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Nightmare Alice  作者: 雀原夕稀
一章 夜会は血と怨嗟に塗れる
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潜む怨霊は牙を研ぐ

 ——さて、まずワタシがすべきことは、現状の確認だろう。具体的に言うなら、自身のステータスの確認をし、現在の自分の強さがどれぐらいかを知らなくてはいけない。二つの魂が混ざり、更には魔物に変化している以上、どう変わってるかなんてまるで分からないしね。 


 という訳で、まずは情報を見ないとね。という訳でワタシは人形に近寄り、左目の宝石を外す。その奥に手を突っ込み、眼下に収められていた青い宝石のついたネックレスを取り出した。 

 これは、鑑定石という魔力を込める事で対象を調べることが出来る石。何年か前に例の侍女の子がわたしにくれた、大事な贈り物。生前から他の人に見つからないように人形に隠していたのだけれど、おかけで宝物庫の中まで持ってこられた。

 では、鑑定っと。


 


 名:アリス 種族:レイス 年齢:0

 スキル:魔力精密制御、魔力精密感知、鑑定、並列思考、高速思考、体術、憑依、透過、浮遊

 固有スキル:呪歌詠唱、死霊の愛し子

 魔法適性:闇、呪詛、死霊、空間


 


 ......思っていた以上に、変化していた。うん、一つずつ確認した方が良さそう。


 名前、種族、年齢なんかは問題は無い。......0歳とか違和感しかないけど、うん、問題ない。


 確かめる必要があるのはここからかな。まずはスキル。簡単に言うと、本人が有する技能、能力を表したもの、といったところかな。ただこの世界では〈スキルがあるからそれが出来る〉のではなく、〈出来ることがスキルとして表示される〉というのが正しい。だからスキルの効率的な覚え方、なんてものは無く全ては本人の力量次第。それにスキルとは表示されなくとも、それ以外で使える技能だって普通にあるし。

 本人の能力が高まることでスキルの名称が変わる『進化』と言う現象もあるけど、ソレだって急激に力が増えるなんて都合が良いことは起きはしない。能力をどれだけ高めたかの指針とはなるけれど。......()()()、だけど。


 ワタシのスキル数は今の所八つ。一つ一つ確認していこう。



 まず前提として、この世界には魔力と言うエネルギーが存在している。人獣植物問わず全ての生命、いや地や大気なども含めた全てが宿しているそれは、世界の根幹そのものと言っても過言ではない。

 生物は体内に内包する魔力がもろに命に直結する。魔力が減れば体調に影響するし、多量に失えば大きな支障が出ることもある。食事や睡眠などを始めとした休息によって魔力は回復するけれど、それらを満足に取らず魔力不足な状態が続けば最悪命を落としかねない。

 他にも、魔力は人類の生活を支える基盤ともなっている。さらに言うなら、ステータスに表示されている()()を始めとしたスキルなどは魔力ありきなものだし。

 

 つまり、魔力とは命であり、燃料であり、力の素なのだ。



 話を戻すと、魔力精密制御と魔力精密感知はその魔力を扱う上での大事な能力。

 魔力操作——内包する魔力を操る力。極めることでより多くの魔力を、より繊細に操れるようになっていく。

 魔力察知——魔力を感じる力。極めればより遠くの魔力や秘匿されたものであれ感知できるようになる。また魔力を制御する上でもこの感知能力は必須。

 まさに基礎にして極意とも言える能力、いや技能だろう。

  

 ちなみに、魔力精密制御と魔力精密感知は本来の操作や察知から二回進化している。ワタシがわたしだった頃、寝込んでいる間に魔力の操作や感知を毎日のようにやっていたからね。いつか魔術を使う事が出来る機会が出来た時の為に、って考えて。......そんな機会は無かったけど。

 まあ、その結果としてこうしてワタシに技能が受け継がれたのだから良しとしよう。通常のレイスとは魔力系統においては段違いだし。


 次に、高速思考と並列思考。思考速度と思考処理能力——ようはどれだけ多くの事を、どれだけ素早く処理できるのかを表すスキル。これもわたしだった頃から持っていたスキル。これも寝たきりで出来ることを身に着けようとし、その結果得た力。ワタシが公爵家で恐れられるようになった理由でもある。


 体術は、私だった時に訓練、という名の拷問を受けていた時に身に付いたスキル。戦闘時における最低限の体の動かし方ぐらいは身に付いた。......感謝は一切しないけど。

 憑依と透過と浮遊は霊体系の魔物であれば基本的に持っているスキルで、それぞれ対象に取り憑く、物質を通り抜ける、宙に浮く能力になる。


 ......こうしてみると、スキルはわたしだった頃に持っていたものが多い。......いや違う、決して、私が無能だったわけじゃない。


 ......うん、スキルの確認は一通り済んだし、次に固有スキルといこう。


 固有スキル——通常では持ちえない、特殊なスキル。その力は千差万別だけど、総じて強力なものが多い。習得方法もバラバラで、習得者は殆どいないと言われている。だからこそ、全員がそれを有している召喚者と言う存在は異常なのだけど。

