嫁二人
突然の来訪に二人はかたまる。
神々しい雰囲気に、ナインは見知った顔をみて思わず声をあげる!
「エデン?」
「久しいな、ナイン」
エデンは今世の名前を呼びながら微笑みを浮かべて声をかけてきた。後ろには照れくさそうにまだ出会ったことがないクラウディアがいた。
目の前に現れた二人の女性を見てリオは顔を無表情にかためる。
リオは本来大事な者といるときは少数であうのが好きなタイプだ。
故に邪魔されるのは不機嫌になる。
炎帝は炎を司る帝、故に。
「うちの息子になにか?」
冷徹かつ烈火のような怒りを出すのも仕方ないのである
「まあ、落ちつけ、義母上」
「ああん!?」
エデンの言葉にリオはがたりと立ち上がる
ここで予期せぬ闘いがはじまった。
爆発音が響くなか一人の軽薄な金髪の男が笑う。
「んだぁ?ナインは母ちゃんに会ってたんじゃねえんか?」
路地裏のけして品行方正とはいえない仲間達と一緒に酒を飲む、マクスウェル家の次男セカンド。
マクスウェル家の兄弟で裏で有名なのはセカンドだろう。
軽薄でありながらどことなく神聖な雰囲気を纏うが、実は裏の世界にも顔が効く。
「ナインちゃん、ママにはじめて会うのよね」
目の前の銀髪でお団子頭をした狐目のどこか蠱惑的なチャイナドレスを着た美女がにこにこ笑う。
「兄貴としては心配か?」
赤いバンダナをつけたガタイのよい男が笑う。意図的印象を薄くしてるのが逆に印象的だった。
「まさか、腕ならもう俺らを越えてるよ」
セカンドは手元にある自らの手で冷やした瓶ビールをあおりながらくすくす笑う。
「まあ経験は甘いとこはあるが、あいつはいい子だからな、悪い事教えてもいいんだが、妹達に嫌われるのわなあ」
「そんなタマかよ」
「ゲイン、妹は可愛いもんよ、弟も可愛いが、ナイン以外はくそ生意気だな」
セカンドは黒い煙草に火をつける。
「それ、薬煙の一番上のクラスのじゃない、頂戴」
「シャオメイ、お前も稼いでんだろお?まあいいけどよ」
そういうとセカンドは懐から黒い煙草をとりだすとシャオメイと呼ばれた女に渡す。
「それより、炎帝が暴れるんじゃないか?」
ゲインと呼ばれた赤いバンダナの男ゲインが言うとセカンドは肩をすくめる。
「今王都には俺と兄貴とナインがいるんだぜ?」
「心配してもしょうがないことか」
セカンドはにやりと酒をあおる
「ほっほー!!いくら長命種としての力を抑えてるとはいえ義母上は素晴らしいな!!」
エデンは炎帝の発生させる蒼い炎を見ながらくすくす笑う。
「いきなり現れてナインの嫁だなんてなんなんだ!!お前は!!」
リオは蒼い炎を身に纏いながら怒りを隠さずに目の前の黒髪の女に突き進む。
「今更ナインちゃんに驚きはしないけど、炎帝さんがナインちゃんのお母さんで、あの子達がおしかけ女房的なものでいいかね」
スコラはナインの隣で面白そうな顔をしながらやり取りを見ている。
「…おかみさん、落ち着いてるね」
「何があってもナインちゃんがなんとかしてくれるしね、でもあの子らと何かあったからこうなってるんだろ?」
スコラの言葉にナインはさすがに転生で世話になったまでは言えずに苦笑で返す。
「まあ、彼女達には恩があるしね(まあ恩以外もあるけど)」
「それでどうするんだい?」
「母さんにちゃんと話すさ」
そういうと同時に空間を一瞬で氷結させる。