エルフの騎士と王女様
王の間を出てメリアと別れたあと、私は騎士団の鍛錬場へと自前の剣を携えて向かっていました。
大きめな日本刀のような剣で刀身も持ち手も鞘も光沢のある黒、銘を“ スルトル ”という王妃様曰く呪われた魔剣ということです。
私の厨二病心をくすぐる素敵な剣をありがとう、と微笑みながら歩いていました。
正直この純白な公務ドレスにはいい具合にこの黒い剣が映えるのです。
リューリアの細い体躯が無骨な剣のおかげでより強調されるのでこれで良かったと言えるでしょうええ、そうです。
「リューリア王女が来られたぞ!お前ら気を引き締めろ!!」
「はっ!!!」
公務で彼らの訓練の手伝いとは言え、基本はここで見ているだけなのですが、リューリアは自らを鍛えるために訓練に参加していたのです。
スチル情報ですが、試合では訓練用の木剣だろうと自らの剣だろうと圧勝だったとか。
いやぁ、美丈夫が揃いも揃って汗だくで訓練している姿はなんとも込み上げてくるものがあるというかと、木剣で素振りをする彼らを眺めていると上から水が降ってきました。
「あぁリューリアか、すまんな!外に水を捨てていたんだ!」
口をいびつに歪め壺を抱えるのは第2王子のガリュシアです。
エルフの森を守りきれず焼き払われる際も殺されそうになる際も自分の身ばかり優先する臆病者のくそNPCです。
「平気ですガリュシア王子、」
不服そうに眉を顰め力を込めて窓を閉められました。なんであんなやつが頭がいいのだろうか、と首をかしげていると騎士団長が近付いて来ました。
「リューリア様、お怪我は御座いませんか。」
「えぇ、大丈夫よ気にしないで、訓練に集中なさい。」
心配げに眉を顰める騎士団長、ゴツめのイケメンおじ様です、よく見ると騎士団の騎士達も私を見ています、ううん恥ずかしい。
もう一度、大丈夫である事を伝え騎士団長に戻ってもらいました。リューリアはまぁ全員に嫌われているわけではないんだなと安心しました。
「リューリア様また訓練にいらっしゃってるの、夜な夜な騎士の夜伽に付き合って居るってほんとかしら、」
「あんなに慕われているのですよ、そうに決まっているでしょう」
「いやぁね、ハーフの子なんてこんな所かしらあ」
貴族のご令嬢達がひそひそと私のことを噂していました。どんだけ股の軽い女だと思われているのでしょう。
ため息をついて剣に触れただけで令嬢達が小さく悲鳴をあげて逃げていきました、私のことをなんだと思っているんだろう。
訓練の見えやすいベンチに腰掛けて剣の手入れをしつつ練習試合を眺めていました。リューリアはスチルで1人で訓練をしつつ騎士に声をかけられたら順に相手をしていくというのをしていたので私もそうすれば間違いはないでしょう。
鞘から剣を抜き刀身を眺めていると太陽の光を反射してキラキラと輝いていました。
今日は私を気づかってか手合わせを願う騎士はいませんでした。
なんで好きなゲームに飛ばされてまでこんな思いしなければと、若干悪堕ちルートに進みそうな思考に陥りましたが早く部屋に帰ってメリアに癒されてしまおうとふらふらと立ち上がりました。
「リューリア様!お待ちください!」
「あ、あぁ君は、、イリシア君」
「鍛錬が休憩時間に入ったのでお部屋までお送りしますよ、ご公務お疲れ様でした、」
騎士達が私に向かって礼を捧げていたので笑顔で手を振りイリシアの差し出した手を取りました、こんな姿も様になるんですからイケメンは凄いです。
「、あの、リューリア様、無理をなさってはいませんか、?」
部屋の前に着くまでは何も無かったので割愛します。ふとこんなことを尋ねられたので、少し驚いてしまいました。
「へ?いや、大丈夫、イリシアご苦労さま」
「ならいいのです、、はい、ご苦労さまでした」
そういえば、ゲームではリューリアに片想いをしている騎士がいたけど誰だっけ、と首を傾げながら部屋に入り濡れ鼠のような姿をメリアにめちゃくちゃ心配されたのは言うまでもありません。
その後、「なんですぐ戻ってこなかったんですか」などくどくどくどくど言われましたが可愛かったのでプライスレスというものですよ。