プロローグ 悪夢の誕生 side ALICE
——『疫病神』。
小さい頃から、私はそう呼ばれていた。
体の弱かった母は、幼い頃に私の眼前で倒れた。すぐに病院に運ばれたが、治療の甲斐なく帰らぬ人となった。
その数年後、父と祖父の三人で出かけている最中に交通事故に巻き込まれた。二人が命がけで護ってくれたおかげで私は軽傷で済んだが、父と祖父は助からずその命を落とした。
親類は私のせいではないかと噂し始めた。私は周囲に不幸を振りまき、死に追いやる『疫病神』『死神』なのだと言い、嫌悪するようになっていった。
そしてそういった話はすぐに伝わるもので、あっという間に私は『疫病神』だという噂は近所に広まった。私が暮らしていた町は未だにその類いの迷信めいたものを信じる傾向にあり、外を歩けば陰口を叩かれ後ろ指を指されたものだ。
特に酷かったのは学校だろう。子供は親を始めとする大人に影響されやすく、そして大人と違い容赦がない。噂が広まった時点で私は学校で孤立し、嫌がらせを受けるようになった。
噂が広まるに連れ、私は徐々に荒んでいった。数年の間に起きた身内の不幸は私の心を蝕んでいたし、その上私の傷を抉るような周囲の仕打ちはとても耐えられるようなものでは無かった。それを振り払いたくて周りに噛みつき、反撃し、より一層孤立する。そんな悪循環に囚われていた。
そこから抜け出せたのは祖母のお陰だろう。荒む私を見捨てず、常に寄り添い、唯一人味方でいてくれた大好きな人。——たった一人の家族。
『周りに当たったり、恨んだりしちゃいけない。そんなことをしていたら、有栖を悪く言う人たちと同じになってしまう。そんな姿は、私も爺さんも、それにあの子達も見たくないよ』
悲し気な表情を浮かべながらそう言う祖母の姿に、私は少しずつ内から溢れ出る負の感情を抑えるようになっていった。そうする内に心も段々と平穏を取り戻し、色々な事に折り合いをつけることが出来るようになっていった。
——胸の内に燻り続ける、どす黒い感情から眼を反らしながら。
徐々に落ち着いていった私だが、噂と言うのは中々消えたりしないもので、私が疫病神だという噂は消えることは無かった。とはいえそういったものも少しは下火になるもので、私への態度は陰口と言うよりも無視という方向性へと変わっていった。
なお、子供は除く。彼らはおとなしくなった私にも手を緩めることなく、むしろ反撃されないのをいいことにより一層過熱していった。そんなこともあって、その当時は友達どころかまともに話せる同年代は一人もいなかった。
......いや一人だけ、何時だったも忘れてしまったけど、周りの大人たちに流されずに仲良くしてくれた女の子がいた。——名前も覚えてない彼女は、はたして一体誰だったのか。
ともかく、そんな環境でも耐えられたのは、祖母の存在とあの日の言葉があったから。
だけどその祖母も私が六年生の時に天寿を全うした。その前から体調を崩しがちだったが、最後は穏やかな表情を浮かべて眠るように息を引き取った。
周りの者達も流石に寿命で亡くなったのを私のせいにすることは無かった。......表向きには、だが。
その後私を引き取ったのは父の姉に当たる叔母夫婦。外聞が悪いから引き取ってくれたのだろうが、貧乏くじを引かされただの、祖母が亡くなったのもお前のせいだだのと散々言われたものだ。
そんな風に変化していた生活の中で、私は自身の限界を——自らを抑えられなくなるのを感じていた。唯一の味方だった祖母がいなくなったことは、確実に私の心に影響を与えていた。それに身を任せたい気持ちがありながら、それでも亡くなった祖母の願いを無碍にはしたくなかった。
だから、その箍が外れる前に逃げることにした。中学に上がるのをきっかけに、叔母夫婦の家でなく別の部屋を借りて一人暮らしをするようになった。一緒に住むのさえ気分が悪いと、叔母たちの私への嫌悪ぶりは相当なものだったから幸いとばかりに追い出された。
