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転生王女 ~神様、転生したら王女って……どういうことですか!~  作者: シマユカ
第一章「転生王女は神の御子」
24/33

24. リディアとアレンーⅢ



雑談:)2週間休むつもりが気付けば1ヶ月経っていた驚き。

ネタはまだまだ在庫に有。今欲しいものは時間。


お待たせしました。







 


 ――時は少し遡り、とある地下牢にて……。



『……カツ……コツ……カツ……コツ……』



 静寂なその空間は、一人の兵士の足音がよく響いていた。兵士はランタンを手に掲げながら一部屋一部屋、等間隔に分けられた檻の中の様子を確認している。


 ――そしてその通りの一番奥……最後の牢の中へと顔を覗かせた時、ある光景が目に飛び込んだことで兵士は驚愕した。



「――こ、これは一体……!? ……お、おいっ! 誰か来てくれっ!! 」





 *





 ――そして時は、リディアとアレンのバルコニーでの会話に戻る……。





「――あ、そろそろ行かないと。」



 ……用が済んだこともあり、右ポケットに忍ばせた自身の懐中時計で時刻を確認したアレンはバルコニーから立ち去ろうとしていた。


 気が付いた頃には次第に辺りの空に薄明かりが広がり始め、景色が徐々に見渡せるようになっている。

 そろそろ陽が昇り始める頃なのだろう。巡回時間が来る前に戻るべく、アレンは手すりの方へ歩み出した。


「うん。プレゼントの件、ありがとうね。」


 彼に今回の目的の礼を言い、そのまま見送りをするべく私は腰を下ろしていたベンチから立ち上がり、彼の元へ行こうとした。

 ……その時……――ふっ……と何かが肩から『パサリ……』と落ちるような音がする。


(?)


 そこまで重くはない控え目な「何か」が無くなったことで、ほんの少しだけ私の身体が軽くなるような錯覚に陥る。……いや、これは解放感? なくなったと同時に急に微かな風が肌にかかり、先程まで和らいでいた肌寒さが思い出された。

 その原因が何なのか理解できなかった私は疑問だけが頭に浮かぶ。


 ……しかし、手すりへ向かうために私に背を向けていたアレンはそんな一瞬の出来事など露知らず、私に返事をしようと和やかに振り返った。


「どういたしまし――……てっ!?」


 ――瞬間、アレンはその場で固まった。

 私と目が合うなりいきなり身体を硬直させ、明らかに動揺の色を隠せずにいる。というより、私の姿を見た途端……と言うべきだろうか?


「……え、どうかした?」


「わぁっ!? ちょっ……待って!」


 普段から落ち着いた彼の突然の挙動に困惑した私はそのままアレンの方へ歩み寄ろうと一歩足を進めた。

 それに対し、――ギクッ……! と余計に動揺したアレンは私が近寄るのを制止するべく身動ぐように一歩後ろへ下がった。


「何でいきなり避けるのよ?」


「いや、えーと、……その……」


 しどろもどろと言い辛そうに焦っている。目線はこちらに合わせず、何故か明後日の方向へ目が泳いで……まるで何かを見てしまうことを避けているかのようだった。


 ……何でそんなに頬を赤らめているのだろう?落ち着いたあのアレンが珍しく焦っている。訳も分からずいきなり避けられるのは地味にショックじゃないか。


 ――自覚のない無知な視線に耐えられなかったのか、アレンは苦悶の表情を浮かべつつ……右手で自身の顔を覆いながら言い辛そうに教えてくれた。



「…………~~~~っ……その、落ちてる……よ。」



 後ろのベンチへと人差し指を指して発せられた言葉に、私は指摘の方へと視線を流した。

 するとベンチには私が羽織っていたはずのストールが落ちており、そこでようやく先程の不思議な感覚の原因が分かった私は謎が解決したことに喜び、手を合わせた。


「あぁ……! どうりで身体が軽くなった気がすると思ったら。急に肌寒くなったから変だと思ってたの。」


 ついさっきまでは今より肌寒かったから、ストールの裾を強く掴んで身を隠すように包ませていたけれど、いつの間にか目が冴えたことも相まって体感温度が上がり、それにより気が緩んで掴む力を弱くしてしまったということだろう。後半は存在を完全に忘れていた……。

