第7話 気絶必須の修行
「う.....ん、ここどこだ?」
「俺の宿だ。随分起きるの遅かったな。ほら行くぞ、遅れちまう」
「ん、んん?」
起きた途端いきなりアルトが何か意味不明な事を言い出した。行くとか、遅れるとか。何言ってんだ、こいつ?
「は?行くってどこに?」
「決まってんだろ、カールの弟子になったんだから修行だ。あのジジイは弟子にした奴を毎回気絶させて、起きたらすぐに修行させる。用があったって逃がしちゃくれねぇぞ」
「てことはアルトも...」
「ああ、お前が気絶した後、一撃でな」
「早く行かないとしばかれるぞ。だから俺は弟子になりたくなかったのに」
アルトは面倒くさそうだな。俺もこんな事になるなら弟子になんか.....いや、やっぱこれしかないか。あぁ〜めんどくせ〜。
という訳で俺とアルトは準備を済ませ宿を出た後、カールの私有地らしい山に向かった。山までの道には魔物も大量に出てくる。なのでしっかり魔物避けを使いながら進む......つもりだったのだが、アルトが言うにはカールの弟子になった後は魔物避けを使ってはいけないらしい。ヘルトは普通に使ってたのにな。修行が終われば使ってもいいのかな?
まあいい、魔物避けを使えない限りは魔物を倒して進まなければならない。だが、俺は戦う手段がないしアルトも人以外は専門外だし、結局見つからないように進んでいった。今思えば、ヘルトに送ってもらえば良かった。
「さて、いよいよカールのいる別荘に着く。覚悟しとけよ」
「え、なにが?」
「着けばわかる」
アルトがなんか物騒な事言ってる。俺は何をされるんだろう。アルトも魔物がいた時より慎重に進んでるし嫌な予感しかしない。
「見えてきた、あれが別荘か」
と言った瞬間、背後から素人のドルフでも感じ取れる程の物凄い殺気を感じた。
「あ、終わった。絶対に後ろは見るなよ」
「う、後ろに何がいるんだ?」
やばい、足が震えてきた。怖すぎるだろ。まだ何がいるか見えた方がマシだ。もう、本当に何なんだよ......。
「で、これってどうすればいいんだ?」
「静かにしてろ、このままカールがいる別荘に向かう。ゆっくりな」
「りょ、了解」
アルトも随分ビビってるな。レジスの時に俺を置いて逃げたんだ、いざとなったら身代わりにでもするか。はぁ、何でこんなくだらないこと考えられるくらい冷静なんだろう?もうすぐで圧倒的な強さのカールのいる場所に着くからか?そうか、あの爺さんなら後ろの奴倒せるか。なら安心だ。
「油断したな?」
「「な!?」」
背後から急所を一突きで気絶した。アルトも同時に。
「全く後ろに殺気のある敵がおると言うのに油断しおって。こりゃキツい修行をさせないとじゃな」
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「俺、気絶してばっかなんだけど」
背後からカールに再度気絶させられた後、アルトと一緒に別荘の前にそのまま寝かされていた。
「あのジジイ!もっとましな所に連れてけよ!俺でも流石に外に寝かせたりしねぇよ!」
「聞こえとるぞ〜」
「........すんません....」
おい、さっきの勢いはどこいった。とまあやっと着いたわけだし、少し休みたいな。
「で、カール。いつから修行するんだ?」
「いまからじゃよ?」
「へ?」
「えー、今から修行を開始する。弱音は吐くなよ」
「ちょ、ちょっと待っ......」
いきなり修行が始まった。俺はまず、戦う為の体力すらないからひたすら走らされた。アルトはなんか知らんが、殴られまくってた。剣とか斧とか振りまくってた筈なのになんでそうなった。
ともかく、俺とアルトはこの場所に来るだけでも大変だったのにいきなりハードな修行させられ、殴られたりで今日はボロボロになった。
「やっと.......終わった......こんなの...続けんのかよ」
「何を座っておるんじゃ?」
「え、ちょっと待って!まだ何かやるの!?」
「何をって、寝る場所と食料確保せねばいかんじゃろ。ああ、お前らは戦えんから食料確保は無理か。仕方ない、今日はこの家で寝かせてやる。明日は外だ。いいな」
「お、おう」
「はい、だ」
「は、はい」
焦った、やっと今日の修行が終わったのにまだやる事あんのかと思った。もう、もうーやだ。これ続けてれば強くなれるのは確実だけど先に体が壊れそうだ。
てかアルトはいつまで気絶したフリしてんだよ。カールの奴お前の事ずっと見てるぞ。あ、アルトとカールの目が合った。アルトがなんか言ってる。カールが怒って殴った。本当に気絶した。.......あいつバカだろ。
別荘は山の中にある割には意外と綺麗だった。外見は酷かったが。別荘じゃないみたいに。てかもう別荘って言えないだろこんなの。
山の中にでかい岩の塊があると思ったらいきなりカールが殴って、岩の壁壊して中に入っていった。こんな、岩の塊が、家だなんて思わないでしょ。魔物に見つからない為らしいけど。というか本当にカールは殴るの好きだな。若い頃は戦ってばっかりの生活でも送ってたのかな。
別荘でカールの取ってきた肉付きのいい魔物、ではなく動物を、調理して食べた。酒場のマスターをやってるだけあって料理は上手いみたいだ。
寝る前に何故か座禅を組んで座らされた。動いたら叩かれた。痛いけど、殴られるよりはマシだった。寝る時だけは平和で安心して眠れた。
明日は今日よりキツいんだろうな〜。気絶しないように努力しないと。
今回はいつもより早く進めたと思うので良かったです。
ちなみに次の話では戦闘シーン入ります。