夜会は血と怨嗟に塗れる——高慢・後——
「グフゥッ!?」
ヒュンケルを蹴飛ばし、仰向けに引っ繰り返す。彼は何とか動こうとしているが、呪詛に侵された体はピクリとも動きはしない。
「......うん、仕込みは十分ね」
四肢に突き刺した呪詛魔法の跡から、黒い根が手足に張っている。無事に呪詛が根付いた証拠。実際に発動するのはこれが初めてだけど、多分大丈夫だろう。まあ、失敗したところで別に構わないし。
机に近づき、食事用のフォークを一本手に持つ。流石公爵家ともなればいいものを使っている。これならば、十分刺さるだろう。
「......それで、何を、する、つもりだ......」
ヒュンケルが息も絶え絶えに聞いてくる。気丈なふりをしているが、声の震えは誤魔化しきれていない。
「何って、決まっているじゃない。っと、この服は邪魔ね」
ヒュンケルの前に屈み、彼の服の胸元をはだけさせる。よし、これで準備完了。そこにフォークを当て、狙いを定めてから手を振り上げる。
「っ!?や、止め......」
「こう、するのよっ!」
必死に絞り出した懇願の声に耳を傾けることも無く。ワタシはフォークを振り下ろし、——ヒュンケルの胸の左側、心臓部へと突き刺した。
「グッ、があぁぁぁ!?」
「ヒュンケルっ、イヤァァァァァァァ!?」
フォークを突き刺したところから血が噴き出し、刺されたヒュンケルと周囲に転がる人々の叫び声が食堂に響き渡る。特にイリナ夫人の悲痛な叫び声。ああ、これが聞けるだけでも事を起こした甲斐がある。
——でも、ここからが本番。
「ガ、アァァァ、......あ?どう、なって、いる?」
「......え?お兄、様......?」
ヒュンケルの声に疑念が混じる。周囲も何かおかしいと気付き始め、叫び声が止む。まあ、何が起こっているのか、正しく理解できていないのだろう。
ヒュンケルの胸の傷は致命傷とまでいかないものの、十分に深い傷なのは見ただけで分かる。だというのに肌の血色は変わらず、彼は依然と同じように話すことが出来ている。本人にしか分からないだろうけど、もう痛みすら感じていないに違いない。
ヒュンケルは、自身の状況を理解できていないまま、こちらに視線を向けてきた。まあ、ワタシが何かしたと気付くのは当然か。
「......俺の体に、何をした?」
「フフッ、何だと思う?」
「っ貴様ぁっ!?いいから答えっ、っ!?」
ワタシの態度が気に喰わなかったのか、声を荒げ体を震わせるが、直後に動きを止めた。ああ、どうやら始まったようね。
「何だ、今のは......」
何かは分からずとも、自らに何かが起きているのは分かるのだろう。自らの体に襲い来る未知なる感覚に、ヒュンケルの顔が戸惑いと恐怖に染まっていく。
それを見ているのも面白いのだけど、折角だし。ネタ晴らしと行きましょうか。
「実はね、さっきから貴方の体に複数の呪詛魔法をかけているのよ。ほら、手足に黒い根が張っているでしょう?」
「何っ!?」
どうやら彼はワタシに言われて初めて気付いたらしく、手を見て絶句している。というか、気付くの遅くない?
っと、それよりも肝心なのはその効果。それがどんなものであるかを、ワタシはヒュンケルへとゆっくり突きつけていく。
「呪詛の内容は大別して三つ。一つは、延命の呪詛。致命傷を負っても死ぬまでの時間を引き延ばす呪詛よ。痛覚を鈍くさせる効果もあって、医療用の呪詛と言ってもいいかもしれないわね」
この言葉に、ほとんどの者が眉を顰める。ワタシがこの呪詛を使う理由が分からなかったのだろう。
「......拷問にも使えそうな呪詛だな」
——一部を除いては、だけど。
「ええ正解。流石は元宰相様ね」
「......貴様に称賛されても、嬉しくも何とも無いがな」
声を発したのはハーヴェス。そう、これは拷問にも使われる呪詛。命を引き延ばし、より長く苦しみを与える為のものとも言ってもいい。拷問用なら痛みを感じるようにした方がいい、と思うかも知れないけどそれは用途次第。今回の場合はこっちの方が適切だと判断したまで。
「そしてこれを掛けたのは、二つ目の呪詛の効果をより長続きさせる為ね」
「もったいぶるなっ!?その呪詛は、一体何だっ!?」
自身に何をされたのか分からない恐怖に耐えかねたのか、ヒュンケルが悲鳴にも似た叫び声を上げる。まったく、こらえ性が無い。ここからがいいところなのだから。
「フフフッ、順番に説明してあげるわ。——話は変わるのだけどね。この三カ月、ワタシは考えたのよ。復讐するに当たって、どんな方法が一番いいかってね」
そうこの三カ月間、ワタシはずっと考えていた。——誰に何をしたら、最高の復讐になるのかを。
