間章 彼らは集いて何を思う
ここは中央都の一室。
男が座っている目の前には、三人の男と少年の姿があった。向こう側が透けて見えている。四人の男は実体ではない。魔力によって作動する投影機で姿を映し、別の場所に設置した受信機で映した姿を投影しているのだ。唯一この部屋で実体なのが、四人の前に座る男だけだった。
「睦月は無事、彼女から鍵を受け取ったようだな」
赤褐色の髪をした男が口を開いた。それをかわきりに、各々が話し出す。
「まだ使うことは出来ないけどね」
青い髪の少年が意味深な笑みを浮かべている。
「今使うと、間違いなく無事ではすまないだろ」
緑の髪の男が固い声で口を挟む。
「時期は、鍵が指し示す。心配しなくてもいい」
正面に座る白い髪の男が締め括った。
「……それまでの修行は、伊織がきちんと行うだろう。心配しなくても大丈夫だ。睦月は彼にとっての大事な家族で、弟子だ」
最後に、黒い髪をした男が正面に座る男の言葉を繋いだ。言葉の雰囲気から、黒い髪の男は伊織をよく知っているような口振りだった。
「それにしても、綺麗だったよね。睦月ちゃん」
四人の中で一番幼さが残っている男が、思い出したように言った。他の四人も彼に賛同する。だがそれよりも、五人が驚いたことが他にあった。
「……それにしても驚いた。睦月が言った、あの台詞」
銀に近い白髪の男の言葉に、他の四人も頷く。
『王は民のために存在する。戦う術を知らない民の盾になるのが、王の一番の役割なんだ。民が認めない王は、決して長続きはしない』
かつて……ある男が、五人に言った台詞である。
長い間、彼らはその台詞を聞くことはなかった。それが、この世界に来て間もない、それもたった十四歳の子供が、彼と同じことを言ったのだ。驚くなと言っても、無理な話だろう。だから、彼らは余計期待する。
睦月こそが、自分たちが、長い間待ち望んでいた人物かもしれないとーー。
「まぁ、時間は長いことある。ゆっくり確かめればいい。それに睦月には、やってもらわなくてはならないことがある」
正面に座る白い髪の男がそう告げると、他の四人は皆複雑な表情をしながら頷いた。
最後まで読んで頂き、本当にありがとうございましたm(__)m
これにて、「忌み子とあやかしの国」は完結しました。
初めての小説が無事完結出来たのも、応援して頂いた皆様のおかげです。本当にありがとうございましたm(__)m
常世での睦月の冒険はこれで完結しましたが、まだまだ冒険は始まったばかりです。
終わりは始まりへと続きます。
詳しくは、「魔法使いの修行のために異世界に放り出されたのに、魔術師や僧侶じゃなくて冒険者になりました。〈仮免〉ですが」をお楽しみ下さい。
感謝の気持ちを込めて。
ありがとうございましたm(__)m




