心身の縁
*女性の特徴表現が出てきます。ものすごくぼかしましたが、不快に思われる方がいらっしゃいましたら申し訳ありません。
村への道のりで、討伐目的の魔物とかちあった。らしい。
と言うのも、現れた魔物をしっかり討伐し、証明部位を切り取っていたのは、お師匠さまとの経験のためにギルドで買い取ってもらえることを知っていたからだ。
もしも現れたのが普通の獣だったのなら、食料になる部分だけとっただろう。もしくは現れた魔物が金にならなければ、追い返すだけにしたかもしれない。
とにかく村に着いて、依頼主に家畜を襲った魔物の特徴をきいてみれば、それは道すがら討伐した奴だったということだ。
その魔物は繁殖期以外は一匹で縄張りを持ち、通常は人里には降りてこないが、何かの拍子に家畜を襲うことがある。家畜の味を知ってしまえば、自分の縄張りにその村を入れてしまうため、討伐対象になるのだ。
今は繁殖期ではないため、一匹で過ごす肉食の魔物は新人試験にふさわしいということだったのだろう。
依頼人に討伐証明を見せると驚いた顔をしていたが、すぐに笑顔になって礼を言ってきた。
その様子を見ていたはずだが、何故今、ベッドに寝かされていたのだろう?
「おや、起きたね。身体の調子はどうだい?」
「?ルーシェリアさん?」
見知らぬ部屋をベッドの上から見渡していると、第二試験の時に相手をしてくれたルーシェリアさんが入ってきて、ベッドの横の椅子に腰かけた。
「倒れたのは覚えているかい?」
「倒れた?私が?」
確かに昨日の晩から少し体が重いような気はしていたが、熱があるようにも思えず、食欲も普通にあって、動きづらいこともなかったので気にしていなかった。そんなにひどい体調だった?
「・・・・・・あんた、月のモノが来ていたのは気づいていたかい?」
「つきのもの?ってなんですか?」
聞きなれない単語に首を傾げると、ルーシェリアさんは驚いた顔をした。
しかしすぐに考えるような表情になって、少しためらいがちに尋ねてくる。
「あんた、もしかして親がいない?」
「はい。お師匠さまと二人で旅をしています。」
「・・・そのお師匠さまって、男かい?」
「はい。」
簡単な問いだったので迷いなく答えると、ルーシェリアさんは脱力したように溜息を吐いた。
その後、月のモノとは何か、どういった体調の変化があるか、どのように対処するかなど、今まで知らなかったことを詳しく教えてくれた。
お師匠さまが教えてくれなかったのは、男だから知らなかった、もしくは思いつかなかったのかもしれないとも。
また、私が知っていたのなら試験にはマイナスだが、知らなかったのなら考慮されるから、合格だろうとも。
「ありがとうございます。」
「いや、これであんたも正式に冒険者の仲間入りだ。そして、女としても一歩踏み出した。何かの縁だろうし、男に訊くには困ったことがあったら、私に訊くと良いよ。」
頼れる笑顔で請け負ってくれたことに、もう一度感謝をした。今までお師匠さまの隣に立つことを目標にしてきたけれど、明確なイメージは無かったため、少しそれが見えた気がした。
試験終了と合格を言い渡され、新しく発行されたギルドカードを持って宿に帰った私は、「お師匠さまの隣」を失ってしまっていたのだけれど。
過去話はここで終了です。
次から今の時間に戻って、ようやく師匠が出てきます。
師匠の言い訳の回・・・になればいいのですが。