鈴木太郎の青春哲学論・1/2
貴方はどんな高校生活を送りましたか?または送っているのでしょうか。それともこれからでしょうか。
思い出して下さい。想像して下さい。
貴方は幸せでしたか?つまらない青春時代でしたか?
この物語はいわば救いの調べ。
青春に
恋に
友に
家族に
そして自分自身に絶望した全ての人へ。
きっと貴方に福音が響くことを祈って。
瀬江汰花
青春を求めし諸君よ、はっきり言おう。
––––––– 現実は、悲惨である。
この世界は、ラノベや漫画やアニメの夢のような世界じゃない。天然キャラもドジっ子キャラもいないし、美少女だって少ない。天然キャラを演じてるビッチはいるが、ドジってパンツ見せちゃう、なんて女子はいない。逆にある?女子が転んでパンツ晒したのを目撃したこと?俺はないね。
そもそも女子のパンツを見ることはほぼ無い。何故ならスカートの短いヤツは大概見せパンとやらを履いてるからだ。スカートを短くはするけどパンツは見られたくないってなんなの?矛盾してない?見せろよパンツ。
そして、ブスのヤツに限って見せパンを履かない。
美少女なんてクラスに一人いればいい方で、そいつらは大概性格が悪い。上っ面だけ良くても、根っから性格がいいやつなど存在しない。そんな奴のパンツなどみたくもあります。ごめんなさい。
帰り道一緒に帰る幼馴染も存在しないし、幼馴染が美少女である確率など1%だ。四捨五入して0%である。
妹が美少女で、かつ兄が大好きという事もあり得ない、美少女ということはあっても、現実の妹は兄を好きでも嫌いでもない。いわゆる無関心ってパターンが多い。うちの妹がそうだし。まぁあいつは美少女なんですけどね。つまり、俺がイケメンという事が証明されるわけだ、されないか。
女だろうが男だろうがすぐ勘違いするし、すぐ告って、すぐ付き合う。そんでもってすぐ別れる。
放課後二人で静かにお話し、なんてのは幻想で、放課後一人で静かにSiriとお話しってオチ。
そういった小さなドキドキイベントもないから男女は直接的なホディタッチだったりコイバナだったり、性欲溢れる交流で仲を深めるってワケ。
お前好きな奴いんの?とか俺の一番嫌いなフレーズ。
だからお互いなんとなく好き合ってるってのは分かってるけど、言葉にしたり付き合ったりはしないっていう青春ドキドキキュンキュンイベントなど皆無だ。とにかく、取り敢えず付き合ってみるだとか、巨乳だから付き合う、とかは殺意を覚える。
巨乳という奴もいるにはいるが俺は認めない。何故なら奴ら胸だけに脂肪がついてるわけじゃない。
高校生だぞ?高校生でラノベやらアニメやらのプロポーション持ってみろ、全国のお父さん狂っちゃうよ?
つまり、高校生で巨乳ってのはイコールぽっちゃり系女子(笑)って可能性がほとんど。
漫画やラノベに見られる青い髪だとか赤い髪の女の子なんて現実にはいない。どんな不良だよ。高校生だぞおい。それで清楚系名乗ろうなんざ片腹痛いわ。
名前の特殊な人間もそうそういない。西園寺春菜だったり、涼宮ハルヒだったり、磯野わかめだったり、ちび まる子だったり。あ、さくらももこか、なんでまる子って呼ばれてんだろうな。
まぁ野原ひまわりみたいなDQNネームならあるかもしれないけれど。
要は君だけに振り返る君だけしか付き合ったことのない可愛いヒロインなんていないワケ、美少女が何人の男に詰め寄られてると思ってんだ。ほとんど貫通済みだっつぅの。死んでしまえ。
部活動で友と励ましあい、時にはぶつかり、自分を大きくする。それも青春だろう。それはいい。だが俺は帰宅部でラノベやら漫画やアニメに自己投影してるそこの君に言いたいことがある。平凡な自分がいつか異世界に飛んで最強になるとか妄想している君に言いたいことがある。
俺たちの求めるそんな青春はこの世界には存在しない。
てなわけで、まして最初から高感度MAXのヒロインなんているわけがないんだが…
「…あの…鈴木くん…放課後、屋上に…………」
…ヒロインの定義をまず考えてみよう。ヒロインとはギリシャ語の「hêrôḯnê」という単語が語源になっており、これは「半神の女性」「勇敢な女性」「女性の英雄」などの意味を持つ。今日では主人公の恋愛相手、という意味で使用されているが、どちらにしろ、美しい、可愛らしい、という点が何よりも重要である。性格悪いヒロインもいるわけだが奴らは必ずふつくしい。
