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肉まんが食べられないとこうなる


「はぁ、はぁ……す、すごかったです……あなたの投げキッス……」

「当然だ。2000億万発ぐらいしてやったからな」


 フローラを抱き終えた立花は、グチャグチャになった兵士達の死体漁っていた。


「ちっ……どいつもこいつもコインしか持ってねぇな」

「あ、あのっ」

「フローラ、コインはお前が持っていろ」

「は、はいっ」


 立花がフローラに渡したコインの総額は、この世界で半年は豪遊できるほどの大金であった。


「ちっ、こいつら全員メダルゲーム派かよ、カスが! 金になりそうなのは爪楊枝みたいな剣や槍に防具ぐらいか?」


 立花は血まみれの鉄の剣と鎧と盾を1か所に集めると、紙くずでも丸めるかのように全部まとめてクシャクシャにした。


「こんなもんか」


 兵士達が着ていた装備は、プレス機で圧縮されたかのような四角い鉄の塊となった。

 立花はそれを右肩に抱えて楽々と持ち上げる。そして紐で縛った槍の束を左肩に乗せた。


「さて、行くか」

「ま、待ってくださいっ!」

「待たん。俺の女ならさっさと来い」

「ううっ……」


 立花とフローラは、兵士達が出てきた茂みへと入ると、森の中の小道を進む。


「あの、どこに行くのですか?」

「まずはコンビニだな。中華まんが食いたい」

「こ、コンビニ? 食べ物屋さんのことですか?」

「ああ、美味いぞー ノーソンの中華まんはよぉ」

「農村にそんなのがあるんですか? でもきっと、食べ物はないかもしれません」

「なぜだ?」

「帝国の人が全部奪ったから……」

「さっきの鎧のチームか?」

「ち、ちーむ? は、はい、そうです」

「って事は帝国の頭をツブせば中華まんが食えるんだな?」

「潰す!? そんなのできっこないですよ!」

「なぜだ?」

「帝国には王国の人達ですら勝てなかったんです。私たちはただ踏みにじられるしか……」

「ふん、王国の奴らとやらは、もやし男ばかりだったんだろう。で、どこにいる?」

「えっ?」

「帝国の奴らだ」

「わ、分かりません……」

「ちっ……。さっきの野郎ども、一人ぐらい生かしておけばよかったな」

「ど、どうしてですか?」

「吐かせるんだよ! シマはどこで、(ヘッド)がどんなヤツかとか」

「なるほどです……」

「おーそうだ、ステ公、もっかい出てこい」


 立花がそういうと、空中にステータスウィンドウが出てきた。


「帝国の奴らがどこにいるか教えろ」


 ステータスウィンドウは消えて、今度はミニMAPが立花の前に出てきた。

 そしてそのMAPには立花達の現在地と、現在地から少し離れた街道に「←ココ 徒歩15分」と書かれていた。


「なるほどそこか、近いな」

「あの……誰とお話ししてるのでしょうか?」


 フローラが不思議そうな顔で立花を見た。


「ステ公だよ、ステ公。ほら、そこにいるだろ?」

「ごめんなさい、私には見えないみたいです……」

「そうなのか?」

「はい。……あの、質問していいですか?」

「何だ? 何が聞きたい?」

「あなたの、お名前……」

「ああ、そういえば言ってなかったな。俺は立花翔だ!」

「タチバナ・ショウさん」

「ショウでいい」

「はい、ショウさん! ショウさんは精霊も使えるのですか?」

「精霊?」

「見えない誰かとお話ししてたみたいでしたから」

「何を言っているかさっぱりわからん」

「そ、そうですか……」




  ◇   ◇   ◇




 立花とフローラは森を抜けると、フローラの住んでいた小さな村へと出る。

 だが、フローラの村は帝国軍に襲撃されてそこらじゅうから血の匂いが漂っていた。


「ひどい……ひどいよ……」

「ああ」


 立花とフローラは生まれ育った自分の家に入ると、そこには帝国の兵士たちに乱暴されたと思われる裸の女の死体が転がっていた。


「お母さん……」

「帝国の奴らの仕業か?」

「うん……私を逃がすために囮になって……」

「同意なく女に乱暴するとは許せねぇ、人間のクズだ」

「……」



 村々をガサ入れしたが、結局フローラの村に生存者は一人もなく、食べ物や金目になりそうなものはすべて帝国軍の手によって略奪されていたようだった。

 立花はフローラの母の墓を作って埋葬し終えると、フローラと共にMAPウィンドウに表示されている『←ココ 徒歩5分』の指す場所へと向かった。

 その場所は街道の要所で、そこには深い谷があり大きな吊り橋かけられている。

 この橋を通らなければ王都には行けないのだが、帝国はここに大規模な要塞を立てて占拠していた。




  ◇   ◇   ◇




「こんなところでたむろってんじゃねぇぞゴラァ!!」

「グボァァァァ!」


 いつの間にか要塞に現れた立花は、厚さ2メートルはある鉄門を、握りこぶしひとつでブチ抜く。

 そしてワラワラと集まって来た帝国の兵士達を、戦利品の爪楊枝のような槍(立花曰く)で次々と串刺しにしていった。

 それはまるで、焼き鳥の下ごしらえでもするかのようで、実際立花の周りには、兵士が串刺しになった槍がところかまわず突き立てられている。




 要塞内の異常に気付いた男が、城壁の上に登ってきた。


「何事だっ!」

「長官殿!」

「何事かと聞いておる!」

「わ、わかりませんっ! あ、あそこで、化け物が暴れまわっていますっ!」

「なっ!? 奴はなんだ!? ま、まずいっ! 魔術師隊長、いつもの魔術であいつを焼き殺せっ!」

「ははっ!」


 長官の指示は早く、的確であった。

 長官の命を受けた魔術師隊長の指示で魔術師たちは一斉に呪文を唱え始める。

 一部の高度な魔術にはホーミング機能があり、その魔術に一度狙われたら最後、回避する事は絶対に不可能!!! 

