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転生王女 ~神様、転生したら王女って……どういうことですか!~  作者: シマユカ
第一章「転生王女は神の御子」
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27. 転生王女の忙しない(?)1日ーⅢ / ところにより、侍女の密談。

 


 ――時刻はちょうど十五時。


 いつもならばお茶の時間だと言って、バルコニーで優雅っぽくティータイムを迎えている頃合いだった。


 そう思っていると、傍で誰かが『――ぱんっ』と、手を軽く合わせる音が聞こえてきた。



「――はい、本日の授業はここまでです。リディア王女、お疲れ様でございます。」



 声の主は今日最後の授業を担当した教師だった。最後は歴史や政治など……帝王学を学ぶ授業であり、王族としては必修科目の一つである。教師は私がこの国の歴史を綴られた本を何冊も読み進めている速さに関心を抱いていた。


「リディア様はアレクセイ様に劣らずの勤勉でいらっしゃいますね。本を読み、吸収する速度もお早く……私の出題にも難なく答えられておいでだ。」


「いえ、この本が読みやすいせいでしょうね。」


 暗記は得意です。しかし余計な名称がささやかれぬよう、濁しておこう。……あとは、アレだよね。やっぱり異世界の歴史って興味が湧くよね。魔法の成り立ちとか超ファンタジーだった。



――こんな分厚い本も……前はよく読んでたなぁ……。



 政治はあんまりピンと来なかいから丸暗記で凌いでいるので、持論を述べろと言われりゃ無理だけど。幸いにも本に綴られた一文を出題されて答えるだけだから、この特技には向いている。


「――それではまた次回の授業で。私はこれで失礼致します。ごきげんよう、リディア様。」


「はい、ご指導ありがとうございました。」


 教師は丁寧に右手を胸に当て、私に頭を垂れて挨拶を告げると部屋を退出していく。私は笑顔で教師を見送った後、部屋の扉が閉まるのを確認してから静かにソファーに座り、一息ついた。



「――ふぅ。」



 いつもならばニ、三種類を挟み挟みゆったりと半日でこなす授業を、遅れた二日分も合わせた倍の量を怒濤の五時間ちょいで済ませた私を……誰でもいいから誉めてくれないかなぁ……なんて。


 ほぼノンストップで終わらせたせいか、文字を見続けた目と書き続けて使い続けた手がぐったりする。私は普段の姿勢をあまり崩さないように、目を閉じて両手だけ項垂れるようにぶらりと力をなくした。……背筋を伸ばしているなら、だらけているようには見えないだろう。


 ……すると、タイミングを見計らってくれたかのように侍女たちが、『カラカラ……』と静かにワゴンのキャスターが回る音を鳴らしつつ、それを私の前まで持ってきた。


「お疲れ様でございます、王女殿下。」


 そう言うと侍女たちはワゴンの上に乗せたティーセットを私に見せ、準備が整うとリーナがそのティーカップを私の前にあるテーブルの上にそっと置いてくれた。


「どうぞこちらを。このハーブティーは目やお身体の疲労に良く効きますわ。短い間ではありますが、パーティーの前に少しでも和らげばいいのですが……。」


「ありがとう、リーナ。いただくわ。」



 いつものことながら私の担当侍女は素晴らしい気配り上手だ。私が紅茶に抵抗がなくなったのは彼女が美味しく淹れてくれていたお陰なのが大きい。


 リーナは王宮侍女の中でも大変優秀らしく、普段はおっとりとした印象ではあるが……平民出身ながらも若くして侍女長補佐の役職にまで就いた、しっかり者のデキる娘です。


 幼い頃からお世話をしてくれていたからか私の事を粗方把握しているようで、今みたいに私が疲れている様子を察知して既にハーブティーを用意してくれていたりするサポート能力。ナイス気配り。


 こんな娘をお嫁さんにしたいものだ。



 ――因みに説明すると、第一王女付きの正式な担当侍女は全員で七人いる。内二人は侍女長や侍女長補佐のリーナなどだ。王女の立場ならお付きの側仕えはもっと居てもいいくらいらしいが……私は大勢に四六時中見られ続けるのは絶対嫌だし、未だに側近も選んでないしね。なので許される程度までに人数を絞っている。


 ……と言うのも昔、女官の中に間者が潜り込んで私を暗殺しようとした事件があったのだ。その時は上手く乗り越えられたが、以来世話役を任せる相手は慎重に選ばなければいけないと実感している。





「――それにしても、予想より一時間もお早く済まされてしまうなんて……流石は王女殿下ですわ。」


 いやいや、いつもより書き物と拝読のスピードを早めただけですよ。それはもう風のように。どんどん課題を終わらせていくから、流石に教師たちも次の用意が間に合わずにあたふたしていた。

 受講時間は大体で決まっているが、課題が早く済めば終わらせても大丈夫なのだ。


 今日予定していた課題量ならば早くても十六時に終わって、その後からパーティーへ赴く為のドレスの着替えなどが控えていた。……正直本番の三時間前からどんだけの準備をするんだろうか。着替えと化粧以外に何があるのか……。



「――休息の所、失礼致します殿下。」



 この後の予定を考えていると、別の侍女が顔を出した。その手には何か持っている。


「今しがた配達人から殿下宛に書簡を預かりました。」


 報告に来た侍女は一通の手紙を私に渡した。

 ……封筒は、ふちに銀色のラインが引かれ、紙材も良質な肌触りの高級感漂うシンプルなデザイン。ペーパーナイフで中を開けると、そちらも同じデザインの手紙が入っている。



(…………ふむ。返事が来たのかな…………? )



