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お師匠様と弟子  作者: ナガレ 真
弟子視点
2/15

不安

この物語は甘い空気に重点を置いています。

・・・・・ストーリーは進みにくいです・・・・・。

膝から降ろされることも、それどころか自分で食べ物を口に運ぶことも許されず、エリナと師匠の知り合いらしき男性の前で羞恥に耐えた。

エリナのニヤニヤとしか形容できない笑みに、食事の味はわからず、ただ腹は膨れたのでもうそれで良しとする。


男性はティグルと名乗った。師匠と同郷らしい。


「ゼル様にお会いしたのは4年前ですね。それ以前から噂は聞いていましたが。旅にご一緒させていただいて3年経ちます。」


ちなみにゼルとは師匠のことだ。


「クリスのお師匠様は、クリスと離れてずっと旅をしてたの?」

「いや、旅を始めたのは3年前からだ。それまではずっと里にいた。」

「・・・12歳のクリスを放って?」


エリナがすぅっと冷えた目で師匠を見る。

エリナは2年前に知り合い、何度か依頼で顔を合わせ、1年半ほど一緒に旅をしている。

私がどれだけ真剣に師匠を探していたかを身近で見てきた分、内心では師匠に怒りを募らせていたようだ。


「それは恐らくクリス様のためでしょうね。」

「クリスのため?」

「ティグル。」


口をはさんだティグルを、師匠が低く呼ぶ。

ティグルはすぐに頭を下げた。


「クリス。」


打って変って柔らかく呼ばれ、師匠を振り返った。

声と同じ柔らかなまなざしに、苦味がまじる。


「12のお前を一人にしたことは変わらん。恨み事があればいつでも俺を詰っていい。」

「・・・いつでも?」

「これからは傍にいる。」

「ほんとうに?」

「本当だとも。ずっと一緒だ。」


力強く頷かれ、泣きつくしたはずの涙がまたあふれてくる。


「・・・お師匠様がいなくなって、何故いなくなったのかもわからなくて。」

「ああ。」

「いつもと同じ日だと思っていたのに、違ったのかと。でも違うことも見当たらなくて。」

「ああ。」

「じゃあ、私が何かしたのかと思って。お師匠様に戻ってきて欲しくて、でもわからなくて。」

「ああ。」

「お師匠様に嫌われたのかと・・・でも、いつもと同じはずだったのに。じゃあ、お師匠様は本当はずっと私を嫌いだったの?」

「馬鹿な!お前を嫌うなんて、ありえん!」

「でも、お師匠様は急にいなくなったの。なんで?私を嫌ってたから、でも優しくて見捨てられなくて、でも我慢できなくなったんじゃないの?」

「違う。クリス。お前は俺の宝。お前を嫌うなど、この心臓を抉られてもありえない。」


師匠がいなくなってからずっと不安に思っていたことを、師匠のまなざしに勇気づけられて吐き出す。

真剣な表情で、力強い腕で、甘やかな瞳で、涙をぬぐう唇で、全身で否定してくれる師匠に、心が満たされていく。


顔中にキスを送られ、抱きしめられて頭のてっぺんにも唇を落とされる。


「不安にさせて悪かった。愛しているよ、俺のラミレナーダ(いとしご)。」


8年前と変わらぬ呼び名に、私は泣きながら笑った。




エリナ「結局理由は言ってないわね。」

クリスさんの不安解消の回でしたので・・・・。

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