6話 正念場
さて、元々 バトルシーンを上手く書く練習をしようと始めたこの作品。
今話も、中々にいい練習になったかな? とか 思っとります。
昇進したら、改稿してよりよく出来たらと思っとります。
2話に一度周期で言いましょう! 評価してもらえると、作者のモチベがあがry
それはそうと、この話 作品の中で現状 一番 時間かかりました。
「あのー、一応もう試験始まっちゃってるんだけど」
第三闘いの間 には困り果てる少年 ルグサ と茶色い髪を地面に擦り付け半べそで土下座をする少女 マリ がいた。
「お願いしますう! 奴隷にでも、イヌにでもなんにでもなりますので500点くだざいい」
「いやいやいや、君は僕をなんだと思ってるだ! そもそもまだまともに戦ってもないだろう!?」
今やったことと言えば、呆然と立ち尽くす マリ に心配して近寄ってきた ルグサ に 力の限りに不意打ちで戦鎚をフルスイングし、躱されたので、無理を悟って戦鎚を振った勢いで、地面に頭を擦り付けたくらいだ。
切羽詰まった マリ の意味不明な言動に、試験官である ルグサ も状況に追い付けなく困り果てていた。
「わかりました。 じゃあせめてルールだけでも変えてください! うち、実技で満点取らないと筆記で死ぬんですぅ!!」
ここぞと、マリ はルールの改変を求めて目に涙を溜めて駄々を捏ねる。
「そうは言ってもなぁー、あ、わかったよ、5本じゃなくて4本! これでどう!」
「うえぇーーーん」
マリ は本格的に泣き出してしまった。
「ちょっ、ちょっと... 泣き止んでくれ...」
「もう、この際ぶっちゃけちゃいます。 うち強いです! あなたを除いて誰にも負ける気がしません! 試験官チェンジを求めますぅ!」
マリ は必死だ。 恐らくあの二人の少女は高得点を叩き出すだろう。
に比べて、自分は一本取って100点すらも厳しい条件だろう。
試合が開始した瞬間にズタボロにされる未来が目に見えてる。
マリ は喚きながらも必死に頭に考えを巡らせるが、この場を切り抜ける方法は見つからない。
「うぅ。 試験が始められない... 」
ルグサ も額に手を当てて、困り果てていた。
そこで マリ は過去の戦いを思い出す。
すると、自分は一本取れているじゃないか。
ルル や カーディナ との戦闘で生まれた隙を突いたというのもあるが、未来において確かに自分の戦鎚は彼の型に直撃させた事実はある。
「一本... 一本取れたら満点ください」
「んんんー。 そんな勝手にルール変更してたら、僕さ理事長に怒られちゃうんだ、4本が僕の譲りに譲った条件さ、勘弁してくれ!」
マリ は一縷の望みも拒否され、がくり と落胆する。
「いいじゃないの、そもそも試験官がアンタっていうのがイレギュラーじゃない。 アンタから一本取れただけでも、大したものよ」
不意に入り口からの闖入者にかけられた声。
マリ は何事かとその声の方角へと首を向けた。
そこに居たのは、その佇ずまいからは優美さを感じさせ、長く綺麗なブロンド色の髪を後ろに垂らす美しい女性。
マリ でも、その人物には心当たりがある。
昨日、ルグサ の隣を歩いていた少女。
賢者を操り、大量の虐殺を繰り返す狂人。
セレベス王国王女 セレナ・セレベス。
自分たちが倒さなければならない "敵" だ。
助太刀を頂いたとわかっていても尚、マリ は自然と目に力が入る。
そんな マリ の視線を受けて、セレナ は パチリ とウインクを送ってきた。
マリ は自分が彼女を睨んでいたことに気付き、すぐに目を逸らす。
「セレナが言うなら、それでもいいかな。 セレナ? きちんと、お祖父さんを説得しておいておくれよ?」
「うん。 まかせておいて」
ルグサ の言葉を聞いて、彼女は王女らしく腕を組み胸を張って言った。
「よし、じゃあ始めようか?」
マリ は、思い描くセレナの人物像と目の前の人物との差異に困惑しながらも、土下座の姿勢から立ち上がり、その困惑を振り切って意識を戦闘へ向けて集中するべく茶色い瞳を閉じた。
敵の助太刀までもらい、ここまで妥協してもらったんだ。
自身の英雄としての矜持に炎を宿す。
身体中が冷たくなって行くのを感じ、心臓の音も徐々にゆっくりになって行き、その音が馴染むのを確認すると。
ゆっくりと瞼を持ち上げて、言った。
「はい、始めましょう」
その先ほどまでとは雰囲気が変わった マリ を目にして、ルグサ は息を飲んだ。
「セレナ、危ないから観戦ならモニターからだ」
目の前の少女は、もう先ほどまでの存在そのものがネタみたいな少女ではない。
