新キャラと決意
「おい、いや、なんだよ、それ……」
唐突で、あまりにも呆気ない。
「そんな、急に一人にされて、これからどうしろってんだよ……。上手く立ち回れなんて、そんなこと……」
洞窟の奥から、まぶしいほどの光が届いている。
多分、洞窟の外まで漏れるほど。
「一人じゃないよーん! これからは、このあたしがマスターについてるから!!」
召喚した魔物たちも動かず静かにしている中、急に響いた大声に驚き、振り返る。
「やっほー! 早速だけど、後任だよー!」
コアのある奥の部屋へ通じる道の前に、小さな女の子が立っていた。
大きく手を振って、こちらへ元気よく走ってくる。
「……なんだ、お前」
わずかに濡れる目元を密かに拭ってから、女の子に話しかけた。
「ん? 後任の助っ人。さっきまで生きてた、ラッティさんの後任ね! 名前は……、後で考えるね!」
黄色いレインコートのようなものに身を包んだ女の子。左手には、身の丈ほどの青い傘を持っている。
見た目で言えば、十才には届いてなさそう。
「あいつの代わり? ……あいつみたいに、お前も可愛い顔して敵を殺せるのか」
少し皮肉っぽくなった。
「ううん。あたしは弱いよ。すっごく弱い。どれくらい弱いかっていうと、ただの人間の女の子くらい弱い!」
手に持つ傘を掲げながら、誇らしそうに言い放った。
「それで、なんの役に立つってんだよ!」
「あたしは知識担当! 前任のラッティさんは、そもそも重要なことさえあんまり教えてくれなかったでしょ? だからコアはね、ちょっと手間をかけて、あたしを素直な性格に作ったんだよ!」
「素直な性格って、自分で言うのか」
なんだか少し、和まされた。
「うん! だって、素直なんだもん!」
何かをはき違えている気がする。
「じゃあ早速だけど、現状を確認するよ!」
「おう」
「まずは自分たちのことね!」
ダンジョンは拡張なし。
位置はオーディス大陸の東の海の、海底に開いた洞窟。
南東に魚人系亜人の、魔物の国あり。現在敵対中。
「オーディス大陸か、人間が住んでいるんだろ? いつかは行ってみたいな」
「じゃあ、行っちゃう? 船作ってまっすぐ進めば、二日ほどだよ!」
いい笑顔だ。
ああでも、ラッティの笑顔も最初はいい笑顔だと思ってたんだよな……。
「ダンジョンとコアをほっといてか?」
「それは駄目だね! ダメダメだね! でも、ラッティさんが残してくれたエネルギーでダンジョンの領域を拡張していけば、ぎりぎり大陸まで届くと思うよ! そうすればコアを放っておかずにすむね!」
「そうなのか、そんなにか。いや、でも……」
ラッティの槍を見やる。残された槍は二股に欠けていて、柄も刃も傷ついている。
ラッティ自身はすでに火葬して、弔ってやった。
「魔物の国とは、早急に決着をつける。ここまで随分と弱らせたんだ。やり通すぞ」
「そう? まあ、それならそれでいいよ」
ラッティは怖ろしいやつだった。
理解しがたい性癖の、あまり友達にはしたくないタイプ。
人懐っこい笑みの裏側で、人を寄せ付けない悪癖を持っていた。
裏切りを示唆したり、ちゃんと情報を教えてくれなかったり、人を馬鹿にしたり。
でも、仲間ではあった。
仇くらいは、討ってやろうと思う。