アーサー王
創世国シュベルク国、この国は殆ど軍を持たない、陸海空軍と三軍はあるが、陸軍は近衛騎士団と王直属の騎士団しかなく、海軍に至っては元海賊という荒事をずっとしていたようなならず者を雇い入れている、空軍は竜の加護を得た竜騎士から編成される竜騎士軍。
アーサー王は量より質を求める人物であり、彼自身も人外と呼ばれるだけの力を持つ人物である、おわかりだろうか、その人外たる人物が信頼を置いて軍として編成している、その意味が。
王都シュベルク
会議室
「皆、良く集まってくれた」
白い部屋に円卓がある質素な部屋に三人の人物がいた。
「アーサーさんがうちらに声かけるなんて珍しいねえ」
紫色の髪をのばし酒瓶を抱えた海軍服を身にまとい顔を赤ら顔にした胸の大きい美女がクスクス笑い
「…此度の事は王の逆鱗に触れた御仁が?」
白髪の髪をオールバックにした眼光するどい老騎士がそう呟くと
「王様怒らせたのバカね」
蒼い髪をツインテールにした蒼い鎧を着た少女が答える。
「そうだな、この戦はこちらに正義がある」
アーサーはくすくす笑う。
「ダチのリクトが殺られた、娘はこの国にいる、こいつぁやることはきまってるよなあ、ライザ」
「蹂躙だね」
ライザと呼ばれた紫色の髪の女は笑う。
「共存共栄を阻むおバカには何をするべきだ?リーベルト」
「王の剣で切裂くのが賢明かと」
リーベルトと呼ばれた老騎士は憮然と言い返す。
「リンネ、やれ」
「了承」
リンネと呼ばれた蒼い髪の少女は頷く。
「蹂躙のはじまりだ」
アーサー王は狂気の笑みを浮かべる。
「ふふ、これでアーサーも重い腰をあげるわね」
浅黒い肌を持ち碧の髪を持ち見る人全てが振り返るような美女は赤い肉塊の上でクスクスと笑う、それはこの国の国民であった者達、国全体全てにこの肉塊が鎮座してる。この魔族の国イノセントはもうすでに機能してはいない、もうすでにこの狂った女に滅ぼされてしまったから…。
「はい、終わったよ」
「かたじけない」
治療が終わり目の前の犬の獣人に声をかける。
「セトさんだっけ」
「左様でございます、こちらのリト姫の家臣である、もっとも私以外の家臣は皆リムルめなる魔王に殺害され私のみが」
悔しそうに歯噛みするセトにナインは頷きながら
「とりあえず御飯食べなよ、フィリップ、料理お願い、僕は他の皆を治療してくるよ」
「了解しました!!」
「セト、とりあえず御飯食べましょう、それから」
「姫…、わかり申した」
「この豚の丸焼きおいしいね、なんて料理?」
「名前なんてないですね、でも僕の地元ではショウガと醤油を絡めさせたたれをつけながら丸焼きなんでマルトンとか呼びますね」
「まんまな言葉だね」
森に入って仕留めた豚三頭を内臓処理をして丸焼きにした料理を皆で食べて落ち着いた事から事情を聞くと、魔族の国イノセントは強硬派と穏健派の二大派閥がありその穏健派の筆頭の魔王リクトが打ち取られその際に家臣も処刑、連なる穏健派もまた処刑、そのまま姫と生き残りの同族を救い出し命からがら逃げてきたという話だ。
「見たこともない魔法?」
「左様、全ての力を喰らうような妙な力であった」
「喰らうか」
「それに筆頭であった女魔王リムルはそこまで強い魔王ではなかったはずでござる」
ナインはその言葉にふむと頷く。
「多分、アーサー兄さんの事だから頭に血のぼってるはず、未知の術式ならちょっと心配、フィリップ、任せるよ、多分、フレアさん達もそろそろ来るとおもうから」
「え!?ちょっとおお!!」
フィリップの叫び声を聞きながら転移する。
「ああ、愛しいアーサー、会いにきてくれたのね」
「俺は面倒極まりねえがな」
本来この世界には存在しないはずの戦車群や恐竜を滅ぼし相対する。
「間違いねえな、変質しやがったな」
外側でライザ達が派手に戦ってる中でアーサーは目の前の女魔王リムルを見ながら過去の魔王との対峙を思い出していた。
喰らう者、名前を言うならばその名前が適しているだろう。主に負の情念を得てその感情を喰らい世界に仇名す寄生体、中には感情を生み出しそのまま宿主を喰らい成りかわる事もある。
「あははははははは!!!アーサー!!私の大好きなアーサー!!」
「耳障りだよ!!お前みたいな狂った奴に好かれるのは!」
アーサーが今まで戦った事のある喰らう者は生命力をそのまま喰らい魔力に変換していた、リムルもまた以前の魔力と違い禍々しさが増しているのを見ると
「宿主になっていると思うのが当たり前だな」
アーサーは白く光り輝く剣を抜き放つと
「光れ!英雄の剣!!エクスゼリオス!!」
叫ぶと同時に光り輝いた!!