 銀のデザインをチョイスするところが……誰の好みを連想したものなのか知らんが、相変わらず抜け目ないな。……こういう人は昇進するよ。



 ――私が手紙の内容を読んでいると、その様子を眺めながら……壁際に待機している他の侍女五人が、手紙の差出人について小声で何やらささやかな談笑を交わしていた。







「……また他の貴族からのアプローチかしら? 」


「殿下とお友達になりたい方は沢山いらっしゃるものね。……打算のないお相手ならよいのだけど……。」



 すると……ふと朝の私の行動を遡っていた侍女が思い出した。



「……そういえば、殿下も今朝がたお手紙を書いていらしたわ。……あれは誰に送られたものだったのかしら……?」



 その呟きにもう一人も反応する。



「使用されていたのはお仕事用の便箋ではなかったけれど、信頼する配達長に預けるように……と、念を押されていらしたわね。確か速達で……。」



「! ……そ、それは……――!?」



 侍女たちの間に黄色いテンションが上がった。



「もしやプライベートのお手紙ではっ!? それも内密にやり取りする仲の! 」


「え? ま、まさかぁ…………――ハッ! 今届いたあのお手紙はそういうことなの……? 」


「宛先は!? 宛先は伺っていないのっ? 」



 話しに火が点いたように白熱し始めたのか、興味津々な侍女たちは口々で食い入るように真相を探ろうとしている。



「そ、そんな……内密のお手紙よ? いち侍女がそのような無礼はいけないわ。」


「でもでも! 気になってしまいますっ。殿下はおモテになられるのに……今まで浮いたお噂が全くありませんでしたし、ご本人も色恋などには一向に興味を示されませんでしたもの。」


「うーん、親しい殿方でいうなら……アレン様くらいかしら? 今では交流の機会がないようだけど、お二人はご幼少の頃から仲睦まじい様子だったわ。」



 変な詮索が始まった。



「え、アレン様はご友人でしょう? ……それにあの方は平民出身だし、それ以上のご関係は難しいんじゃない……? 」


「あら。平民でも功績を上げれば爵位が賜れますし、アレン様は既に王子補佐という立派な職に就かれてますわ。……まぁ……男らしさといった点では、少し頼りに欠ける面がございますけど……」



 ダメ出しが入った。









 ――――第二王子執務室――――



「――っふ……くしっ……!」


「ん? 何だ風邪か、アレン。」


「い、いえ……そんなはずは……」


(…………??)









 ――――第一王女私室――――



「甘いですわ! アレン様はその控え目な雰囲気で見落とし勝ちですが、実は整った容姿をされていますのよ。貴族女性からは隠れ人気も獲得してます。

 そう……無害そうな人柄はフェイク! あの方はきっと積極性のある要素を忍ばせてますよ、きっとっ!」



 何だそのロールキャベツ的な例えは。



「他に殿下と親しくされてる殿方でしたら……私は騎士のリグル卿がお似合いかと思います。あのクールなのに無口な優しさのギャップが何とも……! 」


「あら。だったら有力なのはエンフィールド公爵家じゃない? あの貴公子様なら身分も性格も申し分ないと思うわ。」



 …………何か候補が上がった。



「確かに公子様は、殿下の婚約者候補の中では最有力だと噂されてるけど…………あのお二人って確か仲がよろしくなかったんじゃないかしら? 主に殿下が……」


「……ならやっぱり、隣国のカウレス皇子かしら? 昔、縁談の話が出ていたくらいだし……。」



「いいえ、私は――」


「それなら絶対――」





(…………。)





 ――きゃいのきゃいのと、深読みと妄想が膨らみ続ける侍女のおそらく恋バナに、とっくに手紙を読み終えていた私は丸聞こえの会話をどこからツッコめばいいのか無言で思案していた。





「――――…………っ、貴女達……。」



 わなわなと怒りに震えた声で我慢の限界を抑えきれないリーナが声を発した。



「王女殿下の前でそのような脈絡のない雑談などと……っ、言語道断です!! 不敬に当たりますよ!?」



「――……!!」



 叱責に我に返った五人がハッとした顔面蒼白の表情に変わった。



「……も、申し訳ございませんっ!! どうかお許しくださいっ、殿下っ!」


「いいのよ。次から気を付けてね。」


「「「……は、はいっ! 」」」



 女の子だなぁ……。


 対象者が私でなければもうちょっと微笑ましく聞いていられたよ。





「――こほん。では殿下、まだ時間はありますがいかが致しましょう。いつもの様に庭園を散歩なさいますか? それともお休みになられますか? 」


「いえ、どちらも必要ないわ。」


 私がそう言った瞬間、リーナたちは驚くような表情になった。いつもならば……やる事を済ませたら道行くままに宮内を散歩して回るか、そのまま昼寝をする……のいずれかが私の行動パターンだ。


 正直一度寝ておきたいが……私のやるべきことは全て片付いていない。



「…………まだ予定があるの。」


「え、それはどのような……?」



 侍女たちも把握していなかった。今決まったからね。

 ――私はにっこりと微笑んだ。





ナイショ(・・・・)よ。」







一気にフラグ候補が上がりましたねぇ……。

次回、新キャラ出ます



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