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転生王女 ~神様、転生したら王女って……どういうことですか!~  作者: シマユカ
第一章「転生王女は神の御子」
12/33

10.憂鬱な会議


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 ――翌朝の正午。私は今、玉座の間にいる。


 広間の中央には床に敷かれた赤いカーペットを挟むように、国の重鎮である貴族や大臣たち。

 壁際には各側近や騎士団やら衛兵やら、主に昨夜の私の捜索に携わった関係者が並んでいる。

 これだけの人が集まっている空間に置かれても全然狭さを感じないくらいには、この部屋は広かった。


 列の先頭には我が兄殿下と弟殿下。そして奥にある小階段の先の王座には、威厳のある佇まいで私の父である国王陛下が鎮座している。

 一人でカーペットの中央に立つ私は思った。


 ――――…………逃げたい…………。


 昨日の今日という短時間でこんな場に立たされるなんて勘弁してほしいが、可愛い弟の生誕パーティーを前に煩わしい話題は先延ばしにしたくない。

 本当は私の体調を心配した関係者たちがあと一~二日程時間を置きましょうと提案してくれたけど、ルクスの為にも早くこの件を片付けたかったかった私は憂鬱ながらもこの場に来たのだ。


 ……それにしても、ここ数年は平和に過ごしていたせいかすっかり忘れていた。

 そりゃ私は一応この国の王女なわけであるから、事は一大事なのだろう。

 加えて私は「不思議の力を宿す『神の御子』」。もし存在を邪魔に思った敵に暗殺されたり、それか手中に入れるために誘拐して神力を悪用されでもしたら大変だ。


 更に昨夜のホームラン事件。これでも一応対策は考えている……けど……、果たして上手くいくのか段々不安になってきた……。


 この聴取の場が始まる前、事前に聞いた警備隊長の報告は一体どういうことなんだろうか。



「――して、誘拐犯たちはこの様に供述しているようだが……それは全て真実か?」



 誘拐犯から得た事情聴取の供述書を拝見していた父が警備隊長に尋ねていた。


 まさか皆、捕まったのはかの有名な悪党集団の『銀狼盗賊団』だとは夢にも思ってないだろうな……。

 手配書は特徴だけだけど、盗賊が王女の誘拐なんて前代未聞な可能性は浮上しにくいだろうし、どうやら自分達が盗賊だってことは言ってないみたいだし。……私も伝えてないし。



「は。誘拐犯の計画を聴取したところ……「――庭園で王女を眠らせ、拉致。その後旧離宮の地下にて拘束。買収した門番二名との連絡を取り合い、合図に合わせて王女殿下を連れ去る目的だった。」模様です。」



 私が拐われた経緯はつつがなく正確に聴取されていた。……けれど、問題はそのあとだった。



「――そして……誘拐の痕跡を残さないため、表向きは王女殿下の偽装暗殺を企てたという名目で離宮に「火薬の魔石」を設置。

 逃走の手筈が整い次第、「魔石」を発動させて離宮を破壊し、さも王女殿下が跡形もなく殺害されてしまったかのように見せかける腹積もりだったようです。

『神の御子』の存在を恐れる反乱組織の企てだと我々に思わせる魂胆だった。――と。」



 …………何その怖い新事実。



「お、おのれ……なんという悪党共だ! 恐れ多くも国の宝であるリディア様にその様な企てを仕掛けるなどと……!」


「王宮に忍び込むのも許されん所業だ! かように非道な者共など、即刻刑を実行するべきではないでしょうか!?」


「……待て。それなら、リディア様を連れ出す前に離宮が破壊されたのは何故だ?」



 ……ギク。



 口々に怒りや疑念が飛び交っている。質問に警備隊長は言葉を続けた。



「それが問い質したところ、殿下を拐ってから後の記憶が曖昧のようでして……よく覚えていないと供述しております。」



 ……ほっ。



「何でも、「緊張感の足りない部下を殴り飛ばした。」辺りまでは覚えている……と。それ以降の記憶は思い出せないそうです。」



 そこまでは覚えてたか。


 ――昨日の誘拐事件、私が施した対策は一つ。それは盗賊たちの「記憶処理」だ。


『神剣』には光を浴びた者の前後の記憶を混濁させるというオプション能力が備わっている。私はそれを使った。……あんな衝撃、もろに喰らえば誰でも色んな意味で混濁すると思うけどね……。


