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転生王女 ~神様、転生したら王女って……どういうことですか!~  作者: シマユカ
第一章「転生王女は神の御子」
30/33

30. パーティーの前に

 


 ――それは早朝会議の間での出来事だった――。



「……といった流れで宜しいでしょうか、陛下。」


「あぁ。」


 室内の中心には大きな円卓のテーブル。そこには国の重鎮や貴族が貫禄ある佇まいで着席していた。


 そしてその上座には、いつもながら威厳溢れるオーラを放つオリエント国王が着席している。


 現在の議題は今日の夜に開かれる、王国の第三王子・ルクスの生誕祭……その警備体制の最終確認について、騎士団長と警備隊長が資料を手に説明をしているところだった。


 会議は普段昼間に行っているが、夜には大きな催しが開かれる為に早めに会議を行い、最終確認をすることになったのだ。



「――では今宵の警備は以上のように進めます。この件については以上です。」



 国王の許可をもらい、警備についての議題は終了する。



「やはり生誕祭といえど王城での人の出入りが多くなる分、警備も強化しませんとな。これならば不遜な輩の侵入も防げるでしょう。」


「備えておくに越したことはないですな。」


「しかし……やはり心配ではありますね。また王女を狙う輩が現れないか……。」


 口々に大臣たちが口を開いている。一人はまだ心配事が拭えきれていない様子だ。



「はははっ、貴殿は相変わらず心配性ですなぁ。これだけ万全を期していれば問題は起こり得ませんよ~。姫様を拐った賊も、今は牢の中なんですから。」


 位のある一人の大臣が陽気に笑った。


「ですが、左大臣。もしもの場合も……」


「それに備えて、我らが騎士団長殿が任務を一時切り上げて直々に警備指揮を努めてくださるではないですか。――ですね? エンフィールド公。」



 左大臣の呼び掛けに一人が口を開いた。



「――えぇ、お任せください。部下の失態は私が責任をもって挽回させて頂きますよ。」



 一見、国王陛下に負けず劣らずの貫禄ある容姿……に似合わず、優しい瞳をして落ち着いた口調で微笑んだその男は、王国騎士団の頂点……この国最強と謳われる強さを誇る騎士団長、ジル・エンフィールド公爵だった。


「姫様の誘拐の件も、公爵が遠方の任へ出ていなければ防げた事だったでしょう。頼りにしていますぞ。」


 リディアが盗賊に拐われた日……公爵は丁度宮を後にしていたところだった為に防げなかった自体だったと、大半の者はそう見解していた。公爵さえ傍にいれば、必ず賊に気付いた事だろう……と。それほどまでに公爵の評価は高く、その力を信頼されていた。





「――それでは、朝の議題はこれにて終了致します。皆様、本日は早朝からお疲れさまでございました。」



 進行を執り行っていた者が締めの挨拶を述べ、貴族たちはそれぞれ席を立ち、張り積めていた糸がほどけるように口々にささやかな雑談を始めた。



「――これでパーティーは無事に開けそうですな。」


「ルクス殿下は今日で15の年を迎えましたか。時が経つのは早いですね。」


「やや消極的な一面が不安視されていましたが……最近は日毎に逞しくなられていくご様子で。将来にも期待できますな。」



 一部の者たちはルクスの評価を話し始めた。



「優秀な兄君の影に隠れ勝ちですが、ルクス様も中々才能に恵まれておられるかと。」


「リディア様も大変素晴らしいお方ですし……、いやはや流石は陛下の血を継がれておられる。」


「――……殿下(・・)といえば……その出生時期のことから一時期、血筋を疑われておいででしたが……才能を示されてからはかような不届きな噂は今では無くなりましたね。」


「あぁ、あの時は一部の者が不要に煽ったことが要因でしたな。私はそのような事など信じておりませんが。あの方々は紛れもなく、陛下のお子ですから。」


「容姿は前王妃様そっくりですしね。」





 ――そんな会話が隅でされる一方、国王は早々に席を立ち、会議室を後にしようとしていた。


「……少々長引くかと思っておりましたが、この分ならば朝食の席にギリギリ間に合いそうですね。」


「そうだな。」


 マエルの言葉に、国王は静かに答えた。


「昨日の今日で、リディア王女にまた手厳しい発言はしないでくださいね?」


「……分かっている。」







 ――そして、扉の外では一人の兵士が門番に入室許可を求めていた……。



「……急ぎの案件なのですが……。」


「分かった、少し待て。」


 門番はノックをしてから扉を開ける。


「会議中のところ、失礼致します。……騎士団長様。兵士よりご報告があるそうなのですが……。」


「……陛下。よろしいでしょうか。」


「会議はもう終わった。構わん。」



 国王の許可を取ると衛兵が入室し、恐る恐る公爵の元へ駆け寄り青ざめた様子でそっと耳打ちをした。



「……が……でして……」


「……!……何だとっ?」



 衛兵の報告に公爵が驚きを隠せずにいると、様子を疑問に感じた国王が尋ねた。



「公爵、どうした。」


「……っ……陛下、不足の事態が起きました。」



 公爵のただならぬ面持ちを感じ取った周囲も視線を彼へ向けていた。





「……先程、見廻りの者が発見しました。……例の盗賊一派ですが……何者かによって惨殺されたようです。」





「!? な、なんですってっ!? 」



 貴族たちが一斉にどよめき、声を荒げた。中には思わず席を立った者もいる。



「………………朝食は後回しになりそうだな。」



 報告に僅かに目を見開きながらも、すぐに落ち着きを戻した国王は静かに呟くと……公爵に説明を求めた。



「詳しく話せ。」







 *






 そして時は戻り、今は午後十六時。



「――さぁ王女殿下。白と青、どちらのお色になさいますか? どちらも大変自信作にございます! 」





「………………えと、お任せで。」





「かしこまりましたわぁ! どうぞ、この私に全てお任せくださいませっ!」



 私の目の前でウキウキと上機嫌に自作のドレスを大量に見せているこの人は、今日の着付け師のデザイナーさんだ。パーティーの準備の為に着付け師の人が来るのはいつものことなのだけれど……、やはり私は相変わらずこの時間が苦手である。



