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2回目はBadEndを目指そうと思ったけど、結局TrueEndを選択してしまう俺はビアンカ派


「父さーん、お風呂入ろー」


「そうだな、入るか」


    ◇


 世の中には数え切れない程の選択肢が存在し、その選択肢の数だけ道が広がっている。

 ある青年は、考えうる限り最悪な選択をし続け、遂には遠い国でプリケツ大往生。

 

 で、何を言いたいのかというと……


「ハァ……今日は少し冷えたから、お風呂気持ちいいね」


 俺は今選択肢を間違えた。

 娘になった息子と狭い湯船に浸かっている。

 

 向かい合った視線の先には、包み隠さずにおられる神秘のたわわ。

 結構でかいな……


「気になる?」


「そりゃ気にな…………」


 ニヤニヤとこちらを見て少しずつ体を寄せてくる。

 ヒカリめ……からかって愉しんでるな……


「あのな、父さんとヒカリは家族なんだぞ? こんな真似してどうする。明日病院に行って何とかして貰うから── 」


「……なんで? 父さんは女が嫌いなの?なんで!?」


「だ、だって家族だろ?そんな……」 


「父さんの馬鹿!!」


 泣きながら浴室を出るヒカリ。

 また一つ、選択肢を間違えた。

 でも何が正解なんだ?

 ……間違えたと思った時点で駄目なんだろう。

 

    ◇


 まだ早い時間だがヒカリは寝室で横になり背中を見せている。

 鼻を啜る音が聞こえるので泣いているのだろう。


 ここも一つの選択肢。

 

 常識を疑いたくなる様な出来事だが、そんな事をしても良い事など何も無いと先人が身を持って教えてくれたではないか。


 今はただ素直に、自分の子供と向き合うべきだ。


「ヒカリ……さっきはゴメンな。父さんさ、混乱しちゃってて……どうしたらいいか分からないんだ。急に息子が娘になって……その……何をそんなに悲しんでるんだ? 父さん鈍いからさ……教えてよ」


「……父さん、俺の事好き?」


「あぁ勿論だ。この世界で誰よりも愛してるぞ?」


「……やっぱり鈍いよね。疲れちゃったから寝るね。お休みのキスして」


 いつもならおでこに軽く口をつけて終わるんだけど、目を瞑ってこちらを向いているヒカリを見ると、今日その選択肢は無いんじゃないかと感じた。

 

 優しく口に付けて、頭を撫でる。

 少しだけ満足気な顔をしたヒカリを見て安心する。


「へへっ、大好き♪ お休み!」


 その無垢な笑顔に、胸の奥が少しだけ動いた。

 懐かしさを感じる……いつだっけな……


 ヒカリが寝息を立てるまで、手を繋いだ。

 前よりも少しだけ細くなった指。

 ……女の子だもんな、もっと優しくしないと……


 少しだけ目を瞑ろう。

 今日女の子になったのなら、明日また男の子に戻るかもしれない。

 そうしたら……あれ?


 それは俺の問題だよな……

 ヒカリは……ヒカリはどう思って……

 

 そうか……俺は自分勝手な人間なんだな……

 向き合っているつもりになってたけれど、それはただの一方通行で。

 本当に必要なのは、相手に寄り添う事。


 妻にも逃げられる訳だ。


    ◇


「わー、やばい遅刻しちゃう! 父さん、起こしてよー」


「いいよ、今日は休めば。大体制服だってどうするんだ? スカート履きたいんだろ?」 


「父さん……」


「医者の診断と書類があれば、戸籍の性別を変えられるんだって。父さんの知り合いの病院に行こうか?ヒカリはどうしたい?」


「……ギュってして欲しい」


 可愛すぎる台詞と顔の前では、理性もヘッタクレも無い。

 優しくする筈が、思わず力強く抱きしめた。


「父さん、俺……女の子がいい」


「分かった。精一杯サポートするよ」


 これでいい。

 これが今出来る最高の……


「それとさ、俺……」


「ん? どうした?」


 押し倒される格好で、ヒカリが俺の上に覆いかぶさってきた。

 そのまま口を口で塞がれる。


「大好き♪」


 うん、選択肢を間違えたかもしれない。


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