学校は地元から随分と離れた場所を選んだ。その後の進学に関しても、叔母夫婦に文句を言われないように出来るだけ学費の安い場所にした。
幸い虐待扱いされたくは無かったからか、十分な生活費や高校に上がってからの学費などは、必要なだけは払ってくれていた。
......その裏で、祖母から聞いていた両親の遺産、それに祖父母の遺品等に関しては根こそぎ持っていかれてしまったが。手元に残ったのは、最期に祖母が遺してくれた、いつも身に着けていたお守りだけ。
それでも、生活に苦労しない程度にはお金を出してくれただけでも、マシだったのかもしれない。普段の扱いがアレだったから、感謝の念は無いけどね。
地元を離れたことで、私の生活は一変した。外を歩くだけで後ろ指を指される事も、罵詈雑言を浴びせられることも無い。暴力を振るわれることも、いない者として扱われることだって。
祖母と二人で暮らしていた時から家事全般は一通り出来るし、叔母達の元に居た時も自分のことは自分でやっていたから、一人暮らしも苦じゃなかった。高校に上がってからはバイトも始めたから、生活費等以外に使えるお金も少しは出来た。まあ、卒業後の為に大半は貯金に回したけど。
何より、私にも友人が出来た。たわいもない話を、些細なことで笑ったりできる、身近な人が。私の過去を知らない、ただそれだけの差で、私の周囲に満ちていた悪意は跡形も無く消え去った。
ただ、入学当初、私はそれを受け入れることが出来なかった。幼い頃から受け続けた悪意の嵐が、私を人間不信にさせていた。私の過去を知る人はいないはず、それでも周りの誰もかもが自分に冷たい視線を向けている、そう錯覚してしまうほどに。
地元を離れてなお、私は過去の呪縛から簡単に逃れることは出来なかった。
そんな私に、声を掛けてくれる子がいた。その子は明るくて、前向きな性格で、クラスの中でも中心にいるような人だった。もちろん、私は彼女に近づきすらしなかった。彼女のような中心人物は、自らの手を汚すことなく、周りを扇動して悪意を束ねることをよく知っていたから。
だから、彼女と関わりは決して持つまい。そう決意していたのに、彼女はそんなことお構いなしと言わんばかりに私に話しかけてきた。席が近いわけでも、何かの委員会で一緒だったわけでも無いのに、何を気に入ったのか。しつこいほどに何度も何度も、私に話しかけてきた。
逃げる私と追う彼女。その結果は、私が根負けするという形で終わりを告げた。彼女のしつこさは想像以上で、何より彼女の行動には悪意が無かったから。根を上げた私に、彼女は満面の笑みを浮かべた。向日葵のような、汚れない爛漫な笑みを。
どうして彼女があんなにしつこかったのか、それは今でも分からない。けれどそれを切っ掛けに、私達は友達になった。そしていつしか、親友と呼んでいい程の仲になっていた。よく一緒に勉強したり、遊びに行ったり、恋バナをしたり、昔では考えもしない青春を過ごした。
些細なことで喧嘩をすることも時折あった。仲が良くなって気付いたことだけれど、彼女は結構頑固というか、意志が強い。いや、私の時のしつこさから分かっていた事ではあるか。自分の考えは全然曲げないから、それが原因で言い争いが白熱することもしばしば。
けど、しばらくすればどちらからともなく歩み寄って、和解して、以前よりも仲良くなる。どうしてか喧嘩別れすることなく、私達の関係は続いていた。
ちなみに、彼女は恋バナでも頑固、というか一途だ。人気者の彼女は告白される事も度々あったのだけれど、彼女は一切靡く素振りを見せなかった。どうやら、一つ年上の幼馴染が好きらしく、彼以外の男子は彼女の眼中に無かったから。彼女はかなり恋バナ好きで、その男の良さを長々と語ったり、どうしたらもっと仲良くなれるのかと相談してくることはしょっちゅうだった。
