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Nightmare Alice  作者: 雀原夕稀
一章 夜会は血と怨嗟に塗れる
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地下にて人形は微笑む

 一頻り嗤い叫んだことで、ようやく落ち着くことが出来た。...我ながら、流石にアレだったわ、うん。でも仕方ないと思う。狙っていたとはいえ、絶対に上手くいくという確証は無かったし。

 とりあえず、色々と確認しないと。

 

 両手を顔の近くまで持ちあげて、グッパッと開け閉めを繰り返し、腕に触れる。

 触感はある。それも人だった頃と違いを感じないくらい。ただし、あるのは触感まで。痛覚に関しては恐らく無くなっている。

 意外だったのが、肌の見た目。触った時の硬質感や冷たさから、それが人形だというのは一瞬で分かる。なのに、見た目はまるで人肌のような柔らかみを持っているように見える。指の関節部もなどもむき出しでなくなっていて、本当に人の様。染み込ませた血によって赤みを含んでいたはずの色も白色に変化している。しかも元の人形の持つ木のような真っ白さとも違う、浮世離れしているとはいえ人の範疇に入る肌の白さと言っていい。


 こんなに人に近くなるなんて、正直予想外。もっとこう、動く呪いの人形的な見た目になると思っていたから。手だけ見てもこれなら、顔とかどうなっているんだろう。近くにある姿見の前に移動し、確かめよう。

 おっと、歩くのが久々すぎて一瞬足がもつれた。最近はずっと浮いて移動していたし、どうも体を動かす感覚が鈍っている気がする。これは、リハビリが必要かな、なんて考えながら姿見の前に立ち、絶句した。


「————何、コレ」


 宝物庫に置かれているだけあって、装飾の凝った無駄に豪華な姿見の中心に、ソレは映っていた。

 一角獣の鬣で出来ていた髪は、背中位までだったのが腰まで伸び、毛量も増えている。髪は銀に輝き、漬けた血の影響か光の当たり具合で赤黒い光沢を放っている。

 宝石を埋めていただけの両目は完全に人の目に。少し鋭い目つき。瞳は蒼く、白目部分は黒くなっている。

 肌色はさっき言った通り、人のそれにしか見えない。病弱な人の色白さ、と表現するのが正しいと思う。

 服と靴も変化している。これらに関しては魔力と流し、血を染み込ませただけなのに、意匠が少し豪華に。色合いは髪とは違い、光を呑むような黒一色。ただ、時折赤黒い靄が出て、宙に消えていく。


 ——でも、何よりも驚いたのはその顔。あくまで人形だったそれの造形は目の形も相まって、人のそれ。......しかも、この顔は。


「...お母、様」


 写真でしか知らないけど、公爵家に嫁いだわたしの母、アリアに瓜二つの顔。いや、わたしが母に似たというのが正しいのだけど。もし呪いを持って生まれず、健康に育っていたなら、きっとこうなっていたのかもしれない。

 ......そう思うと、胸が少し疼いた。




 ...さっきよりも落ち着くのに時間が掛かってしまった。流石にこんなに造形が変わっているなんて、しかもよりにもよってな見た目をしていたから大分動揺してしまった。まあ、なってしまったものは仕方がない。むしろ、この顔の方が公爵家への復讐には向いている気がする。この顔を見たら動揺を誘えるのは間違いないだろうし、うん、ラッキーだと思おう。

 

 さてと、次は性能確認といきましょう。()()っと。




 名:アリス 種族:カースドール 年齢:0

 スキル:魔法(闇、呪詛、死霊、空間)、魔力精密制御、魔力精密感知、魔力回復、並列思考、高速思考、体術、分離、獣化、再生、浮遊、鑑定、凍の魔眼

 固有スキル:呪歌詠唱、死霊の愛し子

 適性:闇、呪詛、死霊、空間




 よかった、上手くいった。鑑定の能力を獲得するために、例のネックレスに使われていた鑑定石を右目に埋め込んだのだ。情報を得るのにこれほど便利な能力も無いものね。


 こうやって確認すると、進化しただけあって変化が著しい。種族のカースドールは、まあそのまんまの名前だろう。以前との違いはやっぱり体があること。他にも魔力量も大分増えているのが分かる。


 スキルも結構変わっている。魔法スキルに関しては進化前から使えていたし、ステータスにも表示されたから良いとする。

 ——魔力回復。これは魔力の回復速度が上がったことを表すスキル。魔力制御系統スキルを鍛えていくことで身につく能力なのだけど、進化した関係で思っていたより早く手に入った。

 ——分離。体の部位を切り離して操作できるようになった。人形の関節部を、取り外しが容易にできるように加工したことで獲得したスキル。切り離した部位の操作に関しては、これから練習が必要になるけど、使いこなせれば強力な手札になる。

 

 ——獣化。肉体を獣のそれに変化させるスキルで使用中は筋力等も上昇する。ワタシの今までのスキル構成はもろ後衛特化型。その欠点を無くすために身体機能を上げる目的で獣型の魔物の素材を複数合わせて人形に組み込んだ。漬けた血液もその一つだったりする。筋力や強度を上げられれば良かったのだけど、スキルまで得られたのは幸運だった。

 再生も同じく獣の素材によって得られた能力で、魔力を使用して躰を修復することが出来る。傷が深くなるほど魔力を必要とするけど、自身を再生できるスキルは本当にうれしい。こっちに関してはスキル獲得を狙っていた。...人形改造で苦労したから、再生ができる能力は本当に欲しかったし。


 ——凍の魔眼。これは左目に埋め込んだ凍土結晶という鉱石の一種によって得たスキル。この鉱石は凍土でのみ採れるもので、常に冷気を放っている。これを目に加工して埋め込んだ結果獲得した能力になる。視線を向けた対象を凍結させるスキルで、まだ効果は弱いけれどこれから先成長が期待できるスキル。鑑定石と色を合わせたくて選んだけど、中々いい選択だったと思う。


 スキルは以上だけど、体の頑丈さや力など性能は十分良いものになった。進化の結果は大成功と言って間違いないだろう。


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