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いずれにせよ窮まっている

「もうこれ詰んでるだろ」


 誰もこの俺のダンジョンを攻略できない。


「長生きできると思って諦めては? そして今ある環境を楽しみましょうよ」


 誰も俺のダンジョンに挑戦してくれない。


「最後には蹂躙されて終わると分かっている人生をのんきに楽しめってか? ありえん」


 それでは俺のダンジョンを成長させることができない。


「いいじゃないですか。早いか遅いかの違いでしかないでしょう」


 なぜならここは、海底だから。

 ダンジョンの特性のおかげで水没こそしていないものの、大海原のどこかの海底にぽつんと開いた洞窟に、いったい誰がやってくるというのか。

 立地を聞いたその時は、絶望的な気分になった。


「無期限のバトルロワイヤルだから、和平のような物が成立する可能性はあるんだが」


 お助けキャラを自称する少女の言葉は半ば無視し、独り言。


「たとえそういう展開になったとしても、抜け駆けはありえますよね」


 のんきな言葉に苛立つ。一蓮托生だということを分かっているのか。


「……ただのゲームならこんな不利な環境も、むしろ歓迎したんだがな。命がけではそうも言ってられん」


 新しくできたソーシャルゲームを始めただけだったのに、ゲームの世界に巻き込まれてしまっていた。


「なるようになるというか、なるようにしかなりません。楽しみましょうよ。命がけは、きっと楽しいですよ?」


 最初からずっとニコニコしている少女、ラッティ。

 足元まで隠れる、というか地面にだらしなく垂れるほど長いクロークを被っている。クロークの水色と、髪の瑠璃色、夜の空のような鉄紺の瞳。全体的に青い奴。


「まあ、恋人も家族も親族さえいない仕事だけの身の上だったからな。この世界で生きることを楽しむのに忌憚はない。だが、ではどうやって楽しむ?」


 ここから出ることはできない。外に通じる道は一つしかなく、そこを通ることは水死を意味する。

 場所柄、ダンジョンを侵入者用に機能させたところで、誰もやってこない。

 洞窟型のダンジョンの中で、外に出ることは叶わず、外から誰もやってこない。このラッティと二人だけ。


「あなたは男性ですから、私を相手に楽しむというのもありでしょう。でも、それだけではすぐに飽きちゃうはずですね」


 ラッティは掛け値なしに美少女だ。誰にも邪魔されず密月の日々を過ごせると考えればそれなりの役得ではあるかもしれない。だが彼女の言う通り、そんなのはすぐに飽きるだろう。

 ではその先、ここでの生活で何を楽しめというのか。


「まあ当面は暇なしの生活が続くでしょうから、そんなことを考える必要はないでしょうけどね」


「なに?」


 と、言ったところでダンジョンが揺れた。

 地震のような、そうではないような。地震の多い日本の国民的にも、心臓がざわつくような強い振動が走る。


「確かに誰も来ないでしょう。人間は。でも、ここは危険な魔物の多い海域にあります。野生の魔物が多く、特にマーマンなど半亜人系統の魔物の国に極近いので、最初から組織的なダンジョンアタックに悩まされる日々ですよ。マスターさん」



 俺たちは、俺と同時に各地へダンジョンマスターとして召喚された人たちとバトルロイヤルをしなければいけならしい。

 ダンジョンにやってくる侵入者を始末することで力を得て、ダンジョンを強化し、増強した戦力で他のダンジョンを滅ぼしあう戦いをしなければならない。

 侵入者が来なければダンジョンを強化することができず、当然そうした軍拡競争にも置いていかれるだろう。


 その先に待つのは圧倒的な戦力差に蹂躙されて終わるみじめな人生かと思っていたが、それ以前のお話だったというわけだ。


キーワード

ダンジョンコア:これが壊れるとマスターは死ぬ。

ダンジョンマスター:主人公。

海底:主人公のダンジョンがある場所。人間は誰もやってこないだろう。

魔物の国:魚人系の亜人が支配する国。敵対予定。

ラッティ:ヒロインではない登場人物。ニックネーム。


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