決して、甘い闘いにはならないと察し セレナ に被害が及ばぬように避難を促す。
「あら、守ってくれないの?」
セレナ は、ニヤッ と小馬鹿にするように笑って言う。
「正直、自信ないかも」
「そこまでの相手なのね。 わかったわ」
ポリポリ と頬を掻きながら苦笑する ルグサ に朗らかな笑みを向け、セレナ は踵を返し入り口の方へと消えていった。
「行きます!!」
マリ は、セレナの姿が完全に見えなくなるのを見送ってから、両手を真上に掲げ全身の力を両腕に込める。
突如、虚空から戦鎚が現れ綺麗に掲げられた両手に納まる。
そのまま、マリ は勢いよく戦鎚を地面へと落としたのが、開始の合図だった。
「急に、武器が出てくるとな。 ってヤバッ」
虚空から魔法も使わず武器を取り出す珍しい攻撃を考察してると、マリ の戦鎚が落ちた地点から徐々に地形が崩れて行き、土の槍が地面から次々と生やしながら地中からなにかが一直線に自分に迫ってくる。
その槍に囚われるだけでも致命傷は免れない。
咄嗟にその軌道を外れるべく、横へ回避する。
そして、呪文を唱える。
「"精製"」
そう唱えると、目前に魔法陣が浮かび上がる。
ルグサ は、そこに手を入れてマリの物と同等の大きさの戦鎚を取り出し、地面を蹴って マリ の元に向かうがすでに マリ の姿は消えていた。
そして、軌道を外れたはずの地中から迫る何かが、真下にやって来ていたことに気づいた刹那。
地面から巨大な槍が生えた。
ルグサ は槍の大きさから横への回避は難しいと判断し、全力を足に落とし勢いよく地面を蹴り、槍が上がってくるよりも速く空中へと逃げた。
「ここだー!」
槍が伸びきり、先端まで出来上がりこれ以上伸びない事を確認したと同時に背後からの緊張感のない声に振り返ると、戦鎚を横に薙ぎ払いわんとする少女がいた。
ルグサ は、その絶対絶命の不意打ちですら、左手に構えた己の戦鎚で食い止めんと、戦鎚を振るう。
凄まじい衝撃が戦鎚を握る手を襲うだろうと一層と手に力を入れようとするが、戦鎚と戦鎚がぶつかろうとする瞬間、マリ の戦鎚が消えた。
そして、自分の戦鎚は呆気なく宙を薙ぐ。
相手の消えた戦鎚は、ルグサ の戦鎚との衝突を回避するとまたすぐに現れる。
だが、相手の戦鎚も自分の戦鎚と同じく宙を薙いだ。
途端、全身にを凄まじい風圧が襲う。
その風圧に耐えきれず、ルグサ の体は勢いよく飛ばされる。
--空気の砲弾か...?
宙を舞いながらも、その衝撃の正体を考察する。
そうするうちに、背後に壁が迫ってくる。
左手に構える戦鎚を空中で溜め、自分が壁に着くまえに戦鎚で壁を叩きつける。
そして、勢いを殺して とさっ と地面へと足を付けた。
が、少女は一抹の休憩も与えてはくれない。
着地した背後の壁から、また先ほどと同じく巨大な土槍が生えてくる。
流石の賢者、ここまでの怒涛の攻撃にもなんとか対応してみせる。
戦鎚で土から生える巨大な槍を受け止め、身体が僅かに後ろへ飛ばされる。
「いっぽーーーん!!」
すると、背後から声が聞こえ背中に衝撃が走った。
賢者はさすがに焦る。 後ろから殴られた事で身体が巨大な槍へと勢いよく近付いていく。
そして、戦鎚は巨大な槍の衝撃へと耐えきれず砕け散る。
迫り来る、己を貫かんとする鋭い鏃。
数秒後、自分が串刺しにされる未来が見えたのだ。
--この子、鬼だ!?
咄嗟に、禁止されているが命には変えられんと魔法を詠唱する。
「"虚無"」
途端、目の前の巨大な槍が消え去り、さらには マリ が今まで創造してきた小規模の槍も全て消え去った。
虚無、魔法を全て無かったことにする魔法。
「ふぅ、僕の負けだよ。 死ぬかと思った」
と、ルグサ は少女へと振り返って笑った。
その言葉を聞くと目の前の少女は にへらぁ と笑って、
「やったぁぁぁぁ! 満点ですね?!」
茶色い2つのお団子を揺らしながらぴょんぴょんと跳ねる少女を可愛らしくも思いながら、その言葉を肯定した。
「あぁ、満点だ。 知恵の間 に行くといい」
「はい!!」
そうして、マリ は ぴょん と飛んで、壁にめり込んだ戦鎚の下までいくと、それを引き抜き回収し、戦鎚を消してから、部屋を出て行った。
<マリ 総合戦闘の部 500点中500点獲得>
プロローグでは一人一人弱く見えてしまっていた気がしたので、 この、5話、6話でちゃんと英雄だったんだぞ! ということを証明できてたらいいなぁ....
大賢者様は、魔法ではカーディナに負け武術でもマリに負けますが、 2つを組み合わせて最強なのです!! と 言わせてください笑笑