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透明な人

作者: saki

彼女は泣いていた。

彼女は僕の事を好きだと言った。

僕は気持ちには答えられないと言うと彼女は眉をハの字にさせて、精一杯泣くのを堪えてから、静かに目に溜まった雫を頬に伝わらせていた。


とても透明で綺麗で、彼女の猫目の真っ直ぐな瞳が刺さる

僕はどうしようもなく、何するでもなくただ彼女を見ていた。

その時の僕は彼女から見たらとても頼りがないように見えただろう、困惑しでもなにも出来ないからただ自分の目の前に立っている。そうきっと思っただろう。


そして彼女はまた、と精一杯の笑顔で言って静かに寂しげに帰っていった。

きっと彼女は家に帰って、お風呂に入ってベットに横になってから、全ての準備ができてから泣くのだろう。

思う存分泣いて泣いて、泣いて、そして眠りに就き、朝になったら重い体を起こして今日の事は忘れてまた元気よくふわふわとスカートを揺らしながら歩き出す。


彼女は僕に好きだと言う。

一昨日放送していたハリーポッターに似てると言う。

頭がいい人と、無駄がない人と、透明な人だと言う。


僕はその度に違うよ、と否定する。



結局どれもこれも僕じゃない。

彼女の中の僕だった。


彼女は目の前にいる僕を見ようとはしなかった。


彼女は僕と話す時いつも遠くを見ていた。


その度にただ悲しかった

僕は目の前にいる彼女だけを見て、想っているのに

彼女は目の前にいる僕ではなく、彼女の中の僕への理想像しかみなかった。



学食へは久しぶりに足を運んだ。

ただコーヒーを飲みに来ただけだけど。

窓際の席に座り外を眺めると、風が吹き茶色い落ち葉たちが小さく踊った。

11月も下旬に差し掛かる

外に出たらきっと寒いだろうなあ。


彼女は冬になるとグルグル巻いたマフラーに顔をすくめ、寒いねーと、30分に一回ぐらいの頻度で言うのだ。


貴方って本当に透明な人よ、白じゃないの。不純物なんてなにも入ってないよ。ただ透き通っているの。


コーヒーの中にミルクを零す。勝手に渦巻いてだんだん茶色に変わっていく。


透明な人、か

いつか僕も透明な人になりたい、と思った。



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