 しかもこの魔術師たちの業火魔術は、相手が絶命しても数時間は燃え続ける地獄の炎!

 それは強靭な魔人の肉をも焦がし骨まで溶かすのだ!!



 そんな事も知らずに立花が暴れまわっている間に、詠唱はついに8割を超えた。

 ここまで来れば、もはや立花が魔術師達をブッ殺して魔術は止まらない。

 あとは生み出された業火が立花を焼き尽くすのみ!!


「フハハハハハッ! 帝国がなぜ帝国なのかを思い知……グボァァァァ!」

「た、長官殿っーーー!!」


 要塞で一番偉い男は、突然飛んできた四角い鉄の塊に潰されて死んだ。

 その四角い鉄は、前に立花が紙くずのように丸めた兵士達の鎧や剣で出来ていた。


 だがもう遅い。

 飛んできた四角い鉄塊と入れ替わるように、今度は魔術師たちの業火が一斉発射され、

 火矢のように弧を描きながら立花に向かって飛んで行く!!


「うおおー! なんじゃこりぁぁぁ!」


 さすがの立花も飛んできた業火に驚き、兵士達を串刺しにした槍で業火を受け止める。すると、槍にささって絶命した兵士達が次々と炎に包まれた。

 絶え間なく飛んでくる業火に、立花は地面にブッ刺した兵士の串刺しをとっかえひっかえして受け止める。


「俺は焼き鳥屋のおっさんじゃねぇぞゴラァ!」


 立花に串刺しにされた兵士の遺体は嫌な臭いを放って燃え盛り、タレみたいに血がボタボタとしたたり落ちた。




「ば、バカな……帝国必勝の25連の業火魔術が、全て防がれた……だと」


 魔術師たちに動揺が走った。

 それもそのはず、防がれたショックもあるが、ここにいる魔術師たちにはもはやMPが無かったのだ。


「隊長、我々はもはや戦えませんっ! このままでは」

「総員、撤退用意……」


 魔術師隊長が撤退を指示すると、下っ端の魔術師たちは要塞の奥にある吊り橋へ、競うように逃げ出し始めた。


「逃げんじゃねぇぞ! ゴルァァァ!」

「ふはははッ!、戦うだけが戦ではないのだよ、さらば、化け物よ!」


 しかし、混乱で混雑する吊り橋の上には、早くも多数の兵士や魔術師でごった返しており、退却するのは容易ではなかった。

 しかもそこに立花がもの凄い勢いでやってくるのが見えるものだから、兵士も魔術師も大パニック!

 多くの者たちが恐怖で失禁し始めた。



「クッ、もはや仕方があるまいっ! ここは私に任せろ!」


 一直線に向かってくる立花の前に、失禁した1人の男が立ちふさがる。

 魔術師隊長だ!!


 魔術師隊長は帝国でもたぶん7本ぐらいの指に入る優秀な魔術師で、30人ぐらいの王国軍をたった一人で蹴散らしたと云われるほど恐れられた男だ。


「第七魔術師団長、煉獄の…」

「邪魔だザコがぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「グボァァァァ!」


 男は自分の名前すら名乗る事も許されず、お空の星になった。


「ひぃぃぃ! ま、魔術長がぁぁ」

「なんて名前か忘れたけど、魔術長がやられたっ!」

「前はどうなってるんだっ 早くすすめよっ!」


 吊り橋の上は逃げる兵士や魔術師でさらにごったがえし、とうとう味方同士で押し合いになって崖下へ転落するものまで現れた。


「あああああ……もうオシマイだ……こ、降伏だ」

「そ、そうだ、降伏するしかないっ」


 吊り橋前で逃げ遅れた後方の兵士達はついに戦意を失い、次々と武器を捨てて立花に土下座をし始めた。


「お、お助けくださいっ! 降伏します」

「あ゛あ゛ん? 今、なんつった? こうふく(・・・・)だと?」

「は、はいっ降伏です!」

「テメェら……。村や女を襲って幸福(・・)だったってんのか!? 」

「えっ?」

「ちっ、人間じゃねぇな……並べ」

「ひ、ひぃぃぃ!!」

「死にたくなければ縦に並べってんだよっ!」

「は、はいいっっ!」


 立花の迫力に失禁寸前の兵士たちは機敏な動きで整列した。


「よし、整列したな」

「したであります!!」

「なら死ねえぇぇぇぇぇぇ!!」

「グボァァァァ!」


 立花が握りこぶしを振りぬくと、整列した兵士は元より、風圧でその後ろにある吊り橋までもが粉々になって崖下へと落ちていった……。

 頑丈に作られたこの吊り橋の崩落は、現代で例えるならば、東京湾アクアラインが崩落するほど衝撃的な出来事であった。




フローラちゃんはどっか安全な場所で隠れています。

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