「王女殿下の美しい御髪が映えそうなのは……やはり青でしょうか? うん、こちらに致しましょう! 」


 どうやら今回は青いドレスを着せられ……もとい、着付けてくれるそうだ。うん。


「失礼致します、姫様。」


 ドレスも決まり、侍女たちが着付け作業の手伝いに入った。この場合、私はTの字で身を任せているだけで構わんのだそう。



 ……私の知る西洋な貴族世界だと、コルセットをぎっちり締めてびらびらの重ーいドレスを纏う。というのが女性の着るドレスだと認識をしていたのだけど……この世界はそんなこともないらしい。


 ラインを綺麗に見せるためにコルセットを着ける人はいるみたいだけど……いない人もいるらしく、好みに分かれるそう。

 ドレスはびらびらのやつもあれば、スレンダーに見せるシンプルな軽いのもあるらしい。……下着も、私が知るようなやつだった。成る程、これがご都合というやつか。


 ……まぁでも、身分があるからなのだろうが……やはり何から何まで世話をしてもらうこの状態は何年経ってもできれば避けたい。流石に羞恥がね……。



 そんな私の細やかな気恥ずかしさなど露知らず、侍女たちは丁寧かつ素早く作業を進めている。



「姫殿下は相変わらず綺麗な肌ですわ。色白できめ細かくて……はぁ、羨ましいですわぁ。」


「御髪もさらさらで、毎回手入れをするのが私の楽しみです。」



 ……やめて……! 恥ずかしい……っ!!



 下着同然の姿でTの字を強いられてまじまじと視られている私の羞恥の身にもなってっ……!



「姫様。本日のパーティーはどのように過ごされますか? やはり、いつものように早めに切り上げますか? 」


「そうね。ルクスと入場して……出席されている方々に軽く挨拶だけ済ませて……あの子にプレゼントを渡したら戻ろうかしら。」


 あまり長いことのんびり過ごしていたら、無駄に交流を深めようとする人たちに捕まってしまうし、そのまま逃げられなくなってしまう恐れがある。



 ……うん、そうなる前に帰ろうっと。……それに今日はもう一仕事あるからね。



「今の時期ですと、デビュタントのお誘いを多く申し出られているのではないですか? またどなたのお誘いも受けておられないみたいですし、姫様と踊りたい殿方は沢山いらっしゃいますのに……。」



 コネ狙いが多いのだよ。



「そういえば殿下は、ダンスも特技のお一つとされていらっしゃいますね!」


「……え、と……私は何というか……二人で踊るよりも、一人で自由に踊る方が好きかな……。」


「? 社交ダンスはお二人で踊るものでは……?」


「あ、いえ……全体的な意味で、かな……。」


「あぁ、姫様は舞もお得意ですものね!」



 うん。私はどちらかといえばそっちの方が好きかもしれない。



「――ですが、殿下。お気が進まないのであれば……無理に踊らずとも、とは思うのですが……やはりアレだけは避けられないのでは……?」



 ……アレって何だ?



 思い出せずに疑問を浮かべていると、横で聞いていた着付け師が先に口を開いた。


「まぁ、それは成人パーティーでの開幕のダンスのことですね!」



 ……あ。



「それは今年成人を迎える女性方の晴れの舞台……! 国中の貴族女性が集まる中でも、今年の注目は何と言っても王女殿下! 待ちに待った殿下のご成人には多くの者が心待ちにしておられますわぁ!」


 着付け師は何やらうっとりと想像に期待を膨らませつつ語っていた。


「ですので自然と、開幕のダンスは一番位の高い殿下が努めることになるのですよね。」



 ……そうでした。



「流石にデビュタントではダンスパートナーがいらっしゃらないと……。」


 リーナが遠慮がちながらも、私にとっては避けられない難題を突きつけた。


「……そう、ね。」


 ちょっと前まで覚えていたはずなのだけど、誘拐騒動やルクスの生誕日やらでうっかり忘れていた。



 ……ダンスパートナーねぇ。……どうしようか。



「殿下はいつも、どなたからのお誘いもお受けになられてはいませんが……殿下自身が踊りたいと思うお相手はいらっしゃらないのですか? 」


「踊りたいと思う相手……。」


「デビュタントはご自身の近しい間柄の殿方を選ぶのが主流ですわ。……例えば未婚のご兄弟やご親族、ご友人や恋人、婚約者……あとは護衛して下さる騎士様などですわね。」



 ……兄弟? いやぁ、アレクセイと仲良く踊る図なんて想像できないな。シリクスはこういう行事はサボり魔だし。

 友人だとアレン? 運動神経いいからダンス踊れるみたいだし……。うーん、私に騎士がいればその人に頼んでたのかなぁ。



 どう切り抜けようかと悶々と考えていると、ふとある一言が思い出された。





『――俺を姫の騎士にしてください……。』




 …………セルジスのあの言葉は何だったんだ。結局あのあと時間が来たから中途半端に終わる形になったのだけど……私の騎士にしてって……、それは側近になりたいってこと……?





「さ、殿下。着付けが終わりましたわ。次は装飾の仕上げに入りましょうか。」


「――え、えぇ。ありがとう。」



 彼の真意のほどは、また今度聞くとしよう。







考え込む間、ずっとTの字……。




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