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忘却の姫と灯火の弔歌

作者: ゔぇるる

 今朝の夢に出てきた内容をそのまま書き起こしました。

 稚拙で在り来りな物語ですが評価頂けますと幸いです。

 綺麗な満月が辺りを照らす晩。エルフの少年は旅の途中、湖の畔で一人悲しみに暮れる少女と出会った。


「もしもし、お嬢さん。そんなに泣いていたら、可愛い顔が台無しだよ」


「話しかけないで。私、貴方のような軽薄な人が嫌いなの」


 突き放す少女に少年は嫌な顔一つせず夜が空けるまで少女の隣に付き添った。


 少年の優しい語りかけに最初は口を噤いでいた少女も次第に口を開くようになり、夜が空ける頃には笑顔を見せるようになった。


 少女は最後まで湖畔で一人泣いていた理由を話す事は無かったが、別れ際に少年と一つの約束を交わした。


 その日からは少年と少女は毎日のように出会い、共に楽しい日々を過ごすようになった。


 そうした日々の中で少女は短く一言告げた。


「私、この国のお姫様なの」


 その言葉に少年はあまり驚かなかった。少年は少女の綺麗な服装や上品な仕草に薄々気づいていたという。それを聞いた少女は少し悔しそうな表情をした後、笑顔を見せた。


 自分の正体を知っても尚、変わらない優しさを向けてくれたことが嬉しかったのである。それからも変わらず、少年と少女は毎日のように楽しい日々を過ごした。


 しかし、そんな幸せな長くは続かなかった。


 少年は魔女の呪いにより不治の病に罹っており、残りの寿命は幾ばかりしかなかったのである。


 それを偶然にも知ってしまった少女は激怒した。何故自分に話してくれなかったのかと。涙を流しながら少年を責め続けた。少年はただただ黙ったまま少女の頭を優しく撫で続けるだけだった。


 そうして時間は過ぎ、とある日の朝。少女はいつも少年と待ち合わせしていた場所に、息も絶え絶えに走って向かった。少女はなんとなく嫌な予感がしていたのだ。


 そして、その予感は的中したのだ。辿り着いた先には少年の姿はなかったのである。


 いつも待ち合わせる時、少年が歌を口遊みながら座っていた切り株には姿はなく、代わりに一通の手紙が置いてあった。


 少女は手紙を手にとり、切り株に座った。手で胸を抑え、乱れた呼吸を整えた後、震える手でゆっくりと手紙の封を解く。中には少年の字で少女に宛てた内容が書かれていた。


 少女と過ごした日々はとても楽しかったこと。


 少女がお姫様だったことに本当は驚いていたこと。


 病気を隠していたことについての謝罪。


 最後に、旅に出るため別れを告げることが書かれていた。少女はくしゃくしゃに顔を歪め、ボロボロと大粒の涙を零した。初めて少年と出会った時よりも激しく泣き崩れた。


 手紙の最後の一文には


「僕のことは忘れて、どうか幸せになって欲しい」


「僕と君の最後の約束だ」


 少女は溢れる涙を腕で無理やり拭い、走った。


 少女にとって何よりもかけがえのない日々を忘れられるはずがなかった。


 少女は手当り次第に少年を探して回った。少年と共に過ごした思い出のある場所を探した。けれども、少年の姿は見えず、逸る思いだけが募っていく。


 やがて日も暮れて、夜が辺りを包み始めた。少女の膝や掌には転けた際にできた切り傷が幾つもできていた。


 最後に少年と初めて出会ったあの湖畔へ行こう。おぼつかない足取りで湖へ向かっていると、森の奥から歌が聞こえてきた。少年の歌だ。


 少女は最後の力を振り絞り、声のする方へ走る。


 草木を抜け、開けた視界の先には湖畔の橋に一人涙を流しながら歌う少年がいた。


「もしもし、お兄さん。そんなに泣いていたら、ただでさえ冴えない顔が台無しよ」


 驚く少年を構わず、少女は少年を力いっぱいに抱きしめた。もう二度と離してしまわないように。


 暫くして、何も喋らなかった少年はゆっくりと少女の頭に手を置いた。少女が悲しい時にいつも慰めてくれた時のように優しく撫でた。


 そうして少女の嗚咽が止んだ時に少年は言った。


「どうして、探したんだい」


 少年に抱きかかえられていた少女は不機嫌そうに言った。


「全て貴方のせいよ」


 少女の物言いに少年は困ったように笑った。つられて少女も笑う。


 少女を大きな樹木を背に腰掛けさせた後、少年は樹木の隣に置かれていた大きなリュックから医療箱を取り出し、少女を手当てした。


 少年の全ての荷物が入っているであろうリュックを見て、少女は胸が苦しくなった。本当に去るつもりでいることが分かってしまったからである。


 少女は行かないで欲しいと訴えた。これからも共に過ごして欲しいと。そしてずっと胸の内に秘めていた少年に対する想いのことも。


 しかし、少年は首を縦に振ることはなかった。


「貴方が今日ここで死ぬのなら私も湖に身を投げて死ぬわ」


 少女はそう言った。少女の強い決意を秘めた瞳に射抜かれた少年は頬を掻き小さく溜息をついた後、少女の手を引き、強く抱きしめた。


 突然、湖畔一帯が輝きに包まれた。


 彼がいつだったか、この湖で歌っていた歌詞にあった精霊の謳歌というものだろうか。


 二人は精霊の瞬きに包まれながら最後の夜を過ごした。

 今回の作品は語り口調というかプロット段階のように話の本筋に触れることしか書いていません。少年少女たちの心理描写や細かい風景もサイドストーリーのようなものも一切書いていません。

 個人的にこれは未完成だと思っており、いつかちゃんと文章に起こし、あの二人の大切な気持ちや日々を丁寧に描写していきたいです。


 それと一応ですがもしもの話、所謂ifのような物語も考えてはいます。

 もしも、あそこで少女や少年が別の行動をとっていたら、未来は変わっていたのかもしれない。そう思い書き綴っている物語があります。

 投稿するかどうかは未定ですが、自己満足用に書きあげるつもりではあるので頑張りたいと思います。

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