では、目の前にいる彼女はどうなのだろうか。
…彼女は委員長である。その一言に尽きるだろう。決して名前を覚えていないとかではない。決して。何故なら彼女は眼鏡におさげである。しかも役職は学級委員長ではないが、副委員長であるからだ。もしかしたらまつげが長く大きいかもしれない二つのおメメは長い前髪と分厚く大きなフレームによって存在感を潜めている。お世辞にも美少女とは言えない出で立ちだ。やはりヒロインなどこの世に存在しないと目の前の現実が教えてくれている。
QED照明終了。
「あの…鈴木君……?」
「あぁ…屋上ね、分かったよ」
超絶イケメンに受け応えし終えた後、なんとなしに視線を落とす。
––––––– そこには、父がいた。2人のビッグファザーがいた。こいつ…‼︎胸だけはヒロインをも凌駕しているだと…⁉︎⁉︎しかもくびれがある…。ば、バカなッ…‼︎
俺のおっぱいスカウターが急上昇しているッ‼︎80‼︎83‼︎90‼︎ボンッ‼︎目がァァアアアア‼︎‼︎間違いなくEはイってるぞ‼︎エロのE‼︎超Eね‼︎
などとアホなことを考えている内に、授業の開始チャイムが鳴ったのだった。
授業中は特に青春イベントは発生しないというのは、現実も同じで、誰もが退屈そうに黒い板を眺める。
…なんでここだけは同じなんだよ。
ともあれ、どんな物語も主に放課後に展開されるわけだが俺はいかに迅速に正しく帰宅できるかを競う部、つまりは帰宅部なのでそんなイベントもない。今まで1年間寄り道はあれど放課後の学校に残ったことはない。ま、今日は違うんですけどね?ドヤァ‼︎
とそこで俺の思考は途切れ、うつらうつら、と、まどろみの輪廻へといざなわれたのだった。…この言い回しなんかかっこよくね?
…
「た…う…」
…
「太郎…」
うるせぇな…
「おい!太郎!授業終わったぞ!」
あぁ…?もう終わったのかよ。
「…うぃ。おはよう…」
「お前寝すぎだろマジで、メシ食ったのか?」
「あぁ?朝ならご飯納豆にぶち込んで食ったが…」
こいつはビッグ。とにかく背が高い。バスケ部次期キャプテン候補。みんながビッグと呼ぶため彼の本名はなかなか呼ばれない。決して名前を覚えていないわけじゃない。決して。
ん?というか?メシ?ん……?
「待て、お前は何の話をしている?」
数秒の沈黙。
「…お前こそ、いつから俺が朝ごはんの話をしていると錯覚していた…?」
うぜぇ…。
てかマジか授業終わったって全部終わったのかよ。タイムスリップしてんじゃんワロタ。
俺はビッグに別れを告げ欠伸をしながら玄関へ向かう。昨日は夜通し阿波踊りを爆音で踊り狂ってたからその疲れが出ちまったみたいだな。俺のストレス発散方法だ。ちなみに家族はストレス加算されること必須。ガチで親父にぶん殴られた。
クラスメイトに挨拶しつつ、そして下駄箱から靴を……ってアブネェェエ‼︎危うく明日からクラス全員に廃棄物認定されるところだった…。
べ、別に忘れてたわけなんじゃないんだからねっ!靴が隠されてないか見に行っただけなんだからっ‼︎
すぐに屋上への階段に向かう。三階建ての校舎の屋上、つまりは四階と呼べばいいのだろうか。普段あまり使用されない屋上の扉は錆びついて茶色く変色していた。あまり使用されてないってのがミソで、そのため校内でも絶好の告白スポットとなっている。
そのため、扉を開こうとするがなかなか開かない。ギギギっと歪な音がするだけである。
そこで俺は全身全霊の体当たりをかますことにした。
太郎!捨て身タックルだ‼︎
ピカー‼︎と奇声を上げつつ突進した瞬間扉が開く。
「キャッ‼︎」
鉄の硬さを覚悟していた俺の横顔に余りにも柔らかい感触が襲う。
俺は直感で気付いた。これはエアバックならぬティーバックでもない、柔らかおっぱい肉バックであることを。
可愛らしい悲鳴もろとも俺は肉バックを押し倒す。
そこに居たのはやはりと言うべきか、委員長だった。
「………」
「……す、すまん」
「…うん、…その、恥ずかしいから鍵閉めてて…」
それは俺も入った後じゃないと意味がないんじゃないかなとか今日からおっぱい委員長と呼ぼうなどど考えながら体を起こす。すると、ある異変、いや奇跡に気付いた。
––––– 委員長の眼鏡が、ない。
「あれ?眼鏡が…めがね…」
どうやら先の衝撃で吹き飛んでしまったようだ。しかし、吹き飛んだのは眼鏡だけでなく、俺の常識も共に吹き飛んでいた。
