デートのゴールはベッドイン。男の脳味噌は下半身に有り
「ど、どうなんだ? このままで大丈夫なのか? もしヒカリに何かあったら……」
「…………んなもん知るか!! いきなりやって来て息子が娘になったとか……ハァ!!? 頭可怪しいんじゃない!!?」
大学の同級生、南静香の所へヒカリを連れてきた。
最近開業したばかりの新しい病院。
卒業してからもちょくちょく飲みに誘われる、腐れ縁的な仲だ。
「ヒカリちゃん、厭らしい事されてない?」
「ふふっ、ちょっとね♪」
「いやいや!!!? 南も変な事聞くなよ」
そう、並の野郎では耐えられまい。
何せ俺の娘は滅茶苦茶可愛いからだ(親バカ)
それでも親の威厳を保つ為、ヒカリで自家発電はしていない。
うん、してないよ。
「で、ヒカリちゃんはどうしたいの?」
「女の子になりたい。なれる?」
即決で、真っ直ぐと南を見つめる。
「よし、じゃあ先生色々と模索してみるから。なにか困った事があったら先生に電話して?」
「じゃあ聞きたい事があるんだけど──── 」
二人で内緒話をしている。
時折こちらを見ながらニヤニヤとしているが、何を話しているのやら。
◇
普段来ない街。
せっかくなのでヒカリとブラブラしている。
「ねぇ父さん、俺は今何をして欲しいでしょうか?」
「うーん……っていうか女の子なのに一人称俺でいいのか?」
「変かな……?」
「いや、ヒカリらしくていいんじゃない?」
全てという訳にはいかないが、ヒカリの事はなるべく肯定してあげたい。
ヒカリはヒカリで考えているのだから。
「で、なんでしょう」
「あぁ、えーっと……」
指先がちょこちょこと動いている。
わざとらしく手をぶつけてくる。
となると……
こうまでされんと分からんとは、父親失格だな。
親子らしく手を繋ぐ。
親子らしくね。
「正解♪」
嬉しそうに、繋いだ手を大きく揺らす。
「ふふ、デートだコレ」
デートね……懐かしい響きだ。
まぁ、ヒカリが楽しければそれでいいか。
「ねぇ、父さんは今までのデートで何してきたの?」
そりゃナニよ。
なんて言えるわけ無い。
「まぁそうだな……飯食ったり、景色の良いところに行ったり……とかかなぁ」
「そうなんだ……その時って楽しかった?」
「……うん、楽しかったよ。高揚感っていうか、周りが見えない感じが……って何言ってんだ俺は」
無駄に照れていると、ヒカリは難しそうな顔で俺を見つめていた。
どこか不安気で、不安定で……
「どうした? 大丈夫か?」
「あ、あのさ……今……楽しい?」
「あぁ、楽しいよ」
「そっか……そっか……へへ、そっかぁ……」
嬉しそうなヒカリ。
うんうん、父親としての選択肢は間違っていないようだ。
「ねぇ父さん、しゃがんで」
「ん、こうか…………なっ!!?」
頬に柔らかな感触。
顔が真っ赤になるヒカリ。
「へへっ。デート、どこ行こっか」
可愛すぎるぞ、娘よ。