第21回:悪口の余波
悪い予感はすぐに現実化し、次の日から始まった。
児島さんに対するクラスメートの明らかな無視行為。元々クラス内で浮きがちだった児島さんのこと、網澤さんのグループからの通達があったのか、まもなくクラス内で児島さんに話しかける者はいなくなり、また児島さんから話しかけても対応する者はいなくなった。
「あたしさー、前からあの人のこと気に入らなかったんだよね。なんか人のこと見下したような態度でさー」
「あーあるある。性格悪そうだよねーなんか」
「ったく、何様って感じだよね〜。あーいう人って〜、裏でなにやってるんだか」
「売ってたりして」
「それ、チョーあり得る〜」
本人に聞こえるようなあからさまな陰口。冷笑。いやがらせ。直接的になにかするわけでなく、陰湿化する、いじめ。
それでも児島さんはめげることはなかった。外面、気にする素振りもなく、網澤さん達の嘲笑にも耳を貸さず、毅然とした態度をとり続けた。不登校にもならず、誰かにあたるということもなかった。
児島さんは強かった。
私はその強さに悲しくなった。私は陰口の余波だけで、自分が言われているかのように萎縮してしまっていた。
人が強くなるには、強くなる理由か、強くなるしかない事情がある。
児島さんは強い、なんて言ってしまっては失礼だ。強くなりたくなかった人だっているかもしれないのだから。
でも、私は強くなりたくて、なのに勇気が出せなかった。
何をすべきかなんて、本当はわかってたくせに。最低だ。