@チチ
聞いたことないですね
30 風吹かぬとも名無し
イッチに何を求めてるのか
32 風吹かぬとも名無し
会話が足りないんじゃない?
確かに、ヒカリがどういった気持ちでどうしたいのかを俺は知らない。
会話が足りない……か。
◇ ◇ ◇
仕事も終わり、ヒカリと駅へ向かっている。
会話だ、会話をせねば。
「ヒカリ、あのさ……」
なんだっけ……なんて言えば……
スレを思い出せ……確か……
「好きな寿司ネタってなんだ?」
あれ?これで合ってるのか?
「うーん……コハダ!!」
「ハハッ、父さんもだ。やっぱり親子なんだな」
「父さんが好きだから好きなんだよ?」
あれ、なんだか風向きが良くない気が……
で、たしか次は……
「ヒカリは父さんの匂いって気になるか?」
「ぜーんぶ好きだよ。嗅ぐとドキドキしちゃうっていうか……その……へへっ」
風の民よ、これで合っているのだろうか?
しかし賢者の助言。
蔑ろになど出来るものか。
「ヒカリはさ、今一番何がしたい?」
「…………あそこに入りたい」
駅近くの路地裏。
立ち止まったヒカリの目線の先には、周囲と一線を画す雅な建物。
オジサン知ってるよ?
モーテルっていうシャレオツな建物なんだよね。
何をするかって?そりゃナニよ。
肥溜の賢者に導かれる俺達は、宛ら魔王を倒した勇者と姫。
あそこに泊まり、夜が明ければ宿主はこう言うだろう。
【ゆうべは おたのしみでしたね】
煩悩と理性が交わる時、股間のジッパーは動き出す。
「父さん? 大丈夫?」
耐えるんだ、理性。
俺達は負けねぇよな!?いつだって戦って戦って……振り返れば煩悩達が倒れていた。
今日だってそうだ!!お前が歩みを止めない限り、俺はどんな欲望にも打ち勝ってみせる!!
「父さん、あそこ行こ?」
「うん、行くか♪」
次回、運命のテンカウントに入る。