......それはまだいいとしても、私の恋バナをあれこれ引き出そうとしてくることには流石に勘弁してほしかった。周囲が敵で溢れていた私にとって、恋愛はあまりに未知の領域すぎる。
そんな彼女を始めとし、かつてとは一変した環境で、私は徐々に自分が変わっていくのを感じていた。周囲に対して作っていた壁が、少しづつ崩れていく。今まで強張っていた表情筋が、笑みを浮かべられるようになる。心に余裕が生まれれば、悪意に満ちていると思っていた周囲が、そうでは無い事を受け入れられる。
——内に燻る炎が、段々と弱まっていくことにも。
それを実感する出来事があった。
中学の頃、遠出をした時に私と同じようにいじめに遭っていた小学生の女の子と会った。いじめっ子達が去っていく中、たった一人苦しそうに佇む彼女に、思わず小学校までの自分を重ねてしまった。
だから放っておけずに声を掛けた。祖母が、親友がそうだったように、自分も誰かの力になりたいと思った。
その時、その子にお守りを渡した。手元に残った数少ない、祖母の形見。白い、蛇の鱗のような紋様の彫られた指輪。白い蛇は幸運の証だと、そう言って祖母が大切にしていた指輪をその子の手に握らせた。惜しいとは思わなかった。今それが必要なのは、彼女の方だと思ったから。
——生きていれば良いことがある、だから自分の人生を諦めないで。
中学に上がって、環境が変わり、ようやく平穏を手に入れた。そんな私だからこそ、伝えられる言葉があると、そう信じて。
高校に上がってからも、穏やかな日々は続いた。同郷の者とはほとんど会う事も無く、悪意に晒される事も無い。数年の間で、地獄のような日々の記憶は少しづつ薄れていた。それだけ新たな生活はかけがえのない物で、私にとって何より失いたくないものだった。
この日々はこれから先も続いていく、そう信じていた。
——あの日、異世界に召喚されるまでは。
ある日、私は級友や同じ学校の生徒達と共に異世界に召喚された。召喚された目的は人類を追い詰めている厄災を討伐して、世界を救う事。小説やアニメで見るような、どこか聞いたことのある話。
皆突如異世界に来たことへの不安もあったけれども、それでもどこか期待もしていた。私達は所詮高校生、こういうシチュエーションに胸を躍らせてしまうのは仕方ない事だろう。
私もそうだった。......だった、だけれどね。
異世界に召喚されるに当たって、私達は様々な力に目覚めていた。固有スキル、と呼ばれるそれは通常のスキルとはまるで性能が違い、人によっては英雄の再来——勇者などと言われたりもしていた。
その中で、私の固有スキルの能力は簡単に言うと呪術と死霊術。召喚された国だけでなく、人類国家において禁忌と称される術だった。
——私は、再び地獄へと叩き落された。
私の扱いは一気に変わった。王国の人間からは犯罪者のような扱いを受けることとなった。最初はそれに戸惑っていた召喚者達だったけど、次第にそれに追随するようになった。今にして思えば、皆が無意識の内に抱いていた不安のはけ口のようなものにされたのだろう。後は、自分はああはなりたくないという拒否感もあってのものなのかもしれない。......だからといって、それをされる側からすれば堪ったものでは無いけど。
私の事は基本的に無視。偶に話しかけてきたかと思えば、罵詈雑言を浴びせ、嘲笑うだけ。食事は私だけ残飯のようなものを与えられ、更には汚水や虫を混ぜられる時もあった。他の皆が使える風呂や治療院などの設備は使わせてはもらえない。訓練では騎士たちにボロボロになるまで長時間甚振られ続け、装備は劣悪品以下のゴミ。更には様々な技を試す実験台として扱われ、満足に休むことさえ出来ない。
あれに耐えられたのは奇跡だと自分でも思う。正直、昔の扱いより堪えるものがあった。一度平穏な時間を知ってしまったから。その時間を共有していた者達が手のひらを返したように私を甚振ってきたから。行いそのものよりも、その事実が何よりも辛かった。
