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第24回:千歳、キレる

 道場での朝練はやめて、今日はもう教室に行くことにした。

 ホームルームの時間まではまだかなり時間が空いているから、人も少ないだろうけど、今日のニ限の英語は小テストがあるし、勉強しておこう。

 気持ちを切り替えて、教室の扉を開けると。

 黒板に向かって網澤さん達が汚い言葉をつらつらと書いていた。

 複数の色のチョークを使って見た目も華やかに書かれた文字は、見た目に反して辛辣(しんらつ)な文章を構成していた。まことしやかに始まる児島さんの悪評は、児島さんをよく知らない人でもよくよく考えれば根も葉もなくことに気付くようなもので、多分に誇張が過ぎ、最後は児島さんが亡くなったということで結ばれている。

 児島さんの机の上には、ご丁寧なことに綺麗な菊の花をさした花瓶が用意されていた。


 私は、キレた。


 その後のことは良く覚えていない。頭と身体がずれているかのような、浮遊感に似た感覚があった。

 確か私は、言葉もなく黒板近くに向かっていき、怒鳴って、手を上げた。寸前で殴るのはおしとどめ、拳を所在無く自分の胸につけた。代わりに、網澤さん達の行為を責め、思うように口が回らず、泣けてきて、悲しくなって、思いつく限りの言葉を吐いた後、その場を去った。去り際に、もう一方の教室の入り口に児島さんの姿が見えたような気がしたが、私は止まらなかった。廊下で斯波君とぶつかり、突き飛ばすようにして駆け去った。

 早く一人になりたかった。もう何も考えたくなかった。


 どうして人は人を傷つけるのか。

 大切なものを失うことが、大切なものを傷つけられることが、どんなに悲しいかわからないのだろうか。

 ならば、残酷な私が教えたい……優しさを。大切なことを。全てを許容する温かな抱擁(ほうよう)で。

 あなたが決して、人を傷つけることができないように。

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