第2話
式島アイランドという遊園地は、式島徹氏が手掛けた、『お客様を楽しませる』をモットーに作られたテーマパークである。
世界最高――とまではいかないが、それなりの速度と高度を誇るジェットコースターから、十数種類のアトラクションがある。
そこに僕達恋愛向上部は訪れていた。
といっても、僕と水無月さんが主体としたデートで、他の部員は陰ながら僕達の様子を監視、状況を見てアドバイスなどを首下に取り付けた無線機で取り合う、というものとなっている。
『わぁ~。いっぱい乗り物がありますよっ』
『そうですね。私、心躍ります』
『……』
「なにはしゃいでんだか」
「いいではないですか。みんな楽しそうですよ?」
スピーカーのから聞こえる部員の黄色い声。
向井さんはどうかはわからないけど、上野さんと、特に矢追さんはこういう所に来るのは初めてということで、すごく喜んでくれてる模様だ。
「ま、いいけどね。ほら、時間は青春を待ってくれないわっ。行くわよ」
そう言って前をずかずかと歩いて行く水無月さん。
「あ、待ってくださいっ」
僕は慌てて追いかけた。
「じゃあ次はあれね」
水無月さんはご機嫌な様子でジェットコースターを指差す。
早くも一番の目玉が出たよ。
というか、さっきから絶叫系統の乗り物ばかりだ。
球体に乗って高度まで上がり急降下するフリーウォールに乗ったばかりだと言うのに、彼女はすごぶる調子がよさそうだった。
「なんだかんだで楽しんでますよね」
「いいのよ。楽しんだもん勝ちなのよ」
確かに。それは僕も同意する。
『あ、今度はあれに乗りましょうよ~っ』
『はいはい。急ぐと転びますよ』
『早く早くぅっ』
『……』
耳元のスピーカーから楽しそうな声がする。一つだけ小さい息遣いしか聞こえて来ないけど。
「本当お子様ね。これじゃあ部活動できてないじゃない」
「あはは。いいじゃないですか。僕らは僕らで楽しみましょう」
「そうね……て、別にあんたと一緒なんて、退屈以外のなんでもないけどねっ」
その割に頬が蒸気してるし顔が緩んでいてあまり説得力がないのだけど……。まぁ、本人がそうだと言ってるんだし、受け入れるか。
「そうですか。それは残念です。僕は水無月さんと言ってだと楽しいのでこのままでもいいんですけど」
「――なっ。……ま、まぁ…そこまで言うのなら仕方ないわね。でもこれは部活なんだから。そこは勘違いしないでよね。ほら、順番が回って来たわ」
本当に楽しそうである。
無邪気というかなんというか。僕にはない、水無月さんの魅力かな。
僕と水無月さんは運のいいことに、最前席での降下を楽しむことができた。
さすがはジェットコースター……侮りがたし。