それでも、変わらずに接してくれた何人かはいた。特に、親友は私の元を離れることは無かった。自分の扱いさえ悪くなるかも知れないのに、そんなことを気にする素振りすら見せず、私の隣にいてくれた。庇って貰う事に罪悪感を感じながらも、彼女の優しさが何よりも嬉しかった。相談にもよく乗ってもらい、私の心の支えになってくれていた。
他にも後輩に一人、変わらずに接してくれる子がいた。彼女とは特別接点があった訳ではない。ただ、彼女はそういう行為そのものを嫌っているようで、私への態度を変えることは無かった。偶にすれ違ったら挨拶して、軽く言葉を交わすだけ。一度、「気を付けて」と忠告を貰いはしたけど、接点なんてそれくらいの些細なものだ。それでも、その変わらない態度が私にはうれしかった。
他にも私への扱いがおかしいと思っている人もいたのかも。だけど、下手に私を庇えば今度は彼らが標的にされかねない。だから私には手を出さないけど、助けることもしない。ただ、極力関わらないようにする。
......それだけでも、私からしてみれば手を出されないだけ大分マシだけど。
そんな人がいてくれたからこそ、私は何とか耐えることが出来た。......まあ、他にどうしようも無かったからでもあるけど。
異世界では逃げる場所も、頼れる縁も無い。それに禁忌とも呼ばれる能力を持つ私が逃げれば、国はこれ見よがしに追っ手を差し向け、殺しにくる免罪符にするだろう。だから、生きるためにはこの仕打ちに耐えるしかないと、そう考えていた。
......今にしてみれば、私は逃げるべきだった。たとえこの世界の事を知らないとしても。変わらず接してくれる人との縁を断つことになったとしても。彼女のたった一度の忠告の意味を、よく考えるべきだったんだ。そうすれば、あんな最低の結末にはならなかったんだろうから。
召喚されてから数か月後。実戦経験を積む為に、近隣に現れた魔物の群れの討伐を私達で行う事となった。数人とは騎士たちのサポートもあり、大したこともなく作戦は終わる——はずだった。
結果は、散々なものだった。初の実戦でパニックを起こす者が続出。バラバラに戦うしか無くなり連携は総崩れ、騎士たちは混乱する人達の護衛を優先したため、討伐に時間が掛かった。最終的に討伐は完了したものの、怪我人が続出し、とても成功とはいえなかった。
——そして何故か、その責任が全て私へと、擦り付けられた。私が呪術で混乱を起こし、今回の結果を招いたんだと。そしてそれを言い出したのは、——味方でいてくれると信じていた親友だった。更には身に覚えのない私の悪事が次々と露見。私を庇う人など誰もいなく、私の処刑が決定した。
あの時に見た親友だった女の目を、私は今でも忘れない。私の悪事を秘密にするように脅されていて、怖くて誰にもいう事が出来なかったと、そう言いながら泣きじゃくり、勇者と呼ばれている男に——幼馴染の先輩に縋りつく親友。
その、一心不乱に男に向けられていた目が、一瞬私を捉えた。そこに、悪意は無かった。ただ、その眼は私の方を見ていながら、私を視ていなかった。
まるで、路傍の石を見るように。何も無いところに、ふと目を向けたかのように。
——その目は、私を捉えていなかった。
......彼女の真意がどういうものだったのかは、分からない。ただ少なくとも、私は彼女に出汁にされたのだろう。幼馴染との仲を深める為の、ただの道具として。
昔ならきっと耐えられただろう。だけど、高校に入って充実した生活を送っていた私は平穏を——それがどれだけ愛おしいものなのかを知ってしまった。知っていたから、それに繋がっている細い糸を自ら切ることが出来なかった。たとえ、数カ月間散々な仕打ちを受けていたとしても。
だが、その果てに待っていたのは親友だと思っていた人の裏切り。それは、私に止めを刺すのには十分すぎるものだった。
