もう最強、最強って五月蝿いんだよ! なんでもなぁ、最強にすりゃあ良いってもんじゃ無いんだよ!! 最強になったらどうなるか、証明してやる!! よく見ておけ!!
いせかーい、異世界の事でした。
あるところに、周りの皆から『No.1より世界二位』と馬鹿にされる騎士がおりました。
その騎士は、魔王討伐に向かう最強勇者の前に邪魔するように現れては、何時も勝負を挑みました。
しかし最強勇者の圧倒的な力の前に、世界二位の騎士は歯が立ちませんでした。
最強勇者は、世界二位の騎士の命を奪う事なく目の前を去りますが、世間から『世界二位』と馬鹿にされている騎士とって、それは屈辱以外の何物でもありませんでした。
それでも世界二位の騎士は、最強勇者に勝ちたい一心で来る日も来る日も修行に励み、何度も何度も最強勇者に勝負を挑みました。
ですが、最強勇者はその度に世界二位の騎士を返り討ちにします。
そんなある日でした。長い道のりを経て、遂に魔王城の側にある森まで来る事ができた最強勇者。周囲を警戒しながら少しずつ魔王城の門に近付きます。
……するとそこには、魔王城の門番を倒した世界二位の騎士が立っていました。
世界二位の騎士は、最強勇者に剣先を向けると最後の勝負を挑みます。
最強勇者は潔く勝負を受け入れると、世界二位の騎士は素早く前に踏み出し、最強勇者に斬りかかって来ました。
しかし、最強勇者は目の前に剣を差し出し、世界二位の騎士の剣を力強く受け止めます。
魔王城の前で始まった、最強勇者と世界二位の騎士の闘い。それは今までと違って、凄まじいものになりました。
激しい剣劇が繰り広げられたかと思うと、業火とも見紛う炎の魔法が辺り一面を覆い、かと思えば天から豪雨を降らせます。
何時終わるとも知れないふたりの闘いが決着したのは、三日後の事でした。
勝利したのは……世界二位の騎士でした。
遂に敗れた最強勇者。地面に片膝をつきながら素直に敗北を認めると、世界二位の騎士に手を差し出し、魔王討伐を託した……その時でした。
突如、世界二位の騎士は地べたに両膝をつき、目の前に兜を放り投げたかと思うと、思い詰めたかの様に頭を抱え出し、天を仰ぎながらこう叫びました。
「せっかい最強になっちまったぜ!? 一体、俺はどうすれば良いんだ!?」
「えええええぇぇぇぇぇーーーーー!!??」
……おしまい。