おっぱい委員長の顔にはまつ毛が長く、潤んだ大きな瞳があり、それがせわしなくキョロキョロ動いている。よく見れば透き通った肌にみずみずしい唇。
–––––– そして俺は再び戦慄した。
お分かりだろうか。屋上で四つん這いになり物を探そうものならば…容易に想像出来るはずだ。
そう、風で巻き上がったスカート、その先には…
「く、くまさん、パンツ、だと……⁉︎」
パンツには人の本性が表れる、そう俺は思っている。天然を装っているビッチならまずこんな簡単にパンツを見せることはしないし、見せパンを履くだろうし、その下は黒のレースとかを履いているだろう。だがこいつは何だろうか?この夢のような現実は俺のキャパシティでは到底許容できない。だが、眼前に繰り広げられた事実が証明している。
好感度MAXのドジっ子美少女ヒロインが確かにここに君臨していることを。
眼鏡を拾って掛けた少女は、テヘッと現実にはやはりあり得ない笑顔を見せ、俺に言う。
「…鈴木君、私、鈴木君と…………友達になりたいの…」
俺は血を吐いた。
「鈴木君、すっごくかっこよくて…私いつも見てて…、けど、鈴木君の事よく知らないから…………ダメ…かな……?」
遠目に見ていて好きになった、というのは単なる見た目だけで判断しているに過ぎない。相手がどんな人物か、どんなステイタスを所持しているのか、それを理解して好きになる、これが本物だ。それをこのおっぱい委員長は理解している。いやもはや無意識なのかもしれない。
そして、計算しても出来ない完璧な上目遣い。誰かが、もしかしたら彼女自身がこの世界から隠し通してきた秘宝。それを俺は垣間見ている。
そして想う。圧倒的邪魔な前髪と眼鏡を破壊してやりたい。彼女を解放してあげたい。そう願う。
返事の代わりに俺はこの囚われの女神に願いを述べた。
「……おっぱいを…揉ませてくれ…」
いっけね、理性が保てなかったゼ☆
「いや、今のは間違い。」
「だ、ダメだよっ‼︎そういうのは、結婚する人としなきゃ…、わた、私鈴木君と…?あ…でも…結婚…………………優しく、して?」
「いや冗談です調子こいてすいませんでした」
俺はこんな健気な子に何てことをしようとしてるんだ(涙)。自分が恥ずかしいぜ。
「あ、そうなんだ…。」
ホッとしたような、残念なような、そんな複雑な表情を浮かべるおっぱい委員長。
俺が言う言葉はもう決まっていた。
「その、俺でよければ…友達から、一緒に始めようぜ」
俺の言葉に彼女はくしくしと自らの三つ編みを弄りながら、恥ずかしそうに返事をした。
「…うん、必ず仲良くなろうね」
「よし、じゃ早速だが、やってきて欲しいことがある」
「…え?うん…」
「まず髪を切ってくれ。おでこは出すように。かんざしで後ろにまとめるのもアリだな。化粧も頼む。そして何よりもやって欲しいのは、コンタクトだ。眼鏡を外してさえくれさえしてくれればいいけど」
「え!?なに…?待って…なんで?」
なんでと言われても
「…その方が可愛いから」
「ふぇ⁉︎か…かかかか可愛い…⁉︎」
委員長は顔を真っ赤にして慌てふためく。こんなシーンアニメで見たことあるぞおい。
「あぁ、間違いない」
「そ、そっか…、鈴木君がそういうなら……………
可愛くなったら、もっと、仲良くなってくれる…?」
速攻で俺は親指をズビシィッと立てながら言った。
「当然だ」
彼女は指を顎に当てうーん、と唸り
「髪とお化粧と眼鏡だね、頑張ってみる!」
と輝かしい笑顔を俺に向け、続けて言った。
「––––––– 必ずもっともっと仲良くなろうね?」
––––––– いつ以来だろう。こんな気持ちになったのは。
絶望して、受け入れてしまった現実に何度も嫌気がさしていた。凍ってしまった心は時間とともに停まっていた。
だからなのだろう。
俺はその言葉に春の訪れを感じさせる暖かい微笑みを夢見たのだった。
小説自体書くのが初めてでして、読み返してみれば日本語がめちゃくちゃなんですが、それを修正する技量もないので、気になるところがありましたらご報告ください。勉強します。
一応次回とセットなので次はすぐにでも投稿する予定です。
そのあとは超遅くなりますのでご承知ください。
イラストにつきましては、下手くそな上、鉛筆なので不快に思われるかもしれませんがどうぞ私の自己満足にお付き合い下さい。
ありがとうございました。