私はここで、自分の生を諦めてしまった。その意味を、見いだせなくなっていた。
だから、処刑日の三日前、私に普通に接してくれていたもう一人、後輩の子が牢屋の前に現れた時も、一緒に逃げましょう、と言う彼女の手を取ることは出来なかった。彼女の事を信じられなかったのもそうだし、もう生きる気力が湧いてこなかった。逃げるなら一人で逃げなさい、そう伝えると彼女は寂し気な表情を浮かべて、また来ますとだけ言って去っていった。
結局その後、彼女は牢屋には来なかった。ただ、処刑当日の朝、牢屋の鉄格子の隙間に妙なものが落ちていることに気が付いた。気になってそれを拾い上げ、私は絶句した。それは、白の蛇皮模様の指輪。
——ここにあるはずの無い、祖母の形見。
そこでようやく、私は彼女があの時の子だと気が付いた。彼女はその時の事を覚えていたんだろう。だから、私を気にかけてくれていた。助けようとしてくれた。
それなのに私は彼女に気付かず、信じてあげることも出来なかった。指輪をそっと身に着け、自分の事をバカだなと嗤う。それでも、自分の人生で、たった一つでも残せたものがあったことがなんだか嬉しかった。散々な人生だったけど、無意味では無かったのだと、そう思えた。
————連行された先、処刑場の中央に柱の前に置かれた机の上にあった、彼女の首を見るまでは。
それを見た瞬間、頭が真っ白になった。私を逃がそうとして見つかり殺された、当然の報いだ、そういいながら彼女を嘲笑う声も耳を素通りしていった。現状に対する理解が追い付かなかった。なぜ、彼女が死んでいるのか、何でこうなったのか、柱に縛り付けられ、私の罪が読み上げられている間、そんな考えばかりが頭をよぎった。
——ああ、そうなんだ。結局、私は選択を間違えた。もっと早くに逃げていればよかった、彼女のたった一度の忠告の意味を考えるべきだった、あの時彼女の手を取るべきだった。そうするべきだったんだ。そうすれば、彼女は死ぬことは無かったのに。
罪の読み上げが終わり、勇者が私の前に出てきた。手には剣を持ち、その剣先を私に向けてくる。せめて、その女と同じ剣で殺してやる、そう言いながら彼の持つ剣が私の心臓を貫いた。
——死にゆく間、私の胸に宿ったのは、激しい憎悪だった。
なぜ、こんな目に遭わなければいけない。
なぜ、彼女が殺されなければいけない。
私が何をした、彼女が何をした。
家族を失い、その上それが自らの性だと罵られ、迫害され続けた。
やっと得た平穏は、身に覚えのない罪を背負わされたことで泡と消え、果てには親友に裏切られた。
ただ私を助けようとしてくれた心優しき女の子は、その行いが罪なのだと言われ、殺された。
——ああ、理不尽だ。不条理だ。
こんなことが、許されてたまるものか、正当化されてなるものか。
——音が、した。
あの日から、内に燻っていた炎が。祖母の教えを護り、秘めていたソレが。穏やかな日々のお陰で弱まりつつも、種火のまま燻っていたものが。堕とされた地獄で、再び薪を得た感情が。
————ドス黒い焔が、枷を食い破り、轟々と燃え盛る音が。
絶対に、許さない。許さない。許さない、許さない、許さない、許さない、許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ許サナイ殺シテヤル殺シテヤル殺シテヤル殺シテヤル殺シテヤル殺シテヤル殺シテヤル殺シテヤル殺シテヤル殺シテヤル殺シテヤル殺シテヤル殺シテヤル殺シテヤル殺シテヤル殺シテヤル殺シテヤル殺シテヤル殺シテヤル殺シテヤル殺シテヤル殺シテヤル殺シテヤル殺シテヤル殺シテヤル殺シテヤル殺シテヤル殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺——
『————絶対ニ、殺シテヤル』
湧き上がる憎悪と殺意の全てを込め、目の前の男へ宣言し、私——橘有栖は命を落とした。