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序章

 初の長編ですm(__)m

 





 山桜が満開だった。


 斜面全体を彩る淡いピンク色は、とても美しくて艶やかで綺麗だけど、どこか儚げな感じがした。風が吹く度に、白に近い薄ピンク色の花びらが雪のように舞い散る。


 少し風が冷たい外で、私は段ボールを潰していた。作業する間、何度も手の甲に花びらが滑り落ちていった。


 それを見て、ふと……思い出す。


 私が死んだ日も、こんな風に雪が降っていたなって……。









 日本の暦でいうと、一年と数ヶ月前になるかな、一月十一日、私、千葉ちば睦月むつきは高熱が原因で死んだ。この時、私は十四歳になったばかりだった。


 死因?


 それは分かんない。なんせ、病院には行ってなかったからね。だぶん、これは想像だけど、インフルエンザが原因じゃないかな。双子の兄が一週間前に掛かってたからね。時期的にみて、私もうつったんだと思う。


 普通、この時代にインフルエンザぐらいでって、思うかもしれない。大抵、抗生物質飲んで大人しく寝てたら治るしね。ましてや、私は免疫力が低い小さい子供でもお年寄りでもないし。持病があったわけでもない。


 でもまぁ……それは、あくまで普通での話。


 私はそういう意味では、全然、普通じゃなかった。


 幼少時に起きたある事件が原因で、両親は私という存在に恐怖し、徐々に育児を放棄していった。


 そういうのをネグレクトって言うんだよね。確か。


 完全に何もしなくなったのは、三年ぐらい前だったかな。それまでは、最低限の事はしてくれてたんだけどね。最低限だけど。


 まぁ……色々、無理がたたったんじゃないかな。ウイルスに体が耐え切れなかったんだと思う。栄養状態も悪かったし。それが真実であり現実なんだと、今は素直にそう思える。


 そうそう。私が死んだ日の事を少し話そうかな。


 私が死んだちょうどその日は、祖父の通夜だった。


 祖父のこと知ったのは、学校に着いてからだ。


「今晩、じいさんの通夜だろ。兄さんたちは、もう帰ったぞ」と、先生から呆れたように言われて、私は祖父が死んだ事を知った。


 この時点で体調は最悪だった。立ってるのもやっとだった。


 保健室で寝ようと思ってたんだよね。でも、先生にそんな事言われたら、保健室で寝る事は出来ないでしょ。しょうがないから、保健室で寝ることを諦め、私は重い体を引きずるようにして家に帰った。


 家に誰か残ってるとは、始めから思ってもいなかった。


 現に誰一人いなくて、いつも置いてある場所にも鍵は置いていなかった。慌てて忘れたらしい。鍵はいつも双子の兄がこっそりと置いてくれていた。合鍵を作りたくてもお金がなかったから作れなかったし。正直、助かってた。


 だけど、鍵は見付からない。彼らが帰ってくるまで、私は家の中には入れない。


(真冬の寒空の下で何日も過ごすんだ……)


 馬鹿でも分かる未来。私を待ってる未来が何か、否応なしに分かる。もう、笑うしかないよね。


 私は縁側に座ると、窓を背に崩れるように座り込んだ。


 もう限界だった。


 体も、精神も……。


 とてもとても寒いはずなのに、段々寒さも感じなくなってきた。体の辛さもダルさも次第に感じなくなっていく……。


(……逝く時も、一人なんだね)


 全てを諦めかけた、その時だった。


 体に力が入らなくて、ただ座り込んでいるだけの私の手の甲に、冷たいものがソッと触れた。


 私は空を見上げる。


 重く暗い雲が空一面覆っている。ちらほらと雪が降り始めた。


 雪が私に触れて溶けていく。


 雪と同じように、私の命も少しずつ、だが確実にこぼれ落ちていった。


 声を出そうとしても、掠れた声しか出ない。こぼれ落ちる命を止める術を持たない自分が悔しかった。凄く凄く悔しかった。


 毎日続く悪夢が早く終わることを、ずっと願っていた筈なのに。いざその時が来たら、正反対の思いを抱いていた。強く、とても強くーー。


(生きたい!! このまま死にたくない!!)


 徐々に薄れてゆく意識の中で、私は純粋に生きたいと願った。


 ただ、生きたいと……それだけを、強く強く願った。


 その時、何かが頭を過ったの。それが何なのか、その時は分からなかった。でも無意識に、私は必死にそれにすがろうとした。


 動かない腕を、それでも必死で持ち上げ、何かを掴もうと必死に腕を伸ばした。


 その瞬間、何故か私の体は水中にあった。





 最後まで読んで頂き、ありがとうございましたm(__)m

 

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