復讐と言っても、それは個々に異なるもの。只殺すだけじゃ駄目。誰にどうしたら一番残酷な結末になるのか。いや、この三カ月だけじゃない。生前の頃から、頭の片隅で、ずっと。
「ヒュンケル、貴方の場合はね、その無駄に高いプライドをへし折ることが一番だと考えたの。そのプライドが原因で、ワタシは毒を盛られることになったのだし。自身より優秀な人間を認められないというプライドの高さゆえの劣等心に、ね」
まあ、その毒を盛るという行動は、一体誰の発想なのやら......。一瞬視線を向けるが、そっと視線を逸らされた。本当、いい性格しているわ。っと、今はこっち。
ワタシに散々言われたヒュンケルの顔が憎々し気に歪んでいる。心当たりはあるけれど、それを認められない、認めたくないというのがありありと伝わってくる。
「......貴様の戯言はともかく、それがどうした。それが、さっき言っていた呪詛とどう関係するっ!?」
「そうね、話を続けるわ。そこからワタシは考えたの。貴方のプライドの、その根幹は何か、って」
「......根幹、だと?」
あら、どうやら本人は気付いていないらしい。結構簡単なことなんだけど。
「それはね、自身の才でも、積み重ねた努力でもない。公爵家の正統な後継、貴族という他の人より高い地位に生まれた、受け継いだ血にあぐらを掻いた、高慢さ。それが、貴方の根幹でしょう?」
「なぁっ!?」
ワタシの罵倒にも近い発言に、ヒュンケルの顔が真っ赤に染まる。口をパクパクさせているけど、怒りゆえか、はたまた自覚があったのか、言葉が出てこないみたい。
まあ、必死に目を反らしているとはいえ気付かないわけもないか。さっきから散々才能がない、能力が劣ると突きつけ続けてきたんだし。それにヒュンケルにとっては口癖みたいなものだったしね。公爵家の跡取り、高貴な血、という彼の母から刷り込まれた教えは。
......おおっと、そろそろかな。
「だから、ワタシは貴方にある呪詛をかけた。それが、二つ目の呪詛よ。その効果、なんだけど。ほら、手を見てみなさい」
「......手?一体何が......」
ヒュンケルが言われるままに自身の左手を見る。だが何も分からなかったのか、今度は右手へと視線を変える。拘束されたままの体を何とか動かし、首が右を向く。
そして、首を傾けたために体が揺れて。
——その揺れに合わせて、視線の先の右手の指が、ボロッ、っと崩れ落ちた。
「......は、ぁ?」
ありえない光景に、思考停止したのだろう。だが、視線の先の現実は変わらない。地に落ちた指は、灰色に変色し、そのまま粉に——塵となる。
そして、その現状を正しく理解した瞬間。
「あ、あ、ああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!??俺、俺の、指がっ、ああああぁぁぁぁぁぁぁ!?!?」
「イヤァァァァァァァ!?何よ、これぇぇぇぇ!?ヒュンケルッ、ヒュンケルゥゥゥゥ!?」
「若様、若様の指がっ、アアアアアァァァァッ!?!?」
再び食堂が阿鼻叫喚に包まれる。未知の現象に、恐怖の叫び声があちこちから上がる。
「アハッ、アハハハッ、アハハハハハハハハッツ!?」
それを聞きながら、ワタシは嗤わずにはいられなかった。いや予想以上にいい反応で、嗤いを抑えられなかった。まあ仕方あるまい。この光景こそ、ワタシが見たかったものなのだから。
「アハハハッ、っと、それでどうかしら、ワタシの呪詛は?お気に召した?」
ひとしきり嗤い声を上げた後で、ヒュンケルへと問いかける。顔面は蒼白どころか土気色をしており、目は混乱のあまり焦点が合っていない。
それでも自分に何が起きているのか聞かずにはいられないのか、或いはその現実を受け入れられないのか。恐怖に喉を詰まらせながらも、必死にワタシに問い掛けてくる。
「これ、は、何だっ......?幻覚、か......?そう、なんだろう?なぁ......?」
幻、ねぇ......。生憎、同じことを二度繰り返すつもりは無い。それに、そんな生温く済ませるつもりは無い。
ヒュンケルを見下ろしながら、ワタシは答えを口にする。彼に現実だと突きつけるべく。
「これはね、塵芥の呪詛。種別としては石化に近いわね。これは石じゃなくて塵だけど」
「......石、化?」
そう、この呪詛は特定条件を満たしたときに発動する、対象を生きたまま塵へと変えるもの。石化の呪詛から発想を得た、ワタシのオリジナル呪詛。
——そして、それが発動する特定条件は。
「この呪詛は、出血量に応じて対象を塵へと変えていく。つまり血を流せば流すほど、その者は端から塵へと変化するの」