 しかしやはりストールを全部取ると少し寒いかもしれない。半袖だからだろうか。


 ――ともあれこれで解決かと思いきや、何故か彼はまだ視線を完全に合わせようとしなかった。一番重要なことにまだ気付かず能天気に笑う私にアレンは言葉を続けた。


「そうだけど……! そうじゃなくてっ!!」


 まるでボケにツッコミを挟むかのように、すぐさま言葉を強く発したアレンに思わず私は目を見開いてビックリし、彼を見た。


 取り乱している理由が私にはまるで分からない。ストールが落ちたことだけじゃないの? ……そういえばやけに動揺してるし、何で顔が真っ赤になってるんだろうか……。


 ――そんな事を思っていると、痺れを切らしたようにアレンは呆れながら私が気付くべき件を指摘した。



「……っ、……そんな無防備な格好してるなら、もう少し慌てたほうがいいっ……! 」


「無防備……?」



 目をぱちくりさせながらも彼に言われた言葉を思い返しつつ、「格好」という言葉に視線を自身の下に落とす。


 ……そして、回答に辿り着く。……私がようやく諸々自覚するまでの間、およそ五秒だった。



「――…………あ。」



 そういえばこの国……というかこのご時世にある暗黙のルールを私は忘れていた。



 それは子供の頃から誰もが教わる教訓(マナー)。特に貴族や王族の娘ともあればその重要性は割かし大きい。

 昔からリーナや侍女長などといった世話役陣から、口を酸っぱくして指導されていた事案を私は軽視してしまっていた。

 その為、自身の格好など気にもしてなかった。


 と、言うのもどうやらこのご時世では女性の寝間着姿を家族以外の男性からモロに見られることは、法には触れないが大体は羞恥心に値する事案らしい。


 なので女性はそんな姿を男性に見られると高確率で悲鳴を上げて身を隠すし、そもそも寝間着を晒した状態で気軽に外へは出ない。

 緊急時で直ぐに人と会わないといけない時、自室のバルコニーへ空気を吸いに……などはあるが、まぁそれもストールなどを羽織るのが必須。それが淑女のマナーだ。

 それがたとえ伴侶であっても、結婚前であるならやはり駄目なのだそう。……堅いなぁ。


 男性側も当然女性へのそういった教訓があるので、そんな場面に出くわそうものなら免疫のない初な人なら赤面ものらしい。


 因みにこれが女性慣れしている紳士だとスマートにフォローして株が上がったり……、遊び人とかだと据え膳として美味しくペロリされる危険があるとかないとか……。


 だから私がいつもルーティンでやっている……、外の空気を吸いにバルコニーで軽く身体を伸ばす準備運動みたいなものはノーカンだ。

 着替えに時間を費やすほどのんびり過ごす訳でもないし三分程度で済むことだけど、私はちゃんとストールを羽織っているよ。セーフだ。

 人気のない時間帯だし、計算と確認を試行錯誤してから実行に移しているからそれを目撃されてることはない筈だ、絶対。……多分。……きっと。





 ――まぁ、つまり成る程。恐らくアレンが最初バルコニーへ上がることを躊躇ったのはこの為だったのだろう。


 成人前とはいえ寝間着姿で異性をバルコニーへ侵入させたこの行為は、端から見たら誘っている画になってしまうかもしれない。――……言い方がなんか誤解を生みそうだが。


 けれど私がストールを羽織っていたのと許したこともあってとりあえず一定の距離だけ取ってた……と、彼なりの配慮が働いてたというわけですね……。



 ……ん? でもそう考えるとこれまでの事に謎が生まれる……。それを思い返すと疑問と今更感から私は思わず笑いがこぼれてしまった。


「……ふっ……あはは、アレンってば。私の寝間着見るのなんて初めてじゃないくせに今更照れてたの?」



 ――アレンは身内以上に気心が知れた相手である。本格的な淑女教育は10歳からだから、私はそれより前からアレンと一緒だったのでそういう概念が抜け落ちていた。


 ……しかしストールが落ちても私に慣れた普段の冷静なアレンならば、平然とそれを取って私にそっと羽織らせる……といった紳士的行動を起こせる気概はあったであろう。


 ストールの下が寝間着であることなど容易に推測していた筈だろうに、何故そこまで取り乱していたのか……?


 思い返せば返すほどおかしくなってしまい、私は未だ真っ赤になっているアレンをからかい始めてみた。


「寝室にだって入ってきてたじゃない。」


「……~~っ。誤解を招く言い方になってるっ! へ、部屋には……――子供の頃はともかく、今はもう仕事以外で入ったことはないし、例えば一昨日だってそうだったじゃないか。

 それに俺だって、君が普段着用してる寝間着だったなら不意を突かれることはなかったさ。」


 普段の私……?


 ……あ、そうか。私が今日着ている寝間着(ネグリジェ)は昨夜、侍女のリーナがノリノリで仕入れたおろしたてのもので……つまり、着たのは初めてだ。


 水色がかったグラデーションがオシャレな薄手のワンピースは、背中と胸元がちょっと見えてるなぁ……という感じでVの字に開いている。そして裾丈の方は足首上までの長さまであるのだけど、膝から下は透けて見えるデザインになっている。腕の袖部分も同様だ。


 そこまでドエロくはないと思うけど、衣類にあまり拘りのない私でも分かる……ちょっと露出部分のあるネグリジェだった。改めて思うとやや色めいているかもしれない。


 普段は露出控え目なシンプルな衣類を着用してる私に、気を回したリーナが「王女殿下にはこういった女性の魅力が引き立つものもお似合いですわっ!」と、食い気味でキラキラとした眼差しで渡してきたのだ。


