王妃と側室
「うっわぁぁ、、、」
メリアが碧眼を潤ませながら形のいい眉毛を釣り上がらせています。そういう所も可愛いとは思うのですが、さすがにこの嫌がらせはなんて言うんでしょう。めちゃくちゃ引きました。
私の部屋の入口のドアに泥がご丁寧に塗りたくられ、部屋の中は泥棒にでも入られたのかという程めちゃくちゃになって、洋服類は全てつけられないレベルで切り裂かれています。
ショックを受けて泣くのが通常のところでしょうが、何だかすごいやばいなぁと、呆然としてしまうだけでした。
「リューリア様!!私は我慢なりません、どうして貴方ばかりが、、」
「いいんだ」
「しかし、!!!」
「あらあら、ハーフの子は片付けもできないのかしら。」
「王妃殿下、申し訳ございませんお見苦しいところをお見せ致しました。」
こいつはエルフの森の王妃です。エメラルドグリーンの髪色に血赤の傲慢そうな瞳。エルフの王族はシンデレラみたいだなと前世で仲の良かったゲーム友達が言っていた気がします。
「毎日のように騎士の元へ通うなど、、ハーフは卑しいわ。」
「失礼ですが、私は鍛錬を行っているのであって。」
「黙りなさい!!お前と私が対等などと甚だしいわ、娼婦の娘は騎士の情欲でも満たしてきたらどうなのかしら」
リューリアの母は確かにハーフではありましたが、実力で公爵にまで成り上がってきた努力家でもあり、側室ではありましたがそれに見合うようにずっとさらに努力を重ねていた目の前の王妃とは比べ物にならないくらいの女性でした。
ヒキガエルと聖女と対比されていたくらいです。
「私の母は半身ではありましたが、娼婦ではありませんでした、貴方よりも素晴らしい女性だったと思います。」
「つ、っ、つけ上がりおって、この女!!」
王妃様が手に持った扇子を振りあげ私の頬を強かに叩こうとしていました。
メリアが前に出ようとしますが肩を押さえ、数秒後私の右頬に衝撃がきます。
「それでご満足いただけたでしょうか」
「っ〜!!この、覚えておれ、、近日中に貴様に地獄を見せてやる」
踵を返し重たそうなドレスを引き摺り王妃は歩いていきました。
右頬から何かが滴りメリアが真っ青な顔で頬を拭ってきました。
「リューリア様、血が、傍付きなのに守れなくて申し訳ございません、」
ぽたぽた涙を零しながら頬の傷を魔術で治していました。
私はメリアの頭を撫でて、大丈夫だ、と笑って返すことにしました。
「リューリア様ご無事ですか!!」
「イリシアにダリアート、どうしたのだ。」
「貴方の部屋から大きな物音が聞こえて来たもので、、」
「、、少し嵐が通り過ぎただけだ、問題ない、鍛錬に戻りなさい。」
「はい、、」
近日中に地獄を見ることになってしまいました。
前途多難だなぁと、大きな溜息を心の中でつきました。