面倒事
目が覚めると手首を縄で括られ動けなくなっていました。
足には足枷がつきベットの上から逃げられなくなっています。なかなか丈夫な縄でちぎれません。
「目が覚めたな混血」
「ヒラリア‥殿?何故こんなことを」
「ヒイロのためだ、お前を手に入れたいと言っていたから。」
今頃メリアはもぬけの殻の寝室で気絶しているでしょう、早く戻って助けてあげたいです。
光の届かずさらに拷問器具があることも考えるとここは城の地下牢でしょう。
「私はその件はお断りしているはずだ、他のエルフを連れていけばいいと」
「ヒラリア達もそう言ったけど、ヒイロがリューリア様がいいって聞かないから。」
「これは君の独断か?」
「ううん、ヒイロがやれって、」
「君に手を汚させるのだな、君の主は」
「ヒラリアは、ヒイロが喜べば幸せだから」
病的なまでの彼女にさすがに寒気がします。縄も足枷も外れる気配がありませんしエルフがここに来る気配もありません。
「お前がヒイロにもっと従順になってくれればいい。」
ヒラリアが海の底のような瞳でじいっと見てきます。勇者への忠誠心と愛情だけでこんなことが出来るんだから恐ろしいもんです。この格好から察するに同人ルートの闇堕ちエンドになりそうな予感しかしません。
このゲーム一応R18版もあるものの私がやっていたのはR15くらいの残酷な描写に注意とかなんとかという感じでした。
なので、こういう展開は困るのです。
「ヒラリア殿はこんなことをしてヒイロ殿の評判がガタ落ちになるとは考えなかったのか?」
「そんなこと考えない。」
「彼は名声や地位を気にする人間だと思うけれど、仮にも一刻の王女を攫ったらどうなるんだろうか」
「うるさい、」
「私は彼の言葉に頷いたりしないし、正直に話すつもりだ、全て」
「お前を無理にでも頷かせればいい」
「どうやって?」
「この国を滅ぼす、ヒラリア1人でもこの森を焼くくらいはできる」
この子は私のことを、リューリア・エルブンガルドを買い被っているようです。メリアや騎士達を混血の私と関わっているだけで嫌味を言ったりする腐った国を、それでも王女として愛していると、本気で思っているのでしょうか。
「……はははっ、私がそんなことで言うことを聞くと思ったのか!!」
「なっ、、王女なら国が大事なはず、」
「戯け、私はこんな国早く滅べばいいと思っているさ、私の大事なものだけ隣にあれば充分」
「でも、そんな、だって」
ヒラリアが面白いくらい戸惑っています。そういえば彼女は精霊の国の姫だったことを思い出しました。精霊の国を魔王に焼かれ復讐のために、勇者とともに行くことを決断した少女。そうとう国中の皆から、家族から愛されていたことでしょう。
でも、
「王族でも混血なだけで、こんな扱いを受ける国だ、平民はどうなんだろうなぁ、純血の精霊」
「……お前みたいな女ヒイロのためにならない、早くヒラリアの前からいなくなれ」
「分かっていただいたようだ、拘束を解いてくれ」
ヒラリアが空中に手早く文字を書くと縄はちぎれ足枷は外れました。憎悪にまみれた表情で私を睨みつけてきます。
「早く戻ればいい。ヒラリアは、あんたみたいなろくでなしじゃない。」
私はその言葉を無視して、思い鉄製の扉を開け、赤くなった手首をさすりながら石階段をのぼりました。
ああゆう駆け引きみたいなのは私は苦手なのです。早く部屋に戻ってメリアに癒されたいです。
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「リアざま"ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「うわっ、メリア」
部屋に戻った途端涙でぐしゃぐしゃになった顔のメリアに思い切り飛びつかれしました。
「心配しましだぁぁぁぁぁ、リア様の魔力も気配も分からなくなってしまって!どこにもいらっしゃらないしっ、」
「はいはい、分かったすまない、大丈夫だから」
ぐすぐすと子供のようになく彼女はやはり可愛らしいです。
手首の怪我は後で見せようと思います。
これ以上大切な人を心配させては困るので。