 言ってる意味はよく分かんなかったけど、その時は特に疑問なく普通に受け入れていた。着られれば何でも良い。

 それに夕べは父との対面で心身が疲弊していて、すぐに寝たかったから適当に聞き流していた。


 だからこそアレンにとっては予想外だったようだ。まさかストールの下がいつもと違う系統の、やや色めいた着衣であるとは思っていなかったのだろう。

 着るのは自由だが、ドレス以外で肌を異性の前で晒しすぎるのは誘惑以外ではNGだと昔教わった気がする……。



「――えぇ、これダメ?」


「……ダメじゃないけど、せめてストールは落ちないように握るべきかな……。君はもう少し危機感を持つべきだよ。」


 私の適当な返しに対し、アレンは小さく溜め息を吐いて注意した。……何だかよほど不意を突かれた様子だ。私が懸念しすぎているのだろうか? まぁ、端的に言えばそうなんだけども。



 だけど私がいつも無警戒のように思われてしまうのは心外だ。今日はたまたま大人っぽい寝間着を着用してた事を、ぽろっと忘れてた。それだけだよ、うん。

 そもそも相手がアレンでなければ私の気が緩む筈がないじゃない。……なので私は弁論の意を込めて押し通すように言葉を放った。



「――別にいいのよ、アレンだから。」



 ……すると、再びアレンは制止した。

 あれ……もしかしてまた何か間違えた……? でも本当の事だし、よく知らない異性じゃないし、間違いは起こらないだろうから信頼してる……って意味だったのだけど、もしかして伝わらなかった……?



「……俺なら安心?」



 ぽつりと呟いたアレンの言葉は冷静だった。……良かった、ちゃんと伝わってたみたい。


 だけど先程まで頬を紅潮させて動揺していた時とは一変して、彼のその表情には陰りが見える……。けれど私にはその心境が汲み取れない。


「……ダメだよ。」


 少しの沈黙の後に発せられた言葉は、私の言葉に対する回答なのだと悟った。


「ど、どうして……?」


 そんなに静かに言われると、何だか余計な緊張感を抱いてしまうのだけど……。そう思いつつも疑問を解決したい衝動に突き動かされるように、私も静かに聞き返していた。


 するとアレンはこちらに向き直り、真っ直ぐ私に目を合わせる。……その視線に思わず鼓動に微かな高鳴りを覚えてしまった私は目が離せなかった。


 彼は静かにこちらへ足を踏み出して……私の耳元までそっと顔を寄せるとゆっくり囁いた。



「…………俺も男だからかな。」



 そう言われると同時に『――フワッ』と何かが再び私の身を包む様な感覚がする。


 ささやかな温もりに自身を見下ろすと、私が手に持っていたままだったストールをいつの間にか彼が取ってかけ直してくれていた。


 どこか淋しそうな表情で私を見つめるアレンはその後すぐに優しく微笑んだ。


「――なんてね。」



 ドキ……。



 ――ん? ドキ?


 見つめられた時とはまた違った衝動が走るかのように鼓動が跳ねた。……何これ、不整脈?

 益々訳が分からず胸に手を当てて考えていると、アレンはもう振り返ってバルコニーの手すりに手を掛けていた。


「じゃあ、そろそろ本当に戻るよ。」


「――あ、うん。」


 ハッと我に返った私は条件反射で答えた。今度は強くストールの裾を掴みながら……。





 ――……と、そんな時だった。





 私の部屋がある区画から少し離れた距離にある、茂みの向こうの木の側で誰かがこちらの様子を眺めながら不適な笑みを浮かべた。



 ――ピクッ……!?



 その視線を瞬時に受信したアレンは ――バッ……! と振り返り、直ぐに視線を感じた先へ目を凝らした。


「……っ……?」


 しかしそこには既に人影はなく、隣接する茂みや木に視線を移すも誰も見当たらなかった。


(……今のは一体……。気のせい、か……?)


 怪訝な表情を浮かべながら自身の感覚が違っていたのだろうかと困惑するアレンに、怪しい視線などには気付かなかった私は突然の空気の変化に心配の声を漏らした。


「……アレン? どうしたの?」


「あ、いや……何でもないよ。」


 私の気遣う表情に気付いたアレンは心配いらないと言うように両手を左右に振って見せ、いつもの穏やかな雰囲気に戻っていた。


 ……緊迫した様子は何だったのか、そのままアレンは何も言わなかったので小さな疑問だけが残ってしまった。


 ひょっとしてそこに誰か居た……とか?

 ……まさか、ね。







 ――そんな予想は知らず内に的中しており、フードで身を隠すその人物は早々に立ち去り、先へ向かいつつも不適な笑みを浮かべながら呟いた。



「――またな、オヒメサマ……。」



 段々と、私の知らない所で何かが暗躍し始めていることを……私はまだ知らずにいた。





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