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憤懣やることなし


 とりあえず、できることをしようと思った。

 何もすることがなかった。


 ダンジョンや俺たちにまつわる仕様に関してはすでに話を聞いたし、確認できるところは確認もした。

 そうすると今は力が不足していて、コアの力を使うこともできないため暇なのである。


「くそっ、やるせねえな……」


 じきに暇ではなくなる。

 しかし備えることは何もない。何もできない。


「ホムラネコの指揮でもやってみますか? 彼ら、自分たちから連携しようとはしないので、何か教え込めば化けるかもしれませんよ」


 苛立ちを隠しもせず、むやみに右往左往する俺にも笑顔を崩さないラッティ。


 しかし、指揮か。自分がリーダーなんて向いている人間ではないことくらいわかっているが、やることがないと、やるだけやってみようという気にもなる。


「あいつらに俺の言葉は通じるのか?」


「通じません。でも、やってみる価値はあるのでは? 言葉の通じない生き物だって、人間は調教しているでしょう? ましてや、目下敵対予定の魚人たちだって、彼らの言葉が通じない海獣を調教して使役しているのですから」


「それもそうか」


 ギルマンに飽きたのか、三匹の赤い猫は各々毛繕いをしたり目を瞑ってくつろいだりしていた。


 しかし、いざ調教となると惚けてしまう。何をどうすればいいのやら。

 見つめていると一匹が寄ってきた。


「ニャァ」


 間延びした可愛らしい鳴き声。


「む」


 とりあえず胡坐をかいて座り込み、一匹の猫と向き合う。


「ニャァ」


 間を置いて、また鳴く。

 こいつ、魔物なんだよな。

 さっきだって、俺が全く反応もできないような爪攻撃をしかけてきたギルマンを圧倒してたもんな。

 ホムラネコ。赤い猫。ギルマンに噛みつき、燃やした。炎の牙か……。


「フシャー!!」


「うわっ!」


 恐ろしいと思った瞬間、威嚇された。

 情けない叫び声をあげ、さらには飛び上がってしまった。


「あはははは。そいつら魔物ですが、猫だけあって人懐っこい部分はあります。一度、魔物だということを忘れてみましょう」


「う、おう……」


 猫は威嚇を続けている。

 ざわついた心臓を深呼吸で落ち着かせようとするも、上手くいかない。

 まだ激しく脈打つ心臓のまま、無理やり改まる。


「シギャーッ!!」


「ぎゃっ!」


 引っ掻かれた! 痛え!


「うはっ! やめなさいって、猫ちゃん! その人はエライ人ですよ!」


 ラッティが噴き出しながら命令した。

 途端に猫はおとなしくなる。


「なんでこいつの言うことを聞くんだよ!」


 おとなしくなった猫に文句を言う。

 これは理不尽だ。歩み寄ろうとした俺が引っ掻かれたのに。


「そりゃあコアの力で喚び出した猫ちゃんですからね。命令は聞きます。もちろんマスターたるあなたの命令も」


 首だけラッティに向ける。

 そういえば、こいつ猫を召喚したときに言葉で命令出してたな……。


「言葉、通じるんじゃないかよ……」


 もう、どっと疲れてしまった。

 声も震えている。


「仲良くなるのは悪い事じゃないですよ。命令を聞くのは確かですが、喚び出した生き物にもパーソナリティはあります。士気に関わります」


「そういう問題じゃねえだろ……」


キーワード

召喚した魔物:命令を聞く。

炎の牙:ホムラネコの噛みつき攻撃は燃える。

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