 固有スキルは生まれ持った者もいれば、いくつかの能力を極めた果てに手にする場合だってある。召喚者が有しているのは、召喚の際に授けられたものなんて説もあるらしいけど、本当かどうかは知らない。


 そしてこの固有スキルが通常のスキルと違うのは、スキルの進化に関して。固有スキルは進化する事によってその力が跳ね上がる。元が強力だからその進化も起きにくいみたいだけど。ただそういう点もあって、誰もが固有スキルを有している召喚者は優遇されているみたい。......私みたいな例外もあるけどね。


 ワタシの二つの固有スキル〈呪歌詠唱〉、〈死霊の愛し子〉。ただこれは魔物に生まれ変わった際に手に入れた力で、召喚された当時に私が持っていた力とは結構変化している。


 〈呪歌詠唱〉の前身のスキルは〈呪詛の御手〉。術式を通さずに自在に呪詛を扱う事の出来るスキルで、割と使い勝手のいいスキルだった。このスキルが変化したのは、わたしの魂から取り込んだ呪詛と、魔物になったことの影響だと思う。何せ、このスキルは魔物が持っていても意味が無いのだから。

 



 この世界には()()という技術がある。魔物は魔力を直接火や水などの現象に変換し、自在に操ることが出来、これを()()と呼ぶ。それに対抗するために生み出された技術が魔術である。術式によって形は決まっているものの、魔法のように魔力を様々な現象に変換する技術。最初は戦闘目的で生み出された魔術だが、やがて様々な分野で発展していき、やがてこの世界の生活の基盤となっていった。


 私が使っていた呪術や死霊術、これらの正式名称も〈呪詛魔術〉〈死霊魔術〉になる。ちなみにこれらのスキルがあったはずなのに今ステータスに表示されなくなったのは魔物になったから。......私だった頃のスキルが少ないのはそのせいだからね。魔力操作や魔力感知のスキルも持っていたし、......わたしには劣っていたけど。だから、私は無能だったわけじゃない。......きっと。



 

 話を戻そう。魔物になった以上、魔術という一種の枷はワタシには無くなった。だから、枷を外す効果を持つ〈呪詛の御手〉は産廃以外の何ものでもなくなった、筈だったんだけど。魔物になったことが影響してか、このスキルに変化が生じた。

 ——固有スキル〈呪歌詠唱〉。声、特に歌に呪詛魔法を込めた際に、その効果を通常より大幅に高めるスキル。また、声の通りやすさや聞こえる範囲にも大きく補正が掛かる。実際の効果を試せる実験体が居ないのは残念だけど、結構いいスキルだと思う。余談だけど、私だった頃に持っていたはずの歌唱というスキルが消えていたのはこれの影響だろう、たぶん。


 〈霊魂の導き〉の効果は、霊魂の視認と会話が可能になること。さらに、特定の霊魂と契約することで様々なサポートを受けられるようになり、自身が死んだときには今度は自分が霊となり、他者をサポートできるようになる、というスキルだった。これが変化したのが〈死霊の愛し子〉。簡単に言うなら死霊を始めとした霊体系の魔物から好かれやすくなり、彼らが従いやすくなるというもの。

 それだけ、と思うかもしれないけどこれは結構ありがたい。死霊魔法は簡単に言うなら死霊を使役する魔法。その上で彼らからの好感度は地味に大事な点になる。......私だった頃に話相手にでもなって貰おうと思ったけど、意思疎通が上手くいかなくて諦めた。大抵死霊なんてのは恨みつらみで変化したから当然なのだけど、自我が崩壊しているのがほとんどだし。ワタシみたいに記憶や自意識がここまではっきりとしているのは奇跡といってもいいかも。

 だからこそ、この愛し子の固有スキルは後々役に立ってくれるに違いない。......うん、後々。これも宝物庫の中じゃ試しようがない。

 

 どちらも今は試しようがないけど、優秀。使える機会が来るのを待つとしよう。



 後は、魔法適性。これは自分がどの属性を扱えるのか、という適性を表す項目。これは人種だろうと魔物だろうと関係なく、この適性のあるものしか扱う事は出来ない。ちなみに人だった時は、魔術適性と表示されていた。


 ワタシの適性は闇、呪詛、死霊、空間の四つ。闇属性はわたしの、呪詛属性と死霊属性は私の元々の適性だから、こいつらはいい。


 ......問題は、空間属性。おまえどっから湧いてきた。空間属性は、名前の通り空間に干渉するための属性。転移や空間収納、更には結界なんかもこの属性が関係している。魔物の侵入を阻害する結界も、空間属性と聖属性を合わせたものだし。とても優れている属性だが、その分制御が難しく、希少性も高い。


 うん、優秀よ?うれしいのよ?でも何で扱えるようになったのかがさっぱり分からない。......まあ、いいか。何とか使いこなせるようになろう。


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