「っ出血!?」
ワタシの言葉にヒュンケルがハッとして胸元を見る。ようやく気付いたみたいね。
延命の呪詛の効果で痛みを感じていないヒュンケルだが、傷が治った訳ではない。胸の傷からは今も血が流れ続けている。それを彼が忘れてしまっていたのは、まさにその痛みが無いからに他ならない。
痛覚が無いというのは、自身の状態を正しく認識できないという危険性も孕んでいる。今のヒュンケルがまさしくそう、既にその出血量は致死量を超えている。普通に話せているせいで勘違いしていたみたいだけど、本来ならとっくに死んでいるはずの状態なのだ。
まだ生きているのは、延命の呪詛によって命が繋がれているため。......正しくは、無理やり生かされ、死ぬことが出来ない状態と言うべきだけど。
ただそれもずっとは続かない。延命はあくまで死を先延ばしにするだけだし、何より彼の出血量が一定を超えたことで塵芥の呪詛が発動したから。——血が流れ出ると共に、体の端から塵と化していく呪詛が。。
そして、一度それが始まれば、もう止まることは無い。
「ああ、待て、待て、待て待て待てっ、ああああああっ!?!?」
右手だけじゃなく、全ての四肢が崩れ始める。両足の靴はポロリと転がり、ズボンの裾側から平らに潰れていく。服の隙間から漏れ出た塵が、地面に広がる血だまりに溶けていく。
「来るな、来るな来るな来るなぁっ!?」
ヒュンケルが、恐怖のあまりか無理に体を動かそうとする。......まあ、何とかしたいのは分かるけど。
「——それ、逆効果よ?」
ワタシの言葉と同時にピキリッと硬質な音が響き、まだ手の甲までしか塵化していなかった左腕が一気に二の腕部分まで崩れ落ちる。
「あああああああああああああああああああっ!?!?」
「無理に動くと一気に崩れるから......、って遅かったわね」
傍目には塵と化しているのは一部でも、呪詛の侵蝕はそれよりも進んでいる。あくまで崩れ落ちたのは完全に塵となったというだけ。既にその体の大半は脆い組成に変化している。そんな状態で動いたらどうなるか、その結果がこれ。
左腕が崩れ落ちた恐怖に叫ぶヒュンケルだけど、流石に下手に動くと危ないと理解したらしく、体を動かすことを止めていた。......もう呪詛の侵蝕が進みすぎて動かないだけかもしれないけど。
やがて、ゆっくりとヒュンケルの首がこちらへと向けられた。その顔は恐怖一色で染まり、先程までの傲慢さはもう欠片も感じられない。
「......何故、だ?」
「ん?」
「何故、こんなことをする!?殺すならさっさと殺せばいいだろう、なのに何故っ!?」
ああ、そういえば説明してなかったっけ。
「さっきも言ったでしょう。復讐って」
そしてワタシは彼に説明を始める。この行為の意図を。
「先程も言った通り、貴方の根幹は血への誇りを履き違えた、愚かなまでの高慢さ。だから、貴方の価値を正しく示してあげるのよ」
——優しい口調で、分かりやすく。
「高貴な血が流れ出た貴方は、誇るものなど何もない、唯の塵芥」
——子供に言い聞かせるように、ゆっくりと。
「だから、塵芥の呪詛。その身は生きたまま、無価値な物に——塵へと変えていく呪詛」
——貴方の価値は、この程度の物などだと。
「ワタシから貴方への、最初で最後の呪詛よ」
それを聞いたヒュンケルは、ワタシの顔を見たまま絶句している。やがて、ポツリと何かを呟いた。
「......ぇ、く、ぇ......」
「ん?聞こえないのだけど?」
ワタシがワザとらしく聞き返すせば、彼は目を見開き、涙を流しながら懇願し始めた。
「......頼む、もう殺してくれぇっ!」
どうやら、もう心が折れてしまったみたい。まあ、仕方ないか。生きたままゆっくりと塵に変わっていくのを耐えられるなんて端から思ってなかったし。
それでももう少しは楽しませてほしい。そんな思いから、ヒュンケルを優しい口調で煽ってみる事にする。
「あら、もうギブアップ?痛みは無いでしょう?」
「感覚はあるんだよぉ!?体が崩れて、消えていくんだっ!?こんなの、耐えられるかっ!?」
「せっかく、延命の呪詛で一秒でも長生きできるようにしてあげられるのに......。この呪詛、結構優秀でね?頭だけになっても少しは生きてられるのよ?」
「あ、頭だけぇっ!?嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だぁっ、っああああああぁ!?」
あらら、折角長生きできる方法を教えてあげたのだけど、余程嫌だったらしい。その恐怖で体が震え、その拍子で右脇腹部が塵となった。
