第6話 弟子入り昏倒
カリムの酒場2階〜
1階は薄汚れた服を着た、いかにも危険と思わせる顔つきの者達がいた。だが2階は打って変わって綺麗な服を着て礼儀作法を整えたいかにも位の高そうな者達がいる。
場違い過ぎるでしょ、こんな綺麗な人達がいる場所で、ところどころ破けた服を着た俺。
合わない...ぜんっぜん合わない。
1階の人達の目つきも怖かったけど2階の人達の目は違った怖さがある。
「ここじゃ」
老人はドアを少し開けて首を突っ込みながら教えてくれた。部屋の中からは数人の話す声が聞こえてくる。
「え〜と、失礼しま〜す」
老人の後に緊張しながらゆっくりと扉を開けて入った。すると見覚えのある顔が並んでいた。
「お、やっと来たかドルフ」
「おそいよ〜」
「あれ?なんでここに?」
中にはヘルトとフロイとアルトが楽しげに酒盛りをしていた。3人とも酔ってる。フロイはあの歳で酒なんて飲んでいいのか?
「兵舎に行った後はいつもここに来るんだ。お前がどんな目にあったかは知ってるぞ、レジスに襲われたんだろ?」
「何だ、知ってたのか。ていうかアルト〜、お前何で俺の事置いてったんだよ。お前のせいで大変な目にあったぞ」
「悪い悪い、俺は自分の身が1番大事なんでな」
「薄情者!」
何てやつだ。人の事危険に晒しといて言い訳すら自分の為かこの野郎!
まぁでも助かったのは良かった。
「そういえばあんたの名前聞いてなかったな、
教えてくれよ」
助けてもらったりしたのに名前も知らない相手とか流石に、ねぇ?
「他人に名を聞く時はまず自分から名乗るのが礼儀じゃないか?」
「え?あ、そうなのか?なら、俺はドルフだ、よろしく」
いやいやいやそんな事知らんわ。こっちの世界に来てまだ1日と半分くらいしかいないんだぞ。まぁ言えないけど。
「わしはカールじゃ。お主強いのか?」
「へ?いや〜強いかはよく分かんないかなぁ...」
いきなり言われてもねぇ。攻撃を避けたりはした事あるけど、こっちから攻撃した事は1度もないし。う〜ん...やっぱり自兵連合とか言うくらいだし、強くないとダメなのかなぁ?
「おいおい師匠、まだドルフは戦ったことすらないんだから強いわけないだろ」
弱いって事は自覚してたけど、やっぱり普通に断言されると辛いわ。強いわけないだろってね...ちょっとね....うん。......ん?
「今ヘルト、師匠って言った?」
「ああ、カールは俺の師匠なんだ」
「この村に入ってからヘルトの知り合いにしか会ってない気がする」
「俺と一緒にいればそうなるだろ」
「まぁ〜そうなんだけどね。ていうかカールって師匠とか言われるくらいだからあんなに強かったんだな」
「あんな図体だけの男なんぞ余裕じゃ」
図体だけとか言われてるぞレジス。俺には筋肉の塊にしか見えなかったぞ。
「ドルフ、わしの弟子にならないか?」
「は?」
ん?弟子?いやいや、何でこの話の流れからそうなる?というか唐突すぎて驚くから。う〜ん弟子入りした方がいいのか?いや、いいに決まってるか。自己流でやるより弟子をとったことがある人に教えてもらう方がいいか。強くなりたいしね。逃げ回るのはもう嫌だし。心臓に悪いし。
「そ、そうですね。ならお言葉に甘えて」
「お前、焦ってる時とか緊張してる時はいつも敬語になるな」
ヘルトのツッコミは軽くスルーして。
「わかった。ドルフお前を弟子に迎え入れよう」
俺はカールの弟子になった。誰かに教えてもらうなんて初めてだからどうすればいいのかわからないけど、そこんとこはヘルトに教えてもらうとして。
「私も弟子になりたい!」
「え?」
忘れてた。この子完全に空気だった。あ、空気はもう1人いたか。
「おいおいフロイやめとけ。そのジジイは手加減ってもんを知らねぇから」
「コラ!ジジイとは何じゃ!アルト!」
「別に俺は弟子じゃないから呼び方なんて何だっていいだろ。それよりフロイ、弟子になるのはやめとけ。ヘルトも毎日ボロボロになるくらい酷い目に合わされてたからな」
「え?そうなの?ならやーめた」
「な、何じゃと!言わせておけば好き放題言いおって!許さん!アルトもドルフの修行に付き合ってもらおうか!」
何かアルトも一緒に弟子入りするみたいな話になってるんだけど。カール〜、本人は青ざめてるぞ〜。
「は?な...何言ってやがる。弟子になんてなるわけないだろ」
「問答無用じゃ、絶対に弟子にしてやる!」
カールが暴れるアルトを押さえ込んで背中に指で何かを書いている。本当に何やってんだこの2人は子供じゃあるまいし。
「よーし書いてやったぞ!弟子の印!」
「な、何!?んなモン書いてやがったのか!クッソ、何て事しやがる!消せ!クソジジイ!」
「ドルフにも書いてやろう。ほれ、背中を出せ」
え、ちょっと怖いんだけど。何でそんな顔してこっちに来るの。ちょっと、待って待って!怖い!本当に怖い!こっち来ないで!
「そんな怖い顔されたら出したくないんだけど」
「そうか、ならお仕置きが必要じゃな.....」
カールは下を向きながらゆっくりと近づいてきた。明らかに顔がおかしい。まるで狂気を孕んだような顔だ。
「まずい!鍛えられてもいないドルフにこれは!」
え!?ちょっと、何!?それどういう事!?俺じゃ耐えられないって事!?待って!やめて!もう目の前じゃん!ああああ!?!?!?!?!?!
「眠れ......」
ドルフはカールに指を何度も突かれて気を失った。
話が進まなすぎてまずい気がする。
もっと進めないとこの小説が終わらない。