「嫌な空気だな」
ナインはたどり着いた魔族の国イノセンスに目をしかめる。
「まるで地獄みたいだ」
所々に肉塊があり、顔見知りのアーサーの部下や騎士団が戦ってるのをみると明らかにこの世界にいるはずのない恐竜や戦車が現れている。
「世界の歪みも感じる、何が起こってるんだ?」
「少年、これは産声だよ」
「いきなり声をかけてきたのに驚いたけど、お兄さんだれ?」
「そうだね、君の敵になりうる存在かな?」
突然隣に現れた黒いタキシードの着た黒髪の赤い目をした長身の青年はにこにことナインを見る。
「結構、僕も気配とか気づくのは得意な方なんだけどな」
「ああ、それはしょうがない、僕はこの世界の存在とは少し違うからね」
「なら仕方ないか、多分次元とかそんな感じでしょ」
「はは、賢い子は好きだよ」
「それで敵になりうるかもって?」
「可能性の話だよ、もしかしたら敵にならないかもしれない」
「なんだそりゃ」
「ふふ、さて僕の名前はミカエル、君は?」
「ナイン」
黒髪の男、ミカエルはクスクス笑うと
「さてこれから世界は混迷になるよ、世界は蝕まれる、君は破壊するか、救うかどちらになるか」
「意味わかんない」
「そのうちわかるさ、君臨者よ、幼き覇王よ」
「君臨者?」
「未だ自分の存在を知らずか、いいね、気に入ったよ、ヒントを上げよう」
「ヒント?」
「あの恐竜や戦車達を産み出したのは喰らう者、世界を喰らい遍く情報を取り込み吸収する存在が産み出したものだ、こちらでわかりやすく言うなれば下級というところかな?」
「何故僕に?」
「何来るべき時、出来たら君の味方でありたいからさ」
「意味わかんない」
「ふふ、今にわかるさ、さて顔見せは済んだ、またヒント、下級はバカが多くてね、悪食だ、際限なく何でも喰う、その先になにがおこるかな?」
「はやくいってよ!!」
ナインはそう言うと同時に姿を消す
「ミカエル、ヒント言い過ぎ」
グレーの髪のゴシックロリータの服を着た可愛らしい人形のような紅い眼の少女がため息をついて姿を現す。
「彼、敵になるじゃない」
「いや、そうとも限らないよ」
ミカエルはにこにこと笑う。
「どうして」
「彼は善とはいえないからさ」
ミカエルと呼ばれた男は笑みを深めて
「君臨者とは誰にも縛られないからこそ君臨者なんだよ」
「意味わかんない」
「まあ今は彼との友人になれるようにしようじゃないか、ガブリエル」
ミカエルはガブリエルと呼んだ少女を見ながらまた笑みを浮かべた