 あの短時間ではソレしか間に合わなかったけど充分だ。要は私が力を使って応戦した(・・・・・・・・・)ことを夢感覚で忘れてくれればそれでいい。盗賊さんたちへの隠蔽はこれで事足りる。どうやらオプションは上手く作用されているようだ。


 ――そして残された課題は他の目撃者の対策。彼らは光を浴びてないからオプションが作用しないため、しっかり記憶がある。

 まあ……神様から借り受けた神力の中に、これをどうにかする能力は一応あるにはある。だけどアレはこの大人数相手に使うとリスクが生じるものなので、出来れば使うわけにはいかない。


 さて、どうするか……。



「……殴り飛ばした? 何だそれは。なら仲間内でいさかいでも起きたのではないか? 発見された際、奴等はボロボロだったと聞いたぞ。」


「成る程、そうですな……揉み合いの最中に誤って「魔石」を誤爆させ、そのショックで前後の記憶が抜け落ちてしまったのでは……。」



 ……おっと?



「そう考えると辻褄が合いますね……。現に倒壊した地下には砕かれた「魔石」の欠片が発見されてます。調べたところ、使用した形跡も確認してありますし。」



 …………え、ほんとに?



「ふ、間抜けな連中だ。恐れ多くもリディア様を狙い、王城に忍び込むなど相当な手練れかと警戒したが、所詮は浅知恵の馬鹿な連中だったというわけか。」


「倒壊の原因や記憶の混濁はその予測が妥当かもしれませんね。

 そして殿下を拐った目的ですが……「『神の御子』を誘拐するよう依頼された」と、供述しています。依頼者は素性を隠していたそうで正体までは把握しておらず……。そちらも、今後念入りに聴取を続けて参ります。」



 ……おぉ。これ、何だか私の都合の良いように事が片付きそうなのでは……?

 対策内容は怖すぎるけど……ふむ、「火薬の魔石」かぁ……。


「火薬の魔石」とは言ってしまえば爆発アイテムだ。使用数次第で爆破の強弱をつけられる魔法道具。

 例えにすると一つの威力は銃を発砲させるくらいと匹敵する。そこから手榴弾レベルからダイナマイトレベルまで威力を上げる使い方もできる。


 てっきり離宮がぶっ壊れたのは私が『神剣』の扱いをミスって大ホームランしちゃったのが原因だと思ってた。……神様も予知を全部教えてくれなかったし。



 《・・・・根に持つな。》



 あの爆発音は彼らを吹き飛ばした拍子にその「魔石」が発動したからってことだったのか……。そういうこと……だからあんな大事故に……。うん、まぁ結局私のせいなのは変わんないんだけど、ようやく謎が解けた。


 何だか色んな偶然が上手い具合に解決しつつあるみたいだし、このままやりすごせるのでは……?



「――「光」については何か吐いたのか。」


「「「 !! 」」」



 ……その圧のある声はその場にいる全員を静寂とさせ、一斉に視線を集めた。


 今まで報告や見解を静かに聞いていた父、国王陛下が口を開いたのだ。相変わらず一言発するだけでも緊張感の漂う声をしてらっしゃる……。



「――奴等の供述は確かに辻褄が合っている。……しかしこれだけは不可解だ。離宮が倒壊した際、爆破とは違う……何らかの「光の柱」が出現したのを我々共々確認している。」



