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第十七話 真実

 今回は少し短いです。



 伝書鳩を飛ばした日の昼過ぎ、茜が目を覚ました。


 ベッドからは下りれないが、どうやら体は起こせるみたいなので、私たちは茜のいる部屋に集まっていた。


 顔色は青白いが思ったより大丈夫そうで、ホッと胸を撫で下ろす。本当に良かった……。


 目が覚めて間もない茜に、包み隠さず話す事は酷な事だと思う。残酷な仕打ちだと分かっている。


 それでも私は、全てを話すことに決めた。


 栞も悠里も賛同してくれた。


 弱りきった心に追い打ちを掛けることは、十分承知している。胸が酷く痛む。でも、隠し通すことは到底出来ない。だから、私は話すことに決めたのだ。


 今、私は茜の目の前にいる。


 黒劉山で何が起きているのか。


 そして、誰が謀反を起こしたのか。


 族長の伊吹は、謀反が起きることを察知していたこと。


 その対処として、栞を親友であり悪友である悠里のもとに送った事実。


 悠里は、もし重盛が仕掛けてくるなら、朱王都の外れの辺境の地、赤砂漠の手前ぐらいで起きるとふんでいた。


 何故なら、赤砂漠なら黒翼船が墜落しても目撃者がいないうえ、他者の被害はほとんどない。ましてや、事故の墜落のさい投げ出されても、赤砂漠なら見つかりにくいし、死亡する確率が高いからだ。


 つまりそれは言い換えれば、いくらでも偽造が出来るということだった。


 事実、重盛はそこで仕掛けてきた。


 茜は黙って、最後まで聞いていた。話していた間も、話終えた今も、何の反応も見せない。表情は一切変わる事はなかった。それがかえって、ショックの大きさを垣間見せていた。


 これは話終えて知った事だが、伊吹は茜には何も話していなかった。


 妹の栞が計画の全貌を知っていて、自分ではなく栞に父は命を下した。全てを栞に託し、送り出したのだ。


 自分一人が知らされていないことが、茜にはショックだったに違いない。感情が消えた表情だったが、唯一口元だけは違った。茜は唇を噛み締め耐えていた。


 悠里は茜に言う。「茜は正直過ぎるからだ」と。


 嘘を吐くことが出来ない。よくも悪くも表情に出易い茜には、絶対に教えることは出来なかっただろう。賢明な判断だと思う。理解は出来るが……辛過ぎる真実だった。


「…………睦月様、本当に御迷惑をおかけしました。ましてや……命を助けて頂いて、何と言ったらいいのか……」


 そんな状態でも、茜はなんとか言葉を振り絞って、申し訳なさそうに私に礼を述べる。


 茜は自分だけがかやの外だと知った。


 その上、護る立場の者が反対に命を救われる。


 ズタズタに引き裂かれた、武人としてのプライド。信頼していた部下が謀反の主謀者の一人で、自分を裏切り、それに自分が一切気付かなかった……自分の不甲斐なさ。知らなかったとはいえ、主である睦月に対し犯した、誘拐という罪。


 そして族長である父を裏切った行為が、更に茜を苦しめた。


 しかし、それは紛れもない事実であり現実なのだ。


 茜自身が受け入れ、消化しなければならない。自分の気持ちを整理する時間が必要だろう。それには、長い……長い……時が必要だ。それでも、消化出来るかどうか……正直、難しいかもしれない。


 一人になりたいと言う茜を残して、私たちは部屋を後にした。






 最後まで読んで頂いて、本当にありがとうございました。長くなりそうだったので、ここで一旦区切りました。


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