今後に向けて
四人の将軍全てを失った魔物の国は、烏合の衆と化した。
情報が錯綜し、誰が指揮を取ってよいのかわからなくなったのだ。
個々の部隊が追ってくるのを、丁寧に撃ち仕留めていけばいいだけの話となった。
彼らは背後に自分たちの住処を抱えているため、どこにも引くことろがなかった。
敵は固まって守ろうと、追いたてて攻めようと、ゴーストシップに反撃することができない。
時間はかかったが、敵兵は全滅した。
「それで、どこまでやるのかな?」
僕っ娘が訊ねる。
「どこまでって、もう敵は殲滅しただろ」
「海から出るんでしょ? でも、ダンジョンを拡張するにはエネルギーが足りないね? 僕たちを召喚するのに全部使っちゃったから」
「あ、そうだね! 今の戦いは全部ダンジョンの外でやったから、コアにはエネルギーが入ってないよ! コアを放って大陸に遊びに行くのは許さないからね!」
僕っ娘とレインコートの少女が連撃。
これからやるのはちょっと口にしづらいことだから、あまりつつかないでほしい。
まあ、僕っ娘は俺がどうするつもりなのか分かっているみたいだが。
「魔物の国の非戦闘員をダンジョンに連れ帰る。あとはわかるだろ?」
「だからさ、どこまで? 文字通り、ジェノサイドしちゃうの?」
僕っ娘の突っ込みがきつい。
レインコートの少女は理解したようで、その上でうんうん頷いている。
これはこれできつい。
「そうするしかないだろ。ここまでやっておいて、禍根を残すようなことはできん」
「そうこなくっちゃね!」
少女が親指を立てた。
「まあ、これは戦争みたいなものだしさ、その判断は構わないんだけどね……」
エルフの魔法戦士が言葉を切る。
「君、召喚した仲間を大勢捨て駒にしたよね。従ったけど、ああいうのは僕、好きじゃないな。いつか自分も捨てられちゃうんじゃないかって、心配しちゃうよ」
ぐいっと寄り、エルフは俺の顎を軽く摘みながら言い放った。
「……必要ならば、俺はまたやるぞ」
逡巡はすぐさま打ち払った。
ここで、できないことを約束するわけにはいかない。
「いいよ。ダンジョンに造られた存在である僕は、その命令に逆らえないからね。でも、よく考えておいてね」
「……ああ」
ラッティも言っていた。
士気に関わると。
ゲームのように、簡単に仲間を召喚できる。
たしかに、ゲームの中には仲間が裏切ったり、言うことを聞いてくれない仲間が出てくるものも数多くある。
だが、そういうことじゃない。
言ってしまえば、他人なのだ。
ゲームの中ならプレイヤーのことだが、ここで召喚した仲間は、仲間だけど他人のこと。
俺がまだしもまっとうな人間であるならば、相手には礼節が必要だ。
「あっ、そうだ!」
突然レインコートの少女が大きな声を上げた。
「な、なんだよ……」
「名前、決めたよ! あたしの名前!!」
「お、おう。……なんて名前にしたんだ?」
「これから、あたしの名前はキャプテンだよ!」
名前か?それ。
「ちなみに、どうしてそんな名前にしたんだ?」
聞かなくても、なんとなくわかるけど。
「そんなって言うなよー!」
「あ、ごめん」
怒られた。
「船に乗って戦うの、楽しかったからね!」
「それはよかったな」
「うん!」
こんなのが相談役か。
先行き不安だ……。
ただまあ、俺を勝たせてくれた仲間だ。
勝ち続けるということ関しては、裏切らないようにしたい。
空は鈍く曇っていた。
一旦完結です
続きは書きためてから新作として始めます