......もう少し見ていたかったけど、そろそろいいか。既に四肢は完全に塵と化しているし、胴も半ば崩れてきちゃった。次も詰まっているし、ここいらで終わりにしようかな。
——最後の仕上げが残っているけど。
「じゃあ、これで終わりにしましょうか」
そう言いながら、胸に突き刺さったフォークを掴む。それを聞いたヒュンケルはぐしゃぐしゃに歪んだ顔に、微かな安堵を浮かべていた。
......本当に、甘いこと。ワタシが、最後にその願いを素直に叶えてあげる訳が無いのに。
「ああ、言い忘れていたわね。——最後の、三つ目の呪詛の事」
「......え?」
その言葉に、ヒュンケルの表情が凍り付く。
「言ったでしょう?三つの呪詛って。忘れていたの?」
彼は初めその意味が理解できなかったのか、呆然と口を開けたまま固まる。やがてその表情が先程以上に引きつっていく。そしてその首がゆっくりと、嫌だ嫌だと駄々をこねるように左右に振られる。もう止めてくれ、勘弁してくれと言いたいのが如実に伝わってくる。
——まあそれを聞く理由は、こちらにはないけれど。
「最後の呪詛は、深感の呪詛。発動条件はこのフォークを抜いて、延命の呪詛を解除する事」
とっておきの一手にして、ヒュンケルへの復讐を飾る最後の贈り物。その、効果は。
「——対象の思考を引き延ばし、感覚を鋭くする呪詛。つまりは、一秒が何倍にも長くなり、痛み等を何十倍に感じる。流石に時間の操作なんて出来ないから、あくまで本人だけがそう感じられる、ってだけだけど」
「......あ、ああ、待って、待ってくれ、まってくれぇっ!?」
最後の呪詛の効果を理解した——してしまったヒュンケルは、途端に先程とは真逆の事を叫び出す。それに対しワタシはわざとらしく溜息をつく——ついつい浮かべそうになる嘲笑を必死に抑え込みながら。
「あら、さっきまで殺してくれって言ってたじゃないの?」
「そうだが、そうだけれどっ!?何倍にも長く感じるって!?しかも、あの体が崩れる感覚を、
更には痛みまでもが襲ってくるんだろうっ!?そんなの、耐えられるわけがっ!?」
「——大丈夫よ」
未だに見苦しく喚き散らすヒュンケルへ、優しく微笑みながらそっと告げる。
「......え?」
「耐えられようが、そうじゃなかろうが、貴方が塵芥になるのは、もう決まったことなんだから」
——もう、何も言っても変わりはしないのだと。
「......た、助けてくれぇっ!?俺が、俺が悪かったからっ!?毒を盛るように指示したことも、お前をいびり続けたことも謝るっ!だからっ、だからっ、どうか慈悲を、慈悲をぉ!?助けて、助けてくれぇっ!?ゆ、許してくれぇぇぇぇぇっ!?」
もはや恥も外聞もなく、無心に懇願し始めるヒュンケル。あまりに必死なせいか、今の叫びで肩や耳が崩れたことにも気付いていない。体を失いながらも、それでも生へ執着するヒュンケルの姿は、今まで見た彼の中でも一番真剣に見えた。
——まあ、止めるつもりは全く無いんだけどね。
「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダッ、助けてっ、助けてくれぇっ、父上、母上、イヴ、誰でもいい、助けてくれぇぇぇぇぇ!?!?ヤダヤダヤダヤダ助けて助けて許して許して許してユスリテユルシテユルシテユルシテユルシテすまないアリスごめんなさいごめんなさいごめんなさいゴメンナサイゴメンナサイアリスどうか許してタスケテユルシテゴメンイヤダイヤダヤダゴメンナサイスマナイユルシテタスケテ......」
自らの結末に絶望したのか、もう心が壊れたかのように言葉を羅列してしていくだけになりつつあるヒュンケル。その胸に刺さったフォークをそっと掴みなおす。
そして彼へと微笑みを——ありったけの憎悪と嘲笑を込めた笑みを向け。
「——さよなら、お兄様。とても長い、刹那の時を楽しんでくださいな?」
——別れを告げ、胸元のフォークを一気に引き抜いた。
「——■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!?!?!?」
フォークを抜き、血が一気に噴き出すと共に延命の呪詛が解ける。途端に激痛が襲ったのだろう。ヒュンケルが激しく体を震わせ、声にならない叫びをあげる。そして、一気に体が塵へと変化していく。
その場に轟いた咆哮はすぐに止み、辺りが静まり返る。
——後に残ったのは、血だまりに浮かぶ服と、そこに漂う塵芥のみ。それが、ヒュンケル・クラウ・ガンダルヴの成れの果て。
——これで二人目。残っているのは、後四人。




