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Nightmare Alice  作者: 雀原夕稀
一章 夜会は血と怨嗟に塗れる
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怨霊は智と躰を求む

 前話の鑑定に関してですが、スキルから道具によるものに変更しました。

 

 現状の確認は終了。という訳でさっそく修業を始めようと思うが、修行と一言でといってもやることは沢山ある。


 まずは、魔法やスキルをもっと使えるようになること。ステータスを見れば分かることだけど、ワタシは後衛特化型。なので攻撃手段となる魔法とそれを補助するためのスキルは鍛えることが必須になる。


 で、ワタシが魔法を使いこなすためにまず必要なのは、知識だ。例えば、呪詛魔法。今のワタシは以前よりずっと自在に呪詛という属性を扱う事が出来るようになった。けれど、ワタシは呪詛にどんなものがあるのかをよく知らない。......召喚先で禁忌の術とされているものを一体どう学べというのか。ぶっちゃけ、わたしの呪詛を私が取り込むことが出来たのも、感覚で何となくやったし。

 それに、わたしにも魔術の知識はほとんど無かったし。魔力の制御くらいならともかく、そこから先の各属性の魔術については、父が危険視して部屋に置くことは無かったから。


 だからこそ、知識は何より必要となる。そしてそういった魔術や、表に出せない禁術に関する知識がここにはたくさん眠っている。公爵邸の一室に置いておいても問題ないものとは違う、危険ゆえに有用なものが。それがあるからこそここを潜伏先に選んだのだけど。

 そしてこういった学習分野はワタシの得意分野。伊達に高速思考や並列思考が身に付くほど努力してきたわけでは無い。

 

 後、それらと並行して魔力の制御や感知の鍛錬もこなす。これらの能力は幾ら鍛えても困ることは無いし。

 それに、本人が内包する魔力の最大値は日々少しずつ増えるものだけど、魔力を使用する事によってその幅も成長していく。つまりは使えば使うだけ魔力は増える。だからこそこれらの鍛錬は決して欠かしてはいけない。


 ちなみに、これらの鍛錬には思考処理能力、つまりは高速思考や並列思考を鍛える意図もある。先程も上げた学習能力と言う意味でもそうだけど、魔力や魔法の制御においてもとても役立つ。例を一つ挙げるなら、魔術や魔法の高速発動や多重発動が容易になるとか。

 そして処理能力を鍛えることによって魔力制御能力なども鍛えられ、そしてまたこれらが鍛えられる。まさにWin—Winの関係。 

 

 と、いう訳で。鍛錬開始といこうかな。




 ——しばらく本を読みこんでいく内に、面白いことが色々と分かってくる。魔法、それらの属性がどういうものなのか、について。

 

 まずは闇魔法。この世界での闇という属性は、一言で言うなら「呑む」、と表現するのが正しい。闇を球体にして放てば、当たったところとその周囲が消える。煙幕みたいに黒い霧を出せば範囲内の光を奪う。使い方次第では魔力や体力だけを奪うなんてことも出来る。吸収、消滅、言い方は様々だがそんな感じの特性と言うべきかな。空間属性と似通っているというか、一部に特化している感じがする。

 ちなみに光属性はその逆で、放出、弾き飛ばすという特性らしい。その関係で、闇属性と光属性をぶつけた場合、同じ魔力を込めたものなら反発しあった後に両方とも消し飛ぶのだとか。


 次に、呪詛魔法。調べて分かったことだけど、呪詛の種類は凄く多い。単純な物でも相当な数があるし、それを複数組み合わせることで複雑かつ効果の高いものを生み出すことも出来る。その分魔力の消費量も高くなるので今のワタシに使えるのにも限度はあるけど、うん、実に面白い。さっそく色々試したいんだけど、生憎ここには鼠一匹いないので、実際に試すことが出来るのは本番までお預けになる。


 死霊魔法。死霊や霊体系の魔物——いわゆるアンデッドと呼ばれるモノを使役する魔法。呪詛魔法には隷属——奴隷などに使われる、強制的に他者を使役する呪詛——があるけれど、それの死霊特化型、と言えばいいだろうか。死者の魂から新たに魔物を生みだしたり、元々存在する野生の死霊系魔物を使役したり、使役した魔物に素材や魔力を与える事でより強化したり。術者の中には、自らに死霊術を掛けることで人外の存在へと変貌する事を選ぶ者もいる。

 これもここでは試しようがない。だってここに死者の魂なんていないし。


 空間魔法。これについては他よりも制御が段違いに難しい。更に、魔力の消費量も桁違いに多い。転移なんかは便利だけど、今のワタシではほとんど使えない。せいぜいできるのは結界への干渉くらいだと思う。でも、これは地味に役に立つ。特に都市の結界に空間魔法で上手く干渉できるようになれば、気づかれないで侵入することも可能になるし。

 



 ——で、だ。こうして来るとワタシの弱点が浮き彫りになってくる。うん、分かっていたことだけど、ワタシの魔力量、少ない。いや、一般的な怨霊と比べたら多いんだろうけど、色々とやるには絶対に足りない。魔法は魔術と比べて自由度が高いけど、その分消費量が多い。魔力量を伸ばすにもタイムリミットは三カ月後。このままでは、到底十分な量には間に合わない。

 

 それをどうにかする方法は、思いつく限り一つだけ。魔物には、種族の〈進化〉によって急激に強くなる。進化が起きる正確な条件ははっきりしていないが、スキルが一定以上まで極めることや一定の経験を積むこと、または何かを取り込むなどの外的要因が関わっていると考えられている。

 ワタシが狙うのは、外的要因による変化。宝物庫にあるものを利用して、進化を狙う。それを行うための物にも検討を付けている。視線を向けた先にあるのは、例のワタシがここに入るために使った人形。そう、ワタシはこれを体にしようと思っている。

 

 ......正直、霊体ってやりにくい。ある程度の物体を透過出来たりするのは便利だし、浮遊も結構使い勝手がいい。けれど肉体が無いのにはどうしても違和感がある。魔力を消費することで実体化は出来るから問題は無いけれど、どちらかと言えばやっぱり肉体が欲しい。

 それに、霊体には一つ致命的な欠点がある。魔物には最大の特徴として、魔石という部位を持つ。これは魔物の命の源であり、これを失えば魔物は死ぬ。例外として、霊体の魔物は魔石を持たないけど、霊体そのものが力の源であるため、全身=弱点になる。たった少し怪我を負った時でも回復はとても遅くなるし、大きく弱体化することは避けられない。

 

 という訳で、体を用意して進化を目指す。まずは、人形に魔力を毎日流してワタシとの親和性を高める。次に、使える素材で人形を強化し、魔石の元となるものを作って埋め込む。注意点としては、あまり強化しすぎるとワタシと融合することが出来なくなってしまうので、適度な強化に留めること。

 

 ——それでは、レッツメイキング!


 捕捉になりますが、アリスの「ワタシ」の表記は、アリス・クラウ・ガンダルヴの〈わたし〉、橘有栖の〈私〉、魔物となったアリスの〈ワタシ〉となっています。

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