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大沼幸二  作者: しろクロ
3/6

試合

『ピッチャー涌井、振りかぶって、先頭バッターの本多に投げました。

ストライク!

初球146キロのストレートが外角低めに決まりました。』

実況が気合の入った中継をする。

ドーム内には、応援が響く。

「すごい……」

信也は、一言つぶやく。

プロの投げる球は、とにかく早い。

手から離れてから、キャッチャーミットに届くまでの時間は、刹那に感じる。

視覚と共に聴覚からも凄さが伝わる。

声援や応援だ。

入った時と違い、満員御礼となった今は、人数がとても多く感じる。

いや、実際多いのだ。

正式に発表されていないが、3万人はいるだろうか。

大勢の人が見てるドーム内は、独特の緊張感と迫力に包まれている。

『2ボール2ストライクから涌井投げました。

ストライク!

アウトローにストレート決まりました。

バッターアウト!

先頭バッター本多、見逃し三振に倒れましいた。」

アウトになると、ため息と歓声がいり混じる。

この雰囲気がとても斬新で信也は、好きになりそうになる。

『続いて左バッターボックスに川崎が入りました。』

ムネリン(川崎選手と愛称)と黄色い声援がとぶ。

『初球打った!

良い当たり!、

しかしこれは、ショート中島の真正面!

2アウト!』

涌井投手は、クールな表情を崩さない。

『2アウトランナーなし。

バッターは、3番のサード松田。

涌井、ここは、三者凡退に抑えて、チームの11連敗を止める勢いにしたいところ』

どうやら、西武は大型連敗をしてるらしい。

もっと詳しく知りたいと思った信也だったが、次のプレーの歓声に思想をさえぎられる。

『打った!

良い当たり。

松田のライナー性の打球は、ライト線に落ちました!

フェア!フェア!

これは、長打コースになる!

松田、一塁をまわり二塁へ!

打球は、フェンスまで達し、今ライトのG.G.佐藤がようやく追いつく!

松田は……二塁もけった!

三塁へ向かう!

ボールは、ライトからセカンド、そしてサードへ!

際どいタイミングになりそうだ!

クロスプレーになる!

判定は……アウト!

西武、見事な中継でピンチを未然に防ぎました!』

一連のプレーが目に焼きつく。

打つ、守る、走る、投げる、全てがプロのプレーだった。

ドーム内が興奮の色に染まり、包まれる。

信也も気付かないうちに虜になっていた。

『さて、ここで両チームの順位などの現状を整理しておきましょう。』

さっきの好プレーで忘れていた。

『西武は、首位を走っていますが、現在11連敗中。

一時期は、マジックが点灯してましたが、消滅し、2位のソフトバンクとは、わずか1ゲーム。

本日、西武が負けることがありますと4月26日以来の首位を明け渡すことになります。

対するソフトバンクは……』

どうやら、西武は調子が良かったが、最近負けが込み、首位陥落のピンチになっているようだ。

そんな状態での2位ソフトバンクでの対戦。

俗にいう、頂上対決。

選手やファンの気合が入るのもうなずける。

注目の熱戦がどうなるのか。

誰も答えを知らない……







明るかった試合当初と比べ外は、徐々に夕闇が迫り、今は、闇が完全に辺りを支配している。

暦上の秋らしくなり、半袖では少し肌寒く感じてきた。

そんな外の気温と反比例するかのように試合の方は、熱気に包まれている。

試合展開は、最終局面を迎えた。

『現在は、西武が石井義人の本塁打などで、5ー4とリードしています。

局面は、9回表、2アウト満塁。

どうやらマウンドの工藤は、ここで降板のようです。

西武のここまで登板したピッチャーは、涌井、、雄星、藤田、星野、シコースキー、工藤となっています。

残っているのは、明日先発予定の野上、変則サイドスローの岩崎、そして大沼幸二が残っています。

さて誰が、マウンドにあがるんでしょうか?

監督が投手の交代を審判に告げました。

では、場内アナウンスを待ちましょう。』


『ピッチャー工藤に代わりまして大沼』


場内が沸きあがる。

皆、そのアナウンスを待っていたのだ。

信也もその中の一人。

さっそうと大沼幸二がマウンドにあがり、投球練習を始める。

このピンチをチームから救うために。

ヒーローと面影が重なる。

ふと、大沼幸二が見上げた。

その視線の先に、信也がいた。

互いの視線が交わる。

言葉が届く距離では、ない。

でも想いは、届く。

(絶対に抑えると)

思いすごしかもしれないが、そう感じた。

大沼の投球練習が終わり、いよいよゲームが再開される。


『9回表、2アウト満塁、バッターボックスに3番の松田が入ります。

ピッチャーは、代わったばかりの大沼。』


この試合最大のキーポイントに、観客のボルテージも自然と高揚する。

緊張感がひしひしと伝わり、満たされる。

大沼幸二が振りかぶった。

みんな、固唾を飲んで見守る。

ボールが手から離れた。



乾いた音が響いた。

それは、ボールがキャッチャーミットに収まる音ー

ーでは、なかった。

音の正体は、ボールとバットが衝突した際に生じた物。

物理法則に基づき、ボールは、飛んでいく。

糸を引くように、投げた球は、観客席に飛び込んだ。

一瞬の静けさの後、それぞれの脳裏に次点の言葉が浮かぶ。

ホームラン。


『入ったっぁぁぁぁ!!

松田の起死回生の逆転満塁ホームラン!

土壇場の9回表にドラマが待っていた!

ランナーが全員帰ってくる。

8ー5とホークス逆転!

打たれた大沼は、天を仰いだ!』


歓喜するホークスファン。

唖然とする西武ファン。

このホームランが響き、西武は、敗れた。

連敗は、12に伸び、首位か

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