 …………ん? 光の柱? ……あ。あのホームランかな。


 やはりこの場にいる誰もが最も印象に残っているのはアレかぁ。そりゃ、只の爆発であんなドデカくて眩しい白い光は見られないものね……。



「私やシリクス達は城から見ていたが、お前は間近で見たんだったな。アレクセイよ。」


「――はい、陛下。」



 名前を呼ばれてアレクセイが先程より姿勢を正し、はっきりと返事をした。



「……我々が離宮に辿り着く間際、確かにその光は天高く昇る柱の様に見えました。これは火薬の魔石では実現しにくい現象だと存じます。」



 あぁ、真面目に答えてらっしゃる……。そんな鮮明に覚えてなくて良かったのに……。



「……リディア。」


「 ! 」



 厳格な声には私も緊張する。……だって圧凄いんだもん……。

 名前を呼ばれた私は国王へ視線を向けた。



「改めて昨夜の出来事を問いたい。一体あの場で何があった。」



 ――ここからは私の必殺技の見せ所だ……。この時間まで(半日しか経ってないけど)練りに練った私の秘技――



「はい、陛下。」



 見せてあげましょう。


 私は静かに目を開けて前を向き、真っ直ぐ国王の座る玉座を見上げた。

 兄や周りの者も答えを待っている。その中には壁側に控えていたアレンが他の人たちとは違う面持ちでハラハラと心配そうに見ていた。


 そんな中、私は笑顔で答える。



「――……覚えておりません。」


「「「 !? 」」」



 その場の全員が一斉に私を凝視した。



「……お、王女殿下? い、今、何と……?」



 周囲が絶句するなか、警備隊長が恐る恐る私に聞き返した。なので私はもう一度更に笑顔で、明るく、ゆっくり返した。



「覚えていないのです。誘拐されていた間のこと。」


「……えぇっ!? し、しかし……何かしら記憶にあるのでは……」


「全く。何も。」


「……えぇ……。」



 キラキラ、ニコニコ笑う私に周囲はどよめいている。……まぁ、そうなる気持ちは分かります。頼みの綱の証言が取れないのだから。


 ――私は考えた。今までと同じような誘拐に、今までとは大きく違う終幕……。考えに考え抜いた私の言い訳は……――「オボエテマセン。」


 全力でシラを切る、だった。


 偶然の辻褄のお陰で上手くごまかせそうなのだから、もうこういうのはヘタに言い訳をしない方が良い。隠蔽工作もロクにする時間がなかった中、適当な理由を述べて後々バレてしまっては元も子もない。


 これは困った時の、昔から使ってた私の最終兵器の一つ。……「ごまかしきれなければ笑ってシラを切れ」法。効果は絶大だろう、色んな意味で。



 《・・・・早い話が「開き直る」だな。》



 脳内で神様から密かに呟きの声が聞こえていた。



「――申し訳ありません。ですが私、本当に分からないのです……。

 庭園で眠り香を嗅がされ、意識を失った記憶まではあるのですが……、何せずぅっと(・・・・)眠らされていたのでその間に何が起きていたのか全く存じ上げなくて。

 気が付いたら、辺りは既に瓦礫の山でしたし……私自身も、何が何だか……。」



 困った表情を作り、つらつら答える私はいけしゃあしゃあと知らぬ存ぜぬを主張し不運の演技を貫いた。



「……そ、そうだったのですか!?」


「あぁ、リディア様。何とおかわいそうに……」



 次第に周囲は私の話を成る程と聞き入り、しおらしく演じた表情に心を打たれ、寧ろ感慨深く同情する者もいた。


 ……日頃の外面の行いが幸を喚んでるなぁ。


 そんな私達の会話を端で聞いていたアレンが呆気に取られていたことは知る由もない。



「――お、王女殿下の仰る通りですっ! あの眠り香は強力な睡眠作用をもたらす薬効だったと解析されています。これを考えると確かに殿下が何も存じ上げないのは仕方のないことでは……。」



 イーサンも言ってたけど、やはり眠り薬とやらの効力は確かだったようだ。……なら、一時間もしないで私が目覚めたのは何故だったんだろう。耐性でもあったのかな……?



「申し訳ありません! 誘拐のショックも消えていない筈なのに配慮が足りず、殿下の聴取に頼りきってしまうとは……一生の不覚です! どうか私共をお許しください……っ!」



 ……やめて、心が痛いっ。


 悲劇のヒロインなんて演じたくもないが、不足の事態に背に腹は代えられない。

 私は心の中で深呼吸し、皆の方に向き直って最後を飾る渾身の一撃を放った。



「――信じて……下さるのですか……?」



 どきゅ――――――んっ!!!!??



