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お師匠様と弟子  作者: ナガレ 真
幼弟子視点
7/15

私君の名

クリス独白に近いので、ほぼ会話は出てきません。

そして、この話を書いていてある疑惑が浮上しました。






旅の同行者がゼルさん・・・お師匠さまに変わって数年がたった。


3年目のある日、母の死を話された。

涙は止められなかったけれど、お師匠さまがしっかりと抱きしめてくれたから区切りがついた。多分、今なら一人で眠れると思う。


それに、もともと少しおかしいなとは思っていた。


なぜなら、私に父はいない。生まれた時から母と二人だった。

母は女の身で旅をすることの危うさを知りつつも、留まることができない人で、だからこそ私を厳しく教育した。それは愛情からだとわかっていたから、私も必死に覚えていった。早熟なのはそのためだろう。

だが、父のことは一度も聞かされなかった。私も特に必要を感じなかった。だから私に父はいない。


宿の夫妻に、お師匠さまに両親が託したと話された時、そんなはずがないと即座に判断した。恐らく母は死んだのだろうとも。後に聞かされるまで、見ていたとは思わなかったが。

でも、お師匠さまの目は優しかったし、手は安心した。だから何も聞かずに一緒にいることにした。・・・ちがう。一緒にいたいと思った。どんなに怪しいと思っても。

一目見て、この人から離れてはいけないと思ったんだ。




「構えて10分、剣先を動かすな。それができれば、実際は相手から動く。動作の開始を見極められれば、隙を突きやすくなる。」

「はい。」

「ただしそれは見合ってしまった時だけにしろ。お前のスタイルは素早さだ。相手が構えるより前に動くことを目標に、手数を増やせ。女に身はどうしたって体力が劣る。切れる前に相手を落とせ。」

「はい、お師匠さま。」


1年目から剣の扱いを教わった。2年目に、ギルドで呼ばれている人を見て、お師匠さまと呼ぶようになった。

お師匠さまは最初名前がいいと言ったが、お師匠さまと呼ぶのは私だけだと訴えて許してもらった。

お師匠さまに私だけが“ラミレナーダ”と呼ばれるのが、お師匠さまの特別だと示されているようでくすぐったくて気持ちがいいので、私も返したかったのだ。私だけが呼ぶ、私だけにしか呼ばれない名。

私の唯一の“お師匠さま”。


お師匠さまは剣だけでなく、様々な知識も与えてくれる。それは獣の捌き方や、馬の乗り方など旅に役立つ知識や、都の作りや国境の変動など多岐に亘った。


魔物は獣の変異だとも教わった。変異するきっかけは《魔素》と呼ばれる物質をどれだけ体にため込むかにあるらしい。人の住む場所は《護符》が置かれていて、それは《魔素》を分解する。だから遠い場所ほど魔物が多く、強くなる。

《魔素》が多いと、筋力や体積が増加する。代わりに欲も大きくなり、獣は特に食欲が増加するらしい。火を恐れるなどの危機意識は薄れ、傷ついてでも食らいつこうと動く。

その分動きは単純だと、お師匠さまは言う。

ギルドでお師匠さまと共に依頼を消費していくにつれて、剣の上達も実感できるようになる。

今は町周辺の草原に出る魔物ぐらいは、5匹程度なら一人でも対処できる。10匹になると危ないけれど。まだお師匠様ほどには素早く倒せない。精進あるのみだと思う。


それよりも厄介なのは魔人だ。人が変異してしまったもの。理性を無くしてしまう人もいれば、理性を保ったまま欲が肥大する人もいる。後者は知恵を働かせる分厄介で、60年程前に遠国で国家転覆を謀った魔人もいたらしい。ただし物語になっているので、失敗に終わっている。

魔人化した後でも教会で元に戻ることもあるらしいが、町の外で会ったら殺されないように防衛するしかない。その手段には殺すことも認められている。

だから外で働く人は普通、個人用の《護符》を持っている。なのに何故かお師匠さまは持っていないと言っていたので、ギルドの報奨金から分けられる私用のお金で《護符》の効果のある木片を買い、彫刻をし、ブローチにしてプレゼントしたらすごく喜ばれた。今ではお師匠さまのマント止めとして毎日活躍している。

毎朝嬉しそうにつけてくれて、毎晩大事に磨いてくれているので、私もとても嬉しい。




「お師匠さま?」

「ん?ああ、悪い。今日はここまでにするか。明日に響くとまずいしな。」

「ありがとうございました。」


どこか遠くを見るような視線が戻り、いつものように頭を撫でられる。最近よくあるが、お師匠さまは何も言わない。

本当は聞きたいが、子供の自分が聞いていいものかは分からず、きっかけがつかめない。

とりあえず明日はギルド登録試験だ。今まではお師匠さまのお手伝いという形でしか依頼を受けられなかったが、12歳になったため一人でも受けられるようになる。ただしギルドも遊び仕事ではないため、責任能力や戦闘能力があるかを確かめなければ登録はできない。そのための試験だ。

それにちゃんと合格して、ギルドで仕事ができるようになれば、お師匠さまも少しは頼ってくれるだろうか?話すだけでもしてくれないだろうか?

お師匠さまが悩んでいるのなら、どれだけ微力でも何かしらのお手伝いがしたい。

決して、遠くを見ずに、ちゃんとこちらを見て欲しいというだけではない。



クリスチャン、モシカシテ微ヤ●デレ・・・・?

ちなみにタイトルは「しくんのな」と読みますが、造語です。

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