 潤ませた瞳、紅潮させた頬、斜め45度? だっけ。あと上目。しおらしい作り演技の完成だ。



 《・・・・見事なあざとらしさだな。》


 ――うるさいです。



 私の全力の外面に周囲の殆どが頬を染め、見惚れているかのような表情になっている。

 ……あくまで身内以外に向けたものなので、真横にいるルクスとアレクセイまでも思わず頬を染めていたことには気付かずにいた。そしてアレンも然り。シリクスは何か悟ってか知らずか笑いを堪えている様子だ。


 ……こんなんで本当に効くとは思わなかった。



「――ご、ごほんっ! そ、それでは、あの光の柱の説明は分からないままですね……。」



 ……にしても、あの一撃の名称がそんなカッコよく呼ばれてたなんて。……私、ネーミングセンス無いんだな……。


 心の中とはいえちょっと気恥ずかしく感じていると、一人の司教が挙手をし口を開いた。



「陛下! その件についてですが、あの光はきっと神の思し召しではないでしょうか?」



 …………ん?


 するとまたもう一人の司教が口を開く。



「そうです! リディア様の話を聞いて確信を持ちました! これはきっと『神の御子』を害した者への天罰! すなわち神の怒り!!」



 ………………んん?



「オリエントの守護神が御子であるリディア様をお守りくださったのです!」



 ――……そうなんデスか?



 《・・・・私がやるならもっと徹底的にやっている。》



 ――……そうデスか……。



「あれほどの爆破に関わらず、リディア様に外傷はなく全くの無傷でした! 医者も疲労で倒れただけだと診断されておりましたし……。」



 ……ギク。……あ、その言い訳忘れてた。



「成る程。確かに、あの現象は人外でなければ説明できない。上級魔導士や大神官様でも難しい芸当だ……。まして、王女殿下は神に愛された御子っ! オリエント神自らが天より御子たるリディア様の御身を爆破からお守り下さった……と、いうことですな!?」



 …………都合よく解釈された。



「言われてみればあの光の柱には清浄な聖なる光のように感じたな……。」



 ……おぉっと、あの疑り深いアレクセイまで?


 周囲の人たちも納得した顔になっていってるし、司教たちは神々しい目で私を見てくる……。


 この世界では限られた少数だけとはいえ、魔法や神力もあれば神様による神秘的現象も存在してる。まさか私のシラからこんな奇跡の辻褄が揃うなんて……。



「――リディア。」


「はい、陛下。」



 おっと、今の私はしおらしく何も知らない少女の演技をせねば……。


 陛下は私を呼び掛け、暫しの沈黙が流れた。

 私の心の中では鼓動が『……ドッドッドッドッ……』と、緊張の音がずっと鳴り続けている。



「――……無事に戻り、何より。聴取は以上だ。暫く休息を取って身体を休めておきなさい。」



 ――……ご、ごまかせた?



「はい。……ご配慮痛み入ります。」



 私はドレスの裾を摘まんでお辞儀をする。



「警備隊長。聴取に進展があればまた報告してくれたまえ。光の柱については……神がリディアを守ったものという線が濃厚かもしれん。後で神話の文献を見てみるとしよう。次の議題で盗賊共の処遇を決定する。」


「……は!」


「――ではこれにて、会議を閉廷します。」



 警備隊長の最後の締めの言葉でこの場は収束した。閉廷と同時に、私は一気に周囲に囲まれてしまう。



「リディア様! 此度の件、我々の無力をどうかお許しください。」


「やはり貴女様は神に愛された御子です!」


「此度の失態……信頼を回復させるためにも我が騎士団一同、より一層リディア様をお守することに全力を尽くさせていただきます!」



 ……えーと、とりあえず難は逃れた? でいいのだろうか。



 《・・・・言っただろう、切り抜けられると。》



 だから